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厨二病の英雄達~チューニング・ヒーローズ~  作者: 鳳飛鳥


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♯.50 情報の信憑性と協力要請

「ブレイバーちゃん! 丁度良かったわ! ちょっと貴方のお兄さんの最近の写真とか無いかしら!? 小熊猫(シャァシェンマオ)ちゃんがちょっと気になる人を見たらしいのよ!」


 お婆ちゃん先生に言われて小休止のつもりで医務室を出た俺は、ジュースを買う為にロビーへとやって来たのだが……そこで唐突にそんな言葉が飛んでくる。


「直近の物だとチューニングを受ける前に取った奴が有った筈……」


 見れば先輩とミスターゲイさんが同じテーブルでジュースを飲んでいた。


 多分さっきの急患を見て緊急討伐隊が組まれる事を想定して待機して居たのだろう。


 兄貴の情報ならどんな小さな事でも知りたいし、返事をしながら自販機へと向けていた足を二人の方へと切り返す。


 ポケットから取り出したスマホの中に保存して有る写真を探す、確か激安ドカ盛りの店なんかを面白可笑しく紹介するTV番組で、近所の店が紹介されたのを見てソコにジャンボパフェを食べに行った時の奴が有った筈だ。


「ああそうか……先輩、兄貴に最期に会ったのって高校最期の大会でしたっけ? あの頃と比べたら確かに大分印象変わってるかも知れないですね」


 学生時代の兄貴は今の先輩同様に必要以上の筋肉も余計な脂肪も余り無い、所謂細マッチョと言う様な体型だった。


 けれども警察学校で10ヶ月間を過ごして帰ってきた兄貴は、全体的に太く丸く大きくなって居たのだ。


 日々の苦しい訓練と授業、食べる事くらいしか楽しみの無い生活に、食わなきゃ体力が持たないと言う状況の結果、剣道で付けていた筋肉以外のソレまで鍛えていなかった部分も大きく強化された訳である。


 更に機動隊に配置転換されてからは警察学校時代以上の訓練漬けの日々と、あらゆる状況に対応出来る様になる為なのだろう、学生時代とは比べ物に成らないマッシブボディに変貌を遂げていたので、先輩が一目で気が付かなくても不思議は無い。


 その変化を芸能人で例えるなら『パンティーを被ったヒーロー』を演じた役者が、とある少女漫画原作の『ゴツい純情青年』と少女の恋物語の実写版……では無く原作版の見た目になったくらいに変化して居ると言えば伝わるだろうか?


「……なぁ、コレ本当にラスカルか? アイツの体格って俺と殆ど変わらなかった筈なんだが? どう見ても100kg超えてるよな?」


 ……うん、兄貴と先輩の身長はどちらも170cm代中盤で、高校の頃は二人共70kgくらいだった筈だ。


 けれども今の兄貴は、確かに100kgを軽く超え120kg近かったと思う。


 とは言えただ単純に太ったと言う話では無く、鍛え上げた筋肉とその上に脂肪の鎧を纏った結果なので、不健康な体重増と言う訳じゃぁ無い。


「まぁソレは良いとして……んー、なぁコレ写真に書き込み入れるアプリとか入ってるか? あ、有るんじゃちょっとソレ貸してくれ」


 と、先輩に言われるがままに写真編集アプリを起動して、兄貴の写真をソレに表示させてスマホを渡す、すると先輩は兄貴の顔に黒い髭を書き込んで行った。


「間違いねぇ! 昼に見たホームレス、あいつラスカルだ!」


 それから俺に向かってスマホを突き出し、今の兄貴をイメージしたらしい髪が伸び髭が伸びた事を想像させる様な黒塗りの写真を見せつけて来る。


 高校の頃の兄貴しか知らない先輩がこの写真の様な姿を見て、即座に兄貴だと気が付かなかったのは、まぁ仕方ない事だろう。


「先輩、確か今日は午前中に討伐シフト入ってましたよね? 昼に見たって事は昼飯を食いに出てた時って事ですか? って事は、この辺で見かけたって事ですよね!?」


 思わず声が大きくなるがソレは仕方が無い事だろう、なんせ下手をすれば日本全国どこに行っていても不思議は無いのがピーターパン化患者だと、過去にソレと相対した事の有る者は皆声を揃えて言っていたのだ。


 ソレが地元でこそ無いとは言え、発症したここのダンジョンから然程も離れていない所に留まっていると言うのだから驚くなと言う方が無理な話で有る。


「間違い無いのね? なら直ぐに支部長に連絡して装備の持ち出しの許可を取って、警察にも周辺の隔離する様に要請を出してもらわないと……ピーターパンってのは普段どんな理性的な行動をしてても、捕縛すると成ると思いっきり抵抗するのが定番なのよ」


 実際にピーターパン化した仲間と相対した事の有るミスターゲイ先輩が、直ぐに取るべき行動を教えてくれた。


 抵抗すると言うのも何となくでは有るが理解は出来る。


 捕獲されれば肉体本来の持ち主から見れば元の人格を取り戻す治療を受けさせる事に成るが、ソレは今現在肉体を操作して居る混じり合った精神は消される訳で殺される様な物と言えるだろう。


 相手がその辺の事をしっかり理解しているのかどうかは分からないが、ソレでも知らない人達が自分を捕らえようとして居るならば抵抗するのは当然と言えば当然の事だ。


 だが……ピーターパン化現象を起こす者は、チューナーかチューナーじゃなくても超常の魂をその身に宿した討伐者かのいずれかで有る以上、ソレが全力で抵抗するとなれば捕縛に当たる者達の身の安全は保証されてはいない。


「チューナーがピーターパン化したケースは流石に初めての事だから、どこまで過去の事象との共通点が有るかは分からないけれど、最悪を想定して置くに越したことは無いわ。使える能力(ちから)の全てを使って抵抗すると思った方が良いわね」


 兄貴のチューナーとしての能力を詳しく聞いた訳じゃぁ無いが、You Tunerの動画を見る限りでは刀からビームの様な斬撃を飛ばす事が出来る筈だ。


 そんな物を街中で不用意にぶっ放なされたら、無関係な一般人を巻き込む可能性は大きいだろう。


 だからこそミスターゲイさんは、警察に話を通して周辺を隔離する様に言っているのだ。


「んなら俺が真正面を受け持つさ……アイツ自身じゃぁ無いにせよアイツと勝負出来るってんなら、イモを引く様な事ぁ出来やしねぇわな」


 獰猛そうな肉食獣の如き笑みを浮かべてそう言う先輩……うん、先輩は兄貴を助けたいと言うよりは兄貴と戦いたいだけだよね?


「ラスカルの奴が見つかったのか!? だが申し訳無い……銃器での攻撃は下手をしなくてもオーバーキルになってしまう。漫画の様に当てれば眠ってくれる麻酔銃なんて便利な武器が有れば力になれたんだが……済まん」


「ブレイバー君、治療待機はおねぇさんが代わるから君は現場に行きなさいな。私も武器が銃だから行っても回復しか出来ないなら、君の下位互換にしか成らないからね」


「剣士を相手にするなら剣士は2人居ても邪魔には成らないわよね? 魔法攻撃要員に鯨先輩が行くなら私も参加する。緋天卯鷺(ひてんうさぎ)流は連撃で相手に何もさせないのが真骨頂だからね」


「討伐シフト、待機シフトに入ってない連中に連絡回すぞ? 御礼とか細かい事ぁ気にすんな! チューナーやってりゃ誰でもピーターパン化の危険は有るんだ、もしも自分がそ-なった時にゃ皆に世話に成るのは自分なんだからよ!」


 雑談と言うには少々声が大きくなっていた事も有り、周りで待機していた人達も兄貴発見の報に様々な反応を示してくれた。


「人数だけ集めても駄目よ、抵抗するピーターパンは身体の限界も魂の限界も気にせず能力をぶっ放して来るわ! 相性の良いメンツで組まないとこっちの被害が増えるだけよ! ラスカルちゃんの属性と能力知ってる子は居る!?」


 そう言って仕切ってくれるミスターゲイさんには、無事に兄貴を助ける事が出来たなら絶対に御礼をしなけりゃ成らないな……絶対に身体で御礼と言う話だけは回避するけどな!


「……作戦会議をするならこんな所でやらず会議室を使いなさい。警察には該当人物の所在確認と居たならば周辺からの民間人退避と周辺封鎖も要請してある。一応表向きは不発弾の処理と言う事に成るから余り派手にやり過ぎない様にな」


 と、支部長さんに話が通ったらしく、彼がやって来てそんな事を言う。


 今のところピーターパン化のリスクは部外秘と言う事になっており、そうなってしまったチューナーが外で暴れたと言う情報を外に出す訳には行かないのだろう。


「ぴんぽんぱんぽーん! 支部長、支部長、千戸玉署の署長より連絡有り。マル被と思しき人物の所在確認完了、周辺の民間人避難を開始、可及的速やかに対処求むとの事です。ぱんぽんぴんぽーん!」


 普段の間延びした物とは違う、切羽詰まった様な口頭チャイムと共にそんなアナウンスが響き渡ると、その場に居た者達の多くは頷き合ってから会議室へと駆け出したのだった。

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