表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/43

第21話 寄り道していかない?

 学校も終わり、放課後。

 鈴木斗真(すずき/とうま)は帰宅準備をすると、同じ教室にいる涼葉の元へ向かう事にした。

 今日は一緒に帰宅することになっており、神谷涼葉に話しかけた頃には彼女も準備を終えていたのである。


 教室内にいる亜寿佐沙織(あずさ/さおり)は別の子と会話しており、斗真が涼葉と一緒にいるところは見られていなかった。

 沙織と関わると面倒だと思い、斗真は涼葉を急かして教室を後に帰路につく。

 今から向かう先は、涼葉の家である。




「そう言えば、涼葉さんの家ってあっちの方?」


 学校を後に、街中近くの道を歩いている斗真は遠くの方を指さしていた。


「そうだよ。私の方は街中を通らないといけないの。だからね、結構遠いんだよね」

「大変だね。バスとかはないの?」

「バス通学にしようとも思ったんだけど。丁度いい時間がなくて。だったら歩こうかなって」

「そっか。バスは時間が決まってるし、自分が都合のいいタイミングで利用できないしね」


 斗真も、隣を歩いている彼女の意見を聞いて納得するように頷いていた。


「一応、私ね。自転車通学も検討してたんだけどね」

「自転車か。それもいいんじゃない?」

「うん。でもね、移動距離の半分くらいは自転車を押して移動しないといけないの。朝とか、帰宅する時もそうなんだけど、街中を通らないといけないし、人通りが多かったりするからね」

「そっか。色々と大変だね」

「そうなの。冬とかだと雪が降ったりすると、自転車に乗れないじゃない」

「そういう事情もあるか」

「私って部活に入ってないじゃない? だから運動の為に徒歩がいいかなって」

「そっちの方が健康的でいいかもね」

「うん。斗真は自転車とか、バスには乗らないの?」

「俺の方は住宅の多い道を普段から通っているからさ、バスが通ってないんだよね。徒歩でそんなに時間もかからないし、だから歩いて通学してるんだけどね」

「へえ、家から近くていいね」

「涼葉さんはどうして、今通っている高校に入学した感じなの?」


 逆に疑問を投げかけてみた。


「私の家からはどの高校も微妙に遠いからね。一番近かったのが、今の高校なの。でも、中学の頃は近かったんだよ」

「そうなの? でも、ここ周辺で中学と言ったら俺が通ってた中学しかないし」


 中学の時、斗真は涼葉と一緒に過ごした経験はない。

 そもそも、彼女は在籍していなかったはずだ。


「あのね。私、高校に進学すると同時に引っ越してきたの」

「そういう事ね」

「うん。今はお母さんと一緒に、お爺さんとお婆さんの家で住んでるって感じ」

「涼葉さんも色々と大変だね。引っ越してくる時、中学の人と別れるの辛かったと思うけど。大丈夫だった感じ?」

「まあ、そうね。本当は別れたくなかったけど、どうする事もできなかったし。まあ、今は斗真と関われているから別にいいかなって」


 本当は大変な事も多いと思うが、涼葉は笑顔で答えてくれていたのだ。


「まあ、この話は一旦終わりにして。私の家に来る前に、どこかに寄って買い物をして行かない? 私の帰り道にはデパートとか飲食店もあるし。飲食店でテイクアウトも可能だよ」

「じゃあ、そうするかな。涼葉さんは何か食べたいモノってある?」

「そうね。じゃあ、ドーナッツにしない? お菓子感覚で食べられるし」

「それいいね」

「ドーナッツ専門店なら、もう少し進んだ先にあるの」


 今、斗真と涼葉は街の中心街を歩いている最中だった。

 夕方という事もあって、結構人通りが多くなっていたのだ。


 涼葉と一緒に歩いていると、ようやく目的となるドーナッツ専門店の看板が見えてきたのである。


「ここだよ。入ろ」


 涼葉に右手を掴まれ、斗真は早速入店する事となったのだ。


 店内にはイートインスペースもあり、それなりに広い。


 入店してすぐのところに、ドーナッツが置かれているショーケースがあった。

 三〇種類以上あり、何にしようかと斗真は迷ってしまう。


「斗真は何にする?」

「そうだな。俺はオールドファッションにしようかな」

「これ?」


 隣にいる涼葉が、トングでドーナッツを示していた。

 それをトングで掴み、トレーの上に置いたのだ。


「そう、それね。あと、イチゴファッションとか」

「端っこのところにピンク色のイチゴチョコがついているドーナッツだよね?」

「そうだよ。涼葉さんも選んだ方がいいよ。俺ばかりが選ぶのもよくないし」

「じゃあ、私はドーナッツポップにしようかな」


 斗真はショーケースを全体的に見渡した後、涼葉がショーケースには見当たらない名前のドーナッツを選んでいた事に気づいたのだ。


「ポップって?」

「小さく丸くなったドーナッツってあるじゃない? それが円状の箱のケースに入っているの。それをドーナッツポップっていうの」

「へえ、それか。以前食べた気が」


 ずっと前に妹の恵美が、母親との買い物の帰りに買ってきた時があった。

 斗真は、その日の事を振り返っていたのだ。


「斗真も食べる? 食べるなら量多めで注文しておくけど」

「それって、このショーケースにはない感じ?」

「ないよ。直接頼まないとね。斗真は、この二つでいい?」

「涼葉さんがドーナッツポップを買ってくれるなら、もういいかな」

「じゃあ、会計に行こ」


 斗真は涼葉と一緒に会計カウンターへと向かって行く。




「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」


 レジ近くにいる女性店員から問われる。


「はい。斗真も大丈夫だよね?」

「そうだね。じゃあ、今日は俺が支払うよ」

「いいよ。私が支払うから」

「でも」

「だったら割り勘って事にしない?」

「それでもいいけど。涼葉さんがそれでいいなら」


 二人は財布を確認しながら互いにやり取りを交わしていた。

 そして、互いの意見が一致したのである。


「お客様、お支払い方法はお決まりになりましたでしょうか?」

「はい。割り勘でお願いします」


 会計は一二〇〇円。

 互いに六〇〇円ずつ店員に渡して会計を済ませた。


 店員はドーナッツを紙袋の中に入れ、さらビニール袋に、その紙袋と蓋をしたドーナッツポップを入れてくれる。


 店員のありがとうございましたの声を聞いて、二人は店内を後にし、再び涼葉の家に向かって歩き出すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ