第124話 「もう、顔面からは行きませんわ」
──バリッ、バリバリ!!
その体に雷を纏い、馬の数倍の速さで草原を爆速で駆け抜けるラミス姫様。その速さには、お馬さんもびっくりである。
──ひょこ。
何時もの様に、可愛く窓から中の様子を覗いているラミス姫様。
……じー。
「ナコッタお姉様と、グレミオが居ますわ。」
ラミス姫はとてとてと歩き、入り口から建物の中へと入る。
「ごきげんようですわ、ナコッタお姉様。それにグレミオも、ごきげんよう。」
ラミスの登場に驚く、姉ナコッタと騎士グレミオ。
「ラミス無事だったのね……。良かった。」
「ラミス……。君が無事で、本当に良かったよ。」
ラミスは何時もの手順で、クリストフ将軍に労いの言葉を掛け優しく抱擁する。この時に、ミルフィーに宿る神々の力でクリストフ将軍の怪我を一瞬で治癒が出来る事も伝える。
姉ナコッタにも同じ様に、神々の力が宿っている事を伝え、すぐに姉リンに掛けられている神々の力を解除して貰う様に伝えた。
「……凄いわ、私にこんな力が宿っているなんて。」
次にラミスは、この後すぐこの村にヘルニア帝国の軍隊が攻めて来る事を伝えた。ヘルニア帝国襲撃の一報に驚き、この状況をいかに切り抜けるか模索する隊長グレミオ。そして、戦う事の出来ない自分の不甲斐なさに険しい表情をする将軍クリストフ。
ラミスは神々の力を宿す姉リンの到着が間に合えば、この場を切り抜ける事が出来ると説明したのだが。
……やはりグレミオもクリストフ将軍も、その顔に不安の色が隠せない様だ。
「……もう、そろそろの筈ですわね。」
ラミス姫の成長もあって、ヘルニア帝国の軍勢がこの村に来る迄の少しの間。ラミスは姉達との会話に、僅かなゆとりが出来ていた。
……しかし。
「おかしいですわね……。そろそろ見張りの兵士さんが慌てながら、お知らせに来る時間なのですが……。」
……おかしい、何かがおかしい。
本来であればヘルニア帝国の軍勢に驚いた、見張りの兵士が大慌てで報せに来てもいい頃合いなのだ。
ラミス自身その兵士に体当たりを喰らい、何度も何度も冷たい床に顔面から叩き付けられた思い出があるからだ。
ラミス姫は文字通り、その体で覚え身に染みていた。
本来、来る筈の兵士が来ない……。
何かあったのだろうか?もしかしたら、ヘルニア兵に見つかってしまい口を封じられたという可能性は考えられないだろうか?
……いや、その様な事は今までに一度も無いのだ。
ラミス姫は、頭を捻り考える。
「……一体、何が起こっているというの?」
……うーん。
と悩むラミス姫様だが、その頭には何か一つ引っ掛かる部分があった。
「そういえば、何か大事な事を忘れている様な……。」
頭上に"?"マークが浮かび上がり、首を傾げるラミス姫様だった。




