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厨二病の英雄達~チューニング・ヒーローズ~  作者: 鳳飛鳥


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♯.21 田舎の雑居ビルと胡散臭い商売

「防具なんかを仕立てるなら狸寺の和尚さんに相談すると良いよ。あの人は業界でも割と重鎮と言える人らしくてね、国内はもとより国外の職人なんかにも伝手が有るから、出すものさえ出せるなら最高峰の品々を用意してくれる筈だよ」


 初めて食べるのに何処か懐かしい感じがするカレーと、店内に充満するカレー臭にも負けない力強い食後のコーヒーを頂いて居ると、マスターがそんな言葉を投げ掛けて来た。


 ラブりんさんから聞いた通り狸寺の和尚さん達一族は、古くから関東近辺に出現したモンスターを秘密裏に打倒した来た者達で、当代の討伐者とでも言うべき者は既にマスターの幼馴染だという若和尚に譲っているが、コネとかそう言う物は未だ健在なのだと言う。


 つーか世界大改編の火蓋を切ったあの演説を行った中泉 洋一郎内閣総理大臣とも面識が有ると言うのだから、恐らくは防衛隊の設立に関しても少なからず噛んで居る人物なのだろう事は容易に想像が付く。


 そしてそんな人物をあえて市井に置いたままなのは、警察官や自衛隊からの出向者や以前からの討伐者だけでは手が足りず、俺達の様な一般からのチューナーが参戦してくる事が既定路線だったからでは無かろうか?


 兎にも角にも、そうした人が居るお陰で俺達にも一級線の装備を回して貰えるならば、これ以上にありがたい事も無い。


「そーいや、このビルにはこの店で売ってる魔法の薬以外にも、色々扱ってる店が有るって聞いたんだが、その辺はどーなんすかね先輩」


 と、コーヒーを俺より一足先に飲み終えた先輩がマスターに問いかける。


「ああ、うん、実はこのビルに入ってる胡散臭いテナントって実は割と表向きの商売の他に、こっち系の裏稼業も持ってるんだよね。例えば2階に入ってる占いの店は異世界の薬ほどじゃぁ無いけれども、ソレでも強力と言える魔法薬を売ってたりするんだわ」


 そんな言葉から始まった返答に依ると、占いの店の主人で有る自称オカマだと言う占い師は、実はウィッチクラフトと呼ばれる系統の魔法を使う魔女なのだと言う。


 ちなみに日本語では魔『女』と言うが、実は魔女は必ずしも女性とは限らず西欧諸国を制覇した某宗教に帰依しない『神以外の奇跡の担い手』は纏めてそう呼ぶのだ。


 ウィッチクラフトの担い手ならば魔女(ウィッチ)で、間違いないのだろうがその人物が本当にオカマならば男魔女(ウォーロック)と呼ぶべきだろう。


 まぁこの辺は俺の様な宗教神話マニアか、オカルトマニアでも無ければイチイチ区別したりはしないかも知れないけどね。


「他にも明智探偵事務所は昔から銃器の密売をやっててね……もちろん犯罪に使うような者には売りはしないし普通の銃弾も扱っては居ない。対モンスター用の特殊弾頭を魔女さんと協力して販売してるんだよ」


 この世界の存在では無いモンスターは、必ずしもこの世界の物理学が通じる存在では無く、普通の鉄砲から放たれる鉛弾では傷を付ける事も出来ないのだと言う。


 実際、メートル級のサンマが空中を泳ぐ姿を見ているから物理学やら航空力学なんて物をモンスターは無視した存在なのは理解出来る。


 そしてソレを倒す為に専用の弾丸を用いる事で対処する者が居ると言うのも、まぁわかる。


 だからと言って銃器の密売なんぞやってソレが犯罪に使われる様な事が有ったらマジで洒落にならんと思うのだが……


「明智さんの所は漫画や小説に出てくる様な警察の捜査に協力するなんて事はしない、本業の調査会社だよ? 全うじゃない目的で銃を欲しがる様な奴は事前調査の時点で跳ねられるし、銃の出本も他所のヤクザが持ち込もうとした様な物の有効活用らしいよ」


 俺の不安を見抜いたのか、それとも同じ事を考える者が多く居るのか、マスターは先輩が飲み干したコーヒーカップを洗いながら笑って銃の出どころを明かして来た。


 なんでもこの辺を仕切る『自称暴力団』の白浜組は、古き良き任侠組織の体を未だに有して居り、銃器や麻薬の密売なんて真似はせず、むしろ余所者がそうした商売をしようとすれば警察よりも先に嗅ぎ付けて縄張りを守る為に〆るのだと言う。


 その際に手に入ってしまった物は警察に提出すると言う訳では無く、銃器は明智探偵事務所経由で討伐者の手に渡り、麻薬の類は魔女の手で魔法薬に加工されるか、そうで無い物は綺麗さっぱり始末されるのだそうだ。


「んじゃ同じフロアに有った街金もなんか裏商売やってるんですか?」


 最後の一口のコーヒーを口に流し込みつつそう問いかけて見れば、


「あそこは真っ当な商売しかしてないよ、なんせ大手金融会社がグレーゾーン金利の関係で過払い金請求でアップアップして居る昨今でも、その手のトラブルを一切抱えて無いスゲーキレイな金の貸し方取り立て方をして居るトンデモ無い会社だからねぇ」


 そんな言葉が帰って来た事に思わず口の中の物を吹き出しかけた。


 未だ未成年ゆえに借金なんて物は縁遠い俺だが、ソレでも過払い金と言う言葉はテレビや動画配信サイトに差し込まれるCMで見聞きした事は有るし、ちょっと気になってネットで調べた事も有る。


 グレーゾーン金利と言うのはざっくりとした理解でしか無いが、俺が小学生くらいの時に借金に関する法律が改正され、2つ有った金利の上限が低い方へと統一された事で、高い方の利息で取り立ててた借金が違法に成ったと言う様な感じだった筈だ。


 実際大手のクレジットカード会社でも利益を伸ばす為に低い方では無く、高い方に近い金利を採用してた事も有ったらしく、借金をした事が有るならまず間違い無く過払金請求をすれば金が戻ってくる……と言う弁護士の草刈り場だとネットの記事には書かれて居た。


 ソレがゼロって事は、最初から本当に安い金利だけしか取って来なかったと言う事に他ならない。


 漫画での知識でしか無いが、街金と言うのは銀行や大手サラ金なんかで審査が通らない者が、闇金に堕ちる前に最後に縋る金貸しの筈だ。


 当然、銀行や大手から借金が出来ない者だと言う事は、何らかの問題を抱えた者に金を貸す立場な訳だから、返ってこないリスクの分だけ金利を高めに設定するのが普通な筈である。


 そんな立場で低金利営業が出来ると言う事は、取りっ逸れの無い相手をきっちり見抜いて返済可能な範囲でしか貸さない事を徹底して居るんだろう……なんて事を考えていてアレだが、某漫画のトイチ金融帝王よりもある意味凄いんじゃないか?


「あとこっち側絡みの商売をしてるのは3階の古物商だけれども、あそこは買い取った品にガチ物の呪われた品なんかが有ったら狸寺に持ち込むってだけだし、君達が直接関わる事は無いと思うよ」


 ……有るのか呪われた品、いや猫又がリアルに存在するんだからその手の物が有っても不思議は無いのか?


 まぁ何にせよヤバそうな品を手に入れた場合には、サクッと狸寺に持っていけば良いって事は間違いなさそうだ。


「と言っても、俺も(ぽん)吉ん()と違ってこっちの業界長い訳じゃぁ無いからねぇ。もしかしたら知らないだけで向かいのエロゲー制作会社が実はこっちに関わってても不思議は無いかなぁ?」


 あのエッチなポスターがっつり貼ってたテナントはエロゲ会社なのか……。


 興味が無い訳じゃぁ無いし、兄貴のパソコンに入っているその手のゲームを隠れて遊んだ事が無い訳でも無いが、こんな場末の田舎町にもそんなメーカーが有るとは思っても見なかった。


 ……兄貴を無事助ける事が出来たなら、チューナーは割と大きな金額が手に入りそうだし、稼ぎで自分用のパソコンとその会社のゲームを買って見るのも良いかも知れないなぁ。


 勿論、ちゃんと18歳の誕生日を待ってから買うけどな! 


 そんなくだらない事を考えられるのは、多分兄貴の無事を疑って居ないからだろう……ソレを何となく自覚しつつ俺は飯代を支払って猫喫茶を後にするのだった。

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