第125話 「見ないで、ですわ」
ラミスは瞳を閉じ、うーんと唸りながら頭を悩ませる。
ここ西の村に来た時に、ラミスが皆に伝えねばならない事。姉ナコッタ、隊長グレミオ、将軍クリストフ達に伝えるべき事項をもう一度、頭の中で整理をする事にした。
ラミスは首を傾げながら悩み、その一つ一つ順を追って確認する。
一つ、姉ナコッタに神々の力の事を説明する。姉リンに掛けられている神々の力を解除して貰い、姉リンに西の村まで救援に向かって貰う事。そして、姉ナコッタに宿る神々の力の説明をする事。特に大事なのは"鑑定の力"なのだろう、この神々の力を識る事さえ出来れば後の話は必然早くなる。
この一つ目は非常に大事な事である。もし姉リンの到着が間に合わなければ、この窮地を脱する事が出来ないからだ。
二つ、クリストフ将軍に労いの言葉を掛け、ミルフィーに宿る神々の力で回復出来る事を伝える。これにより、姉ナコッタも将軍クリストフも少しは安心する事だろう。
三つ、ここ西の村にヘルニア帝国の一隊が向かっている事を伝える。まあ、この件に関してはそこまで重要では無いだろう。すぐに見張りの兵士が報せに来るのだから。
そして、四つ……。
…………。
「……あっ!」
その時、ラミスは思い出した。一つ、大事な事を伝え忘れていた事を。
──不味い!
不味い、不味い。一刻も早くグレミオ達に報せなければ、大変な事になってしまう!!
ラミス姫はすぐに振り返り、グレミオ達にその事を伝える。
「グレミ……。」
──ガチャリ。
……だが時は既に遅し。そして、その人物は扉を開け放ち颯爽と登場する。
「大変遅くなり申し訳ございません、姫様。」
…………。
「なっ……んだと!?」
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その人物の登場に、クリストフ将軍は驚き絶句し。グレミオは驚きのあまり、飛び上がりそのまま倒れ込んだ。
「そんな、馬鹿な!?お前は、確かに死んだ筈では……。」
「あわ、あわわわわわわ……。」
……フッ。
「ヘルニア帝国に再び戦いを挑む為、そして帝国を討ち滅ぼす為に!……このギリアム、地獄の底より戻って参りました。」
「……なっ。」
「……あわわわ、お化け。」
「あー。>△<」あちゃー。
またやってしまい、両手で顔を覆い隠すラミス姫様。
「…………。」
あの常に冷静なクリストフ将軍が驚きのあまりに固まり呆然とし、グレミオはがくがくと震えていた。
「……姫様?」
──ビクゥ!
ギリアムは、何故こんなにも皆が驚いているのか不思議に思いラミスに話しかける。
「ごっごごごめんなさーい、忘れちゃってましたわー。てへっ。」
てへっ、と可愛く誤魔化すラミス姫様でした。
ラミス姫は"剣豪"の称号を持つ隊長ギリアム、そしてユミナの同時蘇生に成功していた。
ギリアム隊長は前日のナコッタ姫救出の際、豚達から一撃を喰らい瀕死の重症を負い。そして西の村に到着してまもなく息を引き取り、昨夜グレミオ達が埋葬した所であった。
……それで扉を開けて入って来ちゃったら、そりゃあ驚くよね。




