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厨二病の英雄達~チューニング・ヒーローズ~  作者: 鳳飛鳥


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♯.44 学生生活と国際情勢

 チューナーに成ったとは言え本業は飽く迄も高校生な俺は、平日の昼間はきっちり授業に出なければ成らない。


 普段の討伐シフト以外にも待機シフトを組んで緊急事態に備えなければ成らない様な希少な回復能力者なのだから、学校に行くよりも仕事を優先するべきだとも思うのだが、支部長さんから直々に学校優先だと言われているのだ。


 チューナーに成る為には高卒資格は必要なく、義務教育課程を卒業してさえ居れば、専業で活動する事も法的には認められているのだが、未成年者の場合は当然の事ながらチューニングを受ける時点で保護者の同意が必要と成る。


 んで兄貴が行方不明の今、俺の法的な保護者は支部長さんと言う事に成っている筈なので、彼が学校にはちゃんと通えと言うならば、サボってシフトを入れるなんて事は出来ない訳だ。


 そんな訳で俺は真面目に授業を受けていると言う訳である。


「あー、荒居君ちょっと生徒指導室まで来てくれないかな? 君のアルバイト先の件で確認したい事が有るのだよ」


 そして四時間目にあった公民の授業が終わるなり、担当の金田先生が唐突にそんな事を言って来た。


「バイトの事なら体育の(ごり)先生にちゃんと届け出してますけれど?」


 ……ウチの高校は公立と言う事も有ってか、入学式や始業式に卒業式などの式典に区分される様な催しが有ると必ず君が代を歌うのだが、この先生はその際にこれ見よがしに椅子にふんぞり返って座る様な真似をして顰蹙を買ってる人なんだよなぁ。


 授業も受験や試験に絡む様な部分で手抜きをする様な事は一切しないが、やたらと憲法9条を持ち上げる様な発言が有ったり、自衛隊が存在する事も許されない違憲組織だとガン否定する様な言葉が有ったりと色々と思想に偏りが有る人物だと誰もが見抜ける人物だ。


 前のバイト先であるファーストフード店の事では、こうした呼び出しを受けた事は無いので、防衛隊と言う組織に対する偏見バリバリの御意見でもしてくれるだろう事が容易に想像がついた。


「鮴先生を悪く言うつもりは無いですが、彼は生徒指導教諭と言う立ち場の割に生徒に甘い部分が有る人ですからねぇ……生徒指導教諭なんざぁ生徒に恨まれ疎まれて当然の仕事なんですからもっと厳しくして貰わねば」


 生徒側から言わせて貰えば鮴先生は決して甘い人なんかじゃぁ無い、遅刻やらサボりなんかにゃ厳しいし、夏休みなんかの長期休暇には近場はもちろん態々都内の盛り場まで生徒が遅い時間まで遊んでいないか見回りに行く事すら有る。


 そして見つかれば長期休暇中でも生徒指導室に呼び出されてガッツリ説教をブチかましてくれるのだ。


 初回で懲りれば説教だけで済ませてくれるが、二度三度とソレが繰り返される様だと容赦無く内申点に響かせて来る辺り、進学校の教師としては十分厳しい部類に入るのでは無かろうか?


「とにかく新しいバイト先に付いて話が聞きたいので、素直に生徒指導室まで来なさい」


 面倒臭い上に昼飯を食う時間が削られ更には学食の人気メニューが売り切れると言うデメリットしか無い話だが、一応は進路希望調査で進学と出している以上は、教師に逆らって内申点を削られる様な愚を犯したくも無い。


「飯食う時間は残して下さいよ、午後からは体育の授業も有るんで」


 そう判断した俺は、小さくため息を吐きつつそう返事を返してから生徒指導室へと向かうのだった。




「なるほど、つまりその防衛隊と言う組織で得られる力で、戦犯国家である我が国が再び帝国主義的な野心を抱いて戦火をアジアの朋友たる国々にばら撒く様な事は無い……と、君はそう言いたい訳だね?」


 俺を呼び出した先生は、自衛隊にチューナーとしての能力(ちから)を与え、ソレを濫用する事で第三次世界大戦を引き起こすのが中泉総理の戦略なのでは無いか? などと言う妄言としか言えない言葉で詰め寄って来た。


 ソレに対して俺は、チューニング技術は所謂西側諸国だけでは無く、東側諸国にもきっちり提供されており、防衛隊はそれぞれの国だけでは無く地球と言う惑星(ほし)自体を護る為の活動だと断言したのだ。


 実際、You Tunerにはお隣の大陸に有る某巨大国家や某独裁小国で活動するチューナーの映像だってアップされて居るし、日本からソレ等の国へ救援に行く様なケースだって数は多く無いが発生して居ると聞いている。


 第一、中泉総理と某国の国家主席に西側最大手国の大統領は、政治的イデオロギーに置いては政敵といえるが、前世紀末に有った巨大モンスターとの戦いでは共闘した戦友でも有る……と支部長さんが言っていた。


 人は外敵が居る状況であれば、国や思想に宗教の垣根を乗り越えて力を合わせる事が出来るのだろう。


 つまり対モンスターと言う点に関しては、それ等の価値観は完全に無視する事こそ出来ないが、ソレで地球が滅んでしまっては元も子もないと言う事だけは、各国首脳も共有して居る事なのだと思う。


 なんせつい先日まで行われていた全世界ダンジョン整備計画に置いては、核兵器保有を巡って各国から経済制裁をガッツリ受けている最中のあの国すら、ハブにされる様な事は無く建設作業に用途を限った支援は為されたのだ。


 コレは何処かの国を除け者にした結果、その土地が異世界からの侵略者であるモンスターによって陥落し、ソコを橋頭堡として地球全人類を相手とした大戦が発生する可能性を無くす為で有る。


 同時に全世界にチューナーを生み出す事で、先生が懸念した様な能力者を軍事利用し辛くする為の布石にも成っていると言う話だ。


 一応、日本産のチューニング機材では地球防衛の為だけに力を貸してくれるチューニング・ソウルを選別して憑依させる様に成っているらしいが、人間が作った技術である以上はソレを自分達の都合が良い様に改造する国は絶対に無いとは言い切れないだろう。


 なんせ通常兵器ではダメージを与える事が出来ないモンスター達と戦えるチューナーは、得た能力に依っては同様に通常兵器を無効化出来る決戦兵器にもなり得る存在だ。


 ソレを軍事利用したいと考え無いのは、平和ボケした日本くらいなもんである。


 今の所はチューニング機材の設定をイジる事の出来るのは、コア技術を持つ日本の技術者だけらしいが、ソレだって何時かは破られるのは間違いないだろう。


 とは言え、制限を外すことが出来たとしても呼び出されたチューニング・ソウルが猟奇殺人者の様な存在だったりすれば、下手をすると自国内で暴れるヤバい存在を生み出す可能性もゼロでは無いらしい。


 また適度なチューニング適正の有る人間自体が割とレアで、適正の無い者に対して強引にチューニングを行った場合はチューニング・ソウルが憑かないのが普通で、適正が高すぎる者だと今度はソウルに肉体を完全に乗っ取られる事に成ると言う。


 日本製の純正機材ではそうした事故が起こらない様に複数の安全装置が組み込まれているらしいが、必ず何処かの国がそれ等を外しソレを起こす事に成るのだろう。


 ソレが何時何処でかまでは読めないが、絶対にいつかは起きる事だと支部長さんが断言していた。


 まぁ……支部長さんは元々外交官だったらしいし、そう言う事を疑うのも仕事の一部だったんだろう。


「まぁ確かに諸外国にも技術供給がされて居ると言うのが本当なら、日本が再び戦犯国家と成る様な事は無いかも知れませんね。けれどもやはり未成年の君があの国営ヤクザや国営殺人部隊と一緒に活動すると言うのはどうなんでしょうねぇ……」


 国営ヤクザと言うのは多分警察で、国営殺人部隊と言うのは自衛隊の事だと思うが、この先生は本気で日本と言う国か、それとも日本政府か……とにかくそうしたモノが嫌いなのだろう。


 この先生もしかしたら学生時代にはゲバヘル被ってゲバ棒振り翳して暴れてた口なんじゃぁ無いだろうか? いやでも流石にそこまでのお年じゃぁ無い筈なんだよなぁ……。


 と、そんなことを考えていると、唐突に指導室の扉がガラガラと音を立てて開かれた。


「あれ? 金田先生どうしたんですか? ん? 荒居? コイツなにかやらかしましたか? それなら先ずは生徒指導主任の私に話を振ってくれないと……」


 言いながら入って来たのは、改造制服を纏った生徒を俵の様に担いだ鮴先生だ。


「いえ、大した事じゃぁ無いです。ちょっと聞きたい事が有ったので、場所を借りただけでして……生徒指導が必要なら場所を開けますよ。荒居君、時間を割いて貰って申し訳無かったね。もう大丈夫だから早くお昼御飯を食べて来なさい」


 ……そう言った金田先生の表情(かお)は普段通りの笑顔ではあったが、何故か裏が有る様に見えて少しだけ背筋に冷たいモノを感じたのだった。

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