第120話 「貴方もユリフィス君を応援するのですわ」
「……くっ。」
──ガキィン!
既に二十人以上のヘルニア兵士を倒し、善戦するユリフィス少年。しかし騒ぎを聞きつけ、次第に集まって来るヘルニア兵士に、ユリフィス少年はだんだんと苦戦を強いられる様になっていく。やはり強いと言っても、三十人以上のヘルニア兵を相手にするのは流石に無理があるようだ。ユリフィス少年の表情に、徐々に焦りが見え始める。
「くっ、くそおっ。」
……そろそろ、ユリフィス少年も限界の様である。
「ぼっ、僕の事はいいから。ラミスおねーさんだけでも逃げてっ!」
ヘルニア兵の攻撃を防ぎながら、そう叫ぶユリフィス少年。
……そっ、そんな。
「ユリフィス君を置いて、私だけ逃げるなんてっ。そっ、そんな事。私には、出来ませんわ……。」
……そんな、一体どうしたらいいの?このままでは、このままではユリフィス君が。ユリフィス君を置いて、私だけここ場から逃げるなんて出来ませんわー!!
と、踊りながらユリフィス少年を応援するラミス姫様。ラミスは、応援する事しか出来ない自分の無力さを嘆いていた。
自らの非力さを、可憐でか弱い華奢なこの体を。……ラミスは持っているハンカチで涙を拭いながら、温かくユリフィス少年を見守っていた。
……えーと、ラミス姫様?何かお忘れでは?
「ヒャッハー!捕まえたぜぇー!!」
数名のヘルニア兵士がラミスの周りを囲み、ラミスの腕を掴みあげた。
「ラッ、ラミスおねーさん!?お前達、ラミスおねーさんに触れるなっ!!」
「へっへっへっへ……。」
にやにやと笑うヘルニア兵達。
「あら?貴方達、ユリフィス君の応援の邪魔ですことよ。」
──ドゴォ!!
ラミスは目にも止まらぬ速さでヘルニア兵士に、裏拳を喰らわす。
「えっ!?」
「……なっ、一体何が起こった?」
それは、ユリフィス少年やヘルニア兵士達にも理解出来なかった。いや、正しくは見えていなかったのだろう。
ラミスは後ろを一切振り向く事無く、誰にも見えない高速の裏拳を繰り出し、その場に居たヘルニア兵士十数人を吹き飛ばしていた。何も知らない人間からすれば、大勢のヘルニア兵士達が勝手に吹き飛んだ様にしか見えなかった。
それを気にせず、必死に踊りながらユリフィス少年を応援しているラミス姫に。ユリフィス少年も又、ヘルニア兵達も一体何が起こったのか理解は出来てはいないだろう。
「ヒャッハー!」
──ガキィン!
尚も続くヘルニア兵士達の攻撃。それを必死に防ぎながらユリフィス少年はラミスを心配して振り向き、姫の安否を確認する。
……どっこいしょ。
「頑張ってー♪ユリフィスくーん。」
……うん?
ユリフィスはラミス姫の周りに倒れている、ヘルニア兵士の数が少しおかしい事に気が付く。
確かに、先ほど倒れていたヘルニア兵の数は十数人だった筈なのだが。今ラミス姫の周りにヘルニア兵士五十人以上が倒れており、更にラミス姫はそのヘルニア兵士の山に、どっこいしょと腰を下ろし座っていた。
「後少しよー♪ユリフィスくーん!」
にっこにこしながら、手を振り応援するラミス姫様。




