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厨二病の英雄達~チューニング・ヒーローズ~  作者: 鳳飛鳥


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♯.35 戦う技術と突発的危険

先日の後書きで今日は更新しないと言ってたのですが、時間が取れたので急遽更新です!

 チューニングで得たパワーを使い素手で戦うと言う点で、俺とシャインさんの戦闘スタイルは似ている……と、一緒に戦うまではそう思っていたが、今回のシフトでソレが盛大な勘違いだと思い知らされた。


 俺はチューニングで得た圧倒的な身体能力でゴリ押しして居るだけなのに対して、シャインさんは明確な技術を用いてより小さな力で大きなダメージを与える事が出来ているのだ。


 俺はただ単純に超常の能力(ちから)を得ただけの素人なのだと、彼の戦いを見てハッキリと突きつけられた様にすら思える……と言うかその通りなのだろう。


 今の俺では打撃に対して耐性を持つメメタノガマをあんな風に一撃で倒す事なんか出来はしない。


 彼が放った貫手と呼ばれる指を伸ばしたままで打ち込む空手の突き技は、指先を十分に鍛錬しているからこそ出来る技法で、素人が見様見真似で使ったりすれば、良くて突き指……悪くすれば骨折する事も有るだろう。


 チューニングによって向上した身体能力の中には身体の頑丈さも含まれており、特にチューニング・ソウルが宿る右半身は生半可な攻撃を通さないくらいの強化はされているが、

 突きの強さも同様に向上している為に別途鍛えなければ恐らく怪我は免れない。


 技と言う物は年月をかけて修練を積み重ねる事でしか完全に身につく事は無いのだ、安易に真似なんかすれば痛い目を見るのは俺の方で有る。


 実際、先日千戸玉北ダンジョンでサンマなんかをぶん殴った時には然程問題に成らなかった拳や手首に掛かる負担が、こっちのダンジョンでクサイムを殴った時には多少では有るが実感出来る程度に発生して居たりする。


 身の詰まったサンマよりも、かなり液体寄りのゲル状生物なクサイムを殴った方が、反作用が強いのは割と不思議な現象なのだが、まぁモンスターと言う超常の存在を相手にする以上は既存の科学や物理で説明のつかない事の一つや二つ有っても可怪しく無いだろう。


「ゴールドブレイバー、フックやアッパーは鍛錬しなければ手首を痛める! 下手をすると捻挫するぞ! どうやら君のチューニング・ソウルは格闘の技術を与えてくれるタイプでは無い様だ! 後から正しいパンチを教えるから、それまでは真っ直ぐ突くんだ!」


 と、一足先に受け持ちのクサイムを仕留めたシャインさんから、そんな注意が飛んできた。


 俺のパンチはボクシングスタイルと言えば聞こえは良いが、兄貴が昔から買い続けている百巻以上もあるボクシング漫画を参考にした物に過ぎない。


 特にその主人公が得意としていたイメージの有るフックやアッパー何かを多用して居たのだが、どうやらソレ等は十分に訓練しなければ危険な打ち方だった様だ。


「はい! お世話を掛けて済みません」


「後進の面倒を見るのは大人の務めだ! 第一、君の様な未成年を戦場と言って良いこの場に出さざるを得ない事自体が、我々大人にとっては痛恨の事態と言える! 君は頼れるならば周りの大人に頼って構わないんだ! 但しソレが甘えに成らない様に注意せよ!」


 シャインさんは言葉の勢いは強いしポージングの度に響く効果音がウザいが、ソレを除けば本当に理想的な先輩or上司なんじゃぁ無いだろうか?


 少なくとも前のバイト先に居たやたら根性論を振りかざして怒鳴りつけ、新人を萎縮させるバイトリーダーよりもよっぽど出来た人だと思える。


 多分コレが心身共に武道で鍛えられた武道家の理想像とでも言うべき人なんだろう。


 そう言う意味では、先輩……小熊猫(シャァシェンマオ)さんや兄貴でも、彼と比べてしまうとチョット頼りないと思えてしまうが、恐らくソレは年の功と言うヤツなのだと思う。


「御主は魔眼で敵を据物とする事が出来るので御座ろう? 動きを止めてから殴るので有れば、アッパーやフックの様な小手先の技術は使わず、素直に振りかぶってストレートで良かろう? 兎角、下手に拳闘に拘らず空手の正拳突きを学ぶ方が早道と思うぞ」


「はい、気を付けて起きます」


 コウガマンさんは……忍者ロールプレイのせいか、人を引っ張るリーダー的な先輩と言うよりは縁の下の力持ちと言うかんじだ。


 いや索敵や手裏剣に依る援護なんかでキッチリと仕事はして居るんだが、シャインさん程俺や小熊猫さんに対して直接指示や忠告の様な事はしてないんだよな……その辺は性格的な物なのか、それともチューニング・ソウルの影響とかも有るのかな?


「おっと、次が居るぞ。 ん? この気配は……全力で戦闘用意ぃぃィィイイ! 危険遭遇だ!」


 と、そんな事を考えながら通路を進んでいくと、コウガマンさんが切羽詰まった顔で注意喚起の声を上げる。


「コウガマン! 何が来た!?」


「この蹄の音は、恐らくは麒麟(キリン)系のモンスターだ! 属性までは解らん!」


「麒麟だって!? 最下層のモンスターじゃないか! なんでこんな上まで上がってきてるんだ! 仕方ない俺が最前列でヤツを引き付けるから、小熊猫は隙を突いて攻撃! ゴールドブレイバーは視線を仕掛けつつ回復の準備! コウガマンは自由に仕掛けろ!」


 ダンジョンが建設され、モンスターとの戦いが始まった当初から戦力として活動して居る二人は、『ボス』と呼ばれるダンジョン最下層に出現する大物との戦闘経験も豊富に有る人達だ。


 その二人がこれだけ焦った様な声を出して居るのだから、麒麟と言うのは洒落に成らない相手なのだろう。


「麒麟はボスと言う訳じゃぁ無いが、様々な属性を持つタイプが居て状態異常(バットステータス)を持っているヤツも居る。更に最下層クラスだけ有って攻撃力も第一層の相手とは比べ物に成らん! 全員生き残る事を最優先にしつつ確実に仕留めるぞ!」


 ……ボス級では無いらしいが、それでも間違い無く俺の少ない戦闘経験の中では最大級の危険度を誇る相手と言う事に成る。


「麒麟……麒麟か! 神話の霊獣が相手なんて腕が鳴る! 可能ならばぶった切ってしまっても構わないんだよな!?」


 そう言う小熊猫先輩は頬面に覆われていて表情こそ見えなかったが声が振るえており、その言葉には多分に強がりが含まれている様に思えた。


「正直、君の斬撃が頼りだよ! 纏っている属性によっては俺の暗黒闘氣じゃぁダメージを与えられない可能性が有るからな! 逆に通りの良い属性なら俺一人でも何とか成るがね」


 シャインさんの攻撃は暗黒闘氣と言う言葉の通り『闇』の属性が籠もった物だそうで、技術で打撃を斬撃や刺突に切り替える事は出来ても、氣の属性を変える様な事は出来ないらしい。


 今回チームでダンジョンに潜る前のミーティングで聞いたのだが、チューナーの攻撃は概ね『打撃』『斬撃』『刺突』と言う3つのタイプに区分されると言う。


 そして更に無数に有る『属性』と呼ばれる物が合わさって初めてモンスターに通用する攻撃に成るらしい。


 この辺は物理攻撃だけで無く『魔法使い』や『超能力者』なんかが使う『魔法攻撃』なんかも同様だが、彼等は複数の属性やタイプを使い分ける事が出来る、ある意味で万能タイプと言える戦闘スタイルである。


 超能力者と呼ばれる者が使うのも魔法と言うのはちょっと変な感じがするが、飽く迄も物理攻撃の対に成る物として魔法と区分して居るだけなので、実際に効果を発揮するメカニズムなんかは違うのだろう。


 なお俺の魔眼は『光属性』の魔法攻撃で、俺の拳は同属性の物理攻撃と言う事に成る。


 同様にコウガマンさんの手裏剣は闇属性&刺突or斬撃の魔法で、刀は本人の能力では無く火属性を宿した呪具で当然物理の刺突と斬撃が可能な武器だ。


 そして先輩がその身に宿した『碧田貫(あおたぬき) 紅狐(こうこ) 大太刀(おおたち) 國守くにもり』と言う刀は、火と水の属性を使い分ける事が出来る稀有な存在らしい。


『グル……ブヒヒーン!』


 聞くだけで身体が振るえだしそうな嘶きを響かせて、黒い電気の様な物を纏った兄貴がよく飲んで居たビールのラベルに描かれて居た幻獣……麒麟がその姿をゆっくりと表した。


「ちぃ! よりによって闇麒麟か! すまんマジで俺はコイツ相手じゃぁ役立たずだ! 可能な限り回避壁に成る様に務めるから、なんとかコウガマンと小熊猫でぶった切ってくれ! ゴールドブレイバーは下手に前に出るなよ!」


 闇属性を纏うモノに対しては俺が持つ光属性が効果的なのだが、ソレを的確に当てる技術が今の俺には無い……そんな事に悔しさを感じながら、俺はせめてヤツを一瞬でも足止め出来る様に右目に力を込めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 事細かに説明がされているのだけれど、頭の中にすんなりと入ってくる文章は毎回毎回すごいと思うし、滅茶苦茶大好きです。 [気になる点] 二人の主人公が交互に一人称で語っているのだろうけど、口調…
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