第127話 「淑女の嗜〈たしなみ〉みですわ」
敵陣の真っ只中に、悠々と足を進めるラミス姫様とギリアム隊長。
「えっ?ちょっ……。」
それを茫然と見ているグレミオ。
──ざっ。
「いらっしゃるのでしょう?そろそろ出ていらっしゃったら如何です?……凄腕の剣士さん。」
ラミスは不敵に笑い、あの剣士を挑発する。
──ザッ!
……そして、登場する"凄腕の剣士"ライ・G・ゲイオス!
「呼んだか?……この俺を!」
「ええ貴方を待っていましたわ、ゲイオス……さん?」
「ご指名に預かった凄腕の剣士こと……セルゲイだ。」
そう言いながら、大剣を構えるセルゲイ。
…………。
あれ?違う。こいつゲイオスじゃなくて、セルゲイの方だ。忘れてた、居たなぁこんな奴。……ほんと、ややこしい。
「おいおい嬢ちゃんよ、ご指名はありがてーんだがよ。俺に舞踊でも踊れってぇのか?俺は女を斬る剣何て持ち合わせてねーし、舞踊も踊れねーぞ?」
……すたすたすた。
おもむろに、セルゲイの方に向かって歩き出すラミス姫様。
「あ?……何だ?」
「夜叉咬み!」
──ドゴォ!!
ラミス姫の渾身の一撃が炸裂する。鎧は粉々に砕け散り、吹き飛ばされるセルゲイさん。
「……お見事でございます、姫。」
「この程度、淑女の嗜みですわよ。……ふふふ。」
……いや違うね、使う所少し違うよね?姫様。
「ほう、まさかセルゲイを一撃で倒すとはな……。」
やっと姿を現す"凄腕の剣士"こと、ゲイオス。ラミス姫はゲイオスの放つ、その恐ろしいまでの殺気を感じ取り、改めて命を賭す闘いの覚悟を決める。
「……ぐっ。」
その恐ろしい殺気の前に、気圧されるラミス姫だが……。
しかしゲイオスもまた、ラミス姫の放つその異様な闘気にただならぬ恐ろしさを感じていた。
構える両者。
この長いゲイオスとの戦いの中、ラミス姫は何時もこの目にも止まらぬ攻撃の速さに苦しめられてきた。
その恐ろしいまでの剣速に全く反応出来ずに、ラミス姫は為す術も無く何度も破れ去っていた。
姉リンが居なければ、この強敵であるゲイオスに到底勝つ事など出来なかっただろう。
──ヒュッ。
ゲイオスの放つ高速の剣が、ラミス姫を襲う。
──ぱらり。
それを何とか紙一重で回避すラミス姫だが、髪が少し斬られぱらぱらと地面に落ちる。……ラミスには、ゲイオスの放つその高速の剣が全く見えていなかった。ラミスがそれを回避出来たのは、たまたま運が良かっただけの話である。
恐らく次の攻撃は回避せない、今の実力ではまだあの高速の斬撃を捉える事が出来ないのだと。
……ラミスは、そう理解していた。
「……ほう、少しは楽しめそうだな。」
ゲイオスは不気味に笑い、この戦いを楽しんでいた。




