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厨二病の英雄達~チューニング・ヒーローズ~  作者: 鳳飛鳥


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♯.43 美味い町中華とホームレス

「味噌チャーシュー麺に天津飯を両方大盛りでそれと餃子に回鍋肉と棒々鶏も」


 千戸玉市内でも割と中心部に近い場所に有る繁華街から、少し外れた場所に有る町中華の隠れた名店……今日のシフトは朝一から昼まで千戸玉北ダンジョンでの討伐だったので、仕事上がりの飯に久しぶりにこの店へやって来た。


 ここは千戸玉市で剣道の大会なんかが行われる時に使われる千戸玉中央体育館からも徒歩5分と割と近く、小学校時代からこっちの試合に出た時には道場の皆と帰りに寄って飯を食う定番の店だ。


 なにせこの店は安い、美味い、盛りが多い……と体育会系には嬉しい三拍子が揃っており、地元の運動部員達から警察官まで大食らい達が幅広く訪れる場所なのだ。


 まぁ……難点が有るとすれば駐車場が無いので、近くのコインパーキングに車を止めなきゃダメだと言う事くらいだろう。


 ここ暫くは仕事なんかでこっちの方に仕事で来る事が有っても、駐車場代がもったいないからと御無沙汰していたが、前職とは比べ物に成らない高給取りであるチューナーと成った今は時間200円程度をケチる事は無くなった。


 つか前ならチャーシュー麺と天津飯に餃子までで我慢し、回鍋肉と棒々鶏までは注文しなかった、幾ら比較的安い店とは言え昼飯だけで3000円弱は前の給料じゃぁ贅沢し過ぎだしな。


 けれども今の稼ぎなら1食3000円程度ならば、余裕で払えるしなんならもっと高級な店に行く事だって出来る。


 とは言え料理の味は必ずしも値段に比例する訳では無く、ここの様に比較的お手頃価格で美味い物を食わせる店も有れば、逆にこの値段でこのレベルの味? と言いたく成る様なボッタクリ店だって世の中腐る程存在して居るのだ。


 確実に美味いと分かっている店が有るならば、ソコを利用する方が間違い無く得だと言えるだろう。


「はい、注文繰り返します。味噌チャーシュー大盛りと天津飯大盛り、餃子と回鍋肉に棒々鶏ですね? 棒々鶏はお時間少々頂きますがよろしいですかー?」


 チャイナドレスのウエイトレスさんがお冷をテーブルに起きつつ、伝票に手早く走り書きしながら注文を繰り返す。


「ああ、あとコーラも追加で」


 本当ならビールと言いたい所だが、車で来ている以上は飲酒運転をする訳にも行かないので仕方なく炭酸飲料だ。


「ハイかしこまりました。てんちょー、注文入りまーす!」


 そう言いながら厨房の方へと歩み去る彼女を見送ると、俺はスマホを取り出し電子書籍アプリを開いて漫画を読む事にする。


 学生時代から剣道一直線だった俺では有るが、娯楽の類に一切手を出して来なかった訳では無い。


 音楽もそれなりに聞くし漫画だって読む、けれどもドラマやアニメに映画の様な映像作品はソレだけに時間が取られるのが嫌で避けて来た感じだ。


 学生時代は学校で話題に成ってる作品はとりあえず読む感じで、大学以降は昔の名作を古本屋で纏め買いして読む……と言う様なスタイルだったが、今の稼ぎだと気になった作品はとりあえず電子書籍で纏め買いして隙間時間に適当に読むと言う様な形に成っている。


 俺の部屋に有る本棚はほぼ満杯で、これ以上漫画を本で買っても置く場所が無いのだ。


 コレまでは溢れた分の中で取捨選択して、要らないと判断した本を古本屋に持ち込んで処分して居たのだが、多くの場合値段が付かず本当に『処分」に成っていたんだよなぁ……。


 けれども電子書籍は古本屋で買うほど安くない代わりに、場所を取らないと言うのが最大のメリットと言えるだろう。


 チューナーに成ってガッツリ稼げたんで、スマホを最新機種の最大容量の物に買い替えて、気になってた漫画をごっそり買ったと言う訳である。


 そんな訳で漫画を読みながら料理が来るまで時間を潰していたのだが……


「申し訳ありませんが他のお客様に迷惑ですので御入店はお断りします。お風呂に入ってキレイな服に着替えて頂ければちゃんとお客様としてお迎え出来ますが……テイクアウトでしたら外でお待ち頂く事にはなりますが用意しますが、いかが致しますか?」


 不意に店の入り口の所で先程のウエイトレスさんが、困った様な怒った様な声でそんなセリフを口にして居るのが聞こえて来た。


 思わずそっちを見ると、未だ若いだろうにホームレス生活をして居る様にしか見えない小汚い野郎が店に入ろうとして断られて居た。


「ぬぅ確かに暫く風呂なんぞ入っては居らぬな。しかしこの町では民草も普通に風呂に入る等と言う贅沢が出来るのか? 薪代も馬鹿にならぬであろうに……あ、いや、店には客を選ぶ権利が有る。そのていくあうととやらで有れば買えるならばそれを頼む」


 何処の田舎から出てきたのか知らんが……いや、本当に日本人かアレ?


 今どき風呂なんてよっぽどのボロアパートでも無けりゃ付いてるのが普通だし、ソレが無い様な物件なら近場に銭湯の一つ位は有る筈だ。


 風呂に入るのが『贅沢』だ……なんて言うのは、水が貴重な国の出の外国人とかなのだろうか?


 いや、ソレにしたって外国人技能実習制度なんかで日本に来たならば、就労して居る会社が日本式の生活習慣くらいは教える筈だ。


 それに言葉使いが妙な感じでは有るものの、喋っている言葉は間違い無く日本語だし、日本語慣れして居ない外国人にありがちな妙な訛り方もして居ない。


 その辺の事を考えるに彼は間違い無く日本語を母国語とする者だろう……では何故風呂を贅沢などと言ったのか?


 自宅に風呂が有ると言うのが当たり前に成ったのは、戦後更に時間が経った高度経済成長期以降の事だった筈だが、銭湯自体は江戸時代には既に一般庶民にも普及して居た筈だ。


 まぁその辺の知識は所詮漫画で読んだ話でしか知らんので、どこまで正確なのかはわからないが、ソレでも風呂に入る事が贅沢だと言う認識はかなり古い時代……それこそ戦国時代とかそれくらい遡る話なのでは無かろうか?


「お待たせしました、味噌チャーシューと天津飯の大盛り、餃子と回鍋肉それからコーラです。棒々鶏はもう暫くお待ち下さいねー」


 と、店の外でテイクアウトを待っているホームレスの事を考えている内に、相応の時間が経っていた様で俺のテーブルに料理が並べられていく。


「ここみたいな安くて美味い店だと、変なのも来て大変だねぇ。まぁここは近くに警察署も有るし呼べば直ぐお巡りさんが来るか」


 多分大学生バイト辺りだろう年回りのウエイトレスさんに、俺はそんな労いの言葉を投げかける。


「……あの人ねぇ、ここ暫く毎日来てるんだけれど、ずっと同じ服だしお風呂も洗濯もしてないっぽくて、流石に他のお客様に迷惑かかるからと思って、今日始めて入店お断りしちゃったんですよねぇ。ほんと逆ギレされなくて良かったですよ」


 毎日来てるって事はこの近くに居着いたって事か? んでもこの辺にホームレスがたむろする様な場所が有ったっけか?


 ここだって都内と比べりゃ田舎では有るが、一応は県庁所在地でそう言う連中のコミュニティの様なモノは存在して居るとは聞いた事が有る。


 そうしたコミュニティでは彼等なりのルールで一般社会に迷惑を掛けずに生きる方法なんかを先輩から教えられるそうだが……多分今の奴はそうしたコミュニティに所属して居ないハグレなんだろう。


 店に押し入って暴れたとかなら兎も角、そ~じゃないなら俺が一々世話を焼く様な話でも無いな。


 そう判断した俺は割り箸とレンゲを手に取ると、早速スープを一啜りしてから分厚いチャーシューに齧り付き、麺を一気に啜り始めたのだった。

私用の為12月1日は執筆時間が取れないので、次回更新は12月2日深夜と成る予定です

ご理解とご容赦の程宜しくお願い致します

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