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厨二病の英雄達~チューニング・ヒーローズ~  作者: 鳳飛鳥


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♯.13 基礎訓練を命じられスーパーハカーの存在知る事

 無事チューニングを済ませた俺と畑中先輩は着替えが終わると、すぐにまたあの迷路を通り抜けて外へと案内され、ソコから今度は千薔薇木(ちばらき)県に4つ建設されたダンジョンの内で最も支部に近い場所に有る千戸玉(せとたま)北ダンジョンへと向かう事に成った。


 調整を受けて超常の能力(ちから)を得たチューナは、とりあえずダンジョン第一層の比較的危険の薄いエリアで慣らし運転がてら実戦訓練を行うのが千薔薇木支部のルールなのだと言う。


「実戦訓練って……俺達なんの基礎トレーニングもやってないですよ?」


 移動するとだけ言われて乗せられた誘拐の代名詞にもされて居るワンボックスカーの中で、支部長さんにいきなり実戦訓練だと聞かされ思わずそう問い返す。


「その基礎を知る為の実戦だ! と言うか、調整者の能力と言うのは人それぞれ千差万別過ぎて型にはめた訓練と言う物が難しいのだよ。だから万が一の時にフォロー出来る先達を付けた上で雑魚狩りから始めるのがここの流儀になったんだ」


 ……確かに能力を使わなくても、尻にKENのロゴが出た先輩と厨二病臭い光る入れ墨が入った俺とでは得た物が全然違うし、ソレに対して同じ訓練を強いるのが無意味だと言うのも理解出来る。


 けれども兄貴同様にガキの頃から剣道一直線だったと言う先輩と、何方かと言えばインドア派で暇さえ有ればゲームや神話伝承なんかの本を読んでいた俺とでは、基礎体力の部分からして違い過ぎると思うのだが……その辺はどうなのだろう?


「なぁ大先生、俺はガキの頃から先生の所の道場で鍛えてっから得物さえありゃ何とでも出来ると思うがよ。ラスカルの弟はどう見てもへちょいぞ? まぁ攻撃力だけ(・・)なら能力でどうとでも成るんだろーけど、体力は別モンなんじゃねぇの?」


 と、俺が不安に思っている事を丸っと先輩が代弁してくれた。


「適性率が高い者ならばその辺もかなり補正されるらしいな。とは言え自衛官も警察官も無調整者も元々それ相応の訓練を受けて来た者だから、和馬君の様に体育の授業程度の運動しかしてない者が調整を受けた例は恐らく日本では全国的に見ても初めての例だろう」


 ソレって言い方は悪いが俺を丁度良い実験の材料にしたと言う事だろうか?


「しかし海外に目を向ければ、なんの訓練も受けて居ない者が調整を受け、ダンジョンの第一線で活躍して居る例は決して少なくは無いのだよ。帰ってからでもYou Tunerでバトルプログラマーと調べて見ると良いトンデモ無い者が見れるぞ」


 帰ってからと言われたがスマホが有れば今この場でソレを見る事は簡単で有る、まぁ支部長さんの年齢だと携帯電話も老人用スマホとかで、動画視聴なんかはやるとしてもパソコンを使う物と言う印象が強いんだろうな。


 そんな事を考えならスマホでYou Tunerを開いてBattle Programmerと入力して調べて見る。


 すると出てきたのは、三十路位のひょろいオッサンが腕に付けたキーボードの様な物を操作すると、襲って来たモンスターが唐突に同士討ちを始めると言うトンデモな動画だった。


「うわ、エゲツねぇ……何がどうなってこんな真似が出来るのかは知らねぇが、乱戦でコレを的確に使えりゃ最強じゃねぇか。つかこんな能力を持ってる奴が一人居るだけで拠点防衛では殆ど無双モードじゃんな」


 覗き込む様にして俺のスマホに映った動画を見た先輩がそんな感想を漏らすが、うん……俺も同意見だ。


 タイマンでの戦いでも相手の手数を減らせる状態異常(バステ)は、戦略として重要な物だが敵の数が多い戦闘で相手を『混乱』させ敵に敵を攻撃させると言うのは、ソレが通る確率が高ければ高い程に凶悪な戦力に成るだろう。


 幾つかBattle Programmer Whiteと言う人物の動画を見てみたが、彼の能力は『洗脳』地味た何かの様で、群れている敵を纏めて操り同士討ちさせる事で対処したり、デカいのが1匹だけ出たらソレを従え用が済んだら自害させたり……とかなりやりたい放題だ。


「おお、そうか今はそうやって移動中でも見る事が出来る時代だったな。彼は元CIAに所属するクラッカーで直接的な戦闘訓練など一切受けては居ない人材だったそうだ。適性率が高かった為調整を受けさせたら、ご覧の通りの戦力に成ってしまったと言う事だよ」


 喋っている言葉が英語なので、彼が何を言って居るのかは分からないが、時折入るピーとプーの間の様な音で言葉が遮られている辺り、かなり口汚い罵り言葉を発しているのだろう。


 にしてもクラッカーって確か『より攻撃的な活動をするハッカー』の事だったっけか?


 兄貴もチューニングの結果、刀を身体から自由に出せる様に成ったりしてたし、調整を受けた者の経歴や資質に合わせた能力が発現するって事なんだろう。


「日本にも同様の能力を得た者は何人か居るが、彼ほど使い勝手の良い能力と言う訳では無くてな。彼等曰く『生き物の脳も突き詰めればコンピュータと一緒、アクセス出来ればどうとでも出来るのは一部の天才様だけ』って事らしいな」


 つまりチューニングで得た能力は『他人の頭脳にアクセスする能力』でソレを操作する為のスキルは自前の物って訳か。


 それならCIAなんて世界でもトップクラスの諜報機関に居たクラッカーと、日本の自衛隊や警察でサイバー犯罪に対抗する仕事をして居ただろう者で、技量に差が有るのは当然と言えば当然の事かも知れない。


「……確かにこの人の身体は運動習慣の有る様には見えないですね。動きもどこかぎこちない」


 服の隙間から見えた首周りや肩は筋肉も然程付いて居らず、腕だって握ったら折れるとまでは言わないが下手な女性よりもか細い貧弱さが見て取れる。


 しかしその動きは明らかに並のアスリートよりも速いが、その速さに慣れていないのか敵の攻撃を躱す為に飛んだかと思えば、止まりきれずにたたらを踏んだりしていた。


「ろくに運動して無ぇ奴が、いきなり一流アスリートの身体に乗せられた様なもんだなこりゃ。例えるならゴーカートでイキってたガキをF1に乗せる様なもんか?」


 身体能力の強化と言う点ではたしかにその例えが分かりやすいかも知れない、と成ると俺も同じ様にパワーアップした身体能力に振り回される可能性が有ると言う事だろうか?


「まぁ今日の所は調整で得た能力がどれ位使えるのか、また強化された身体能力をどれ位制御出来るのか、ソレを知るための雑魚狩りだと思って置けば良いわ。丁度今日なら天童君も待機番の筈だし彼女が居れば即死さえしなけりゃ何とか成るかんな」


 支部長曰く天童と言う人は千薔薇木支部に所属するチューナーの中でも最高峰と言える回復系の異能を持つ人らしい。


 対象が一定以上の実力を持つチューナーか、無調整者(ノンチューナー)だとしても、何度もモンスターとの戦いを重ね『神秘適性』と言う物を獲得した者と言う条件付きでは有るが、四肢の欠損すらも回復する事が出来ると言うのだからトンデモ無い話と言えるだろう。


 ……即死さえしなけりゃ何とか成るとは言え、食らった時の痛みが無い訳じゃぁ無いんだろうから、下手すりゃショック死なんて事もありえるだろうし、ダメージは食らわないに越した事は無い筈だ。


 とは言え、何となくでは有るが大丈夫だと言う確信めいた物を感じるのも確かなんだよなぁ。


(余が憑いていて生半可な雑魚相手に被害を受ける様な事が有る訳無かろう。万が一避けれぬ様な攻撃を受けたとしても余が宿る腕を盾にせよ。さすれば早々大事に成る事は有るまいよ)


 その根拠は頭の中から聞こえて来る様な相棒の言葉で、俺の記憶が確かなら天使は最上位の階級で有る熾天使でも3対で6枚の羽を持つのに対して、6対の翼を持つ彼? 彼女? はソレを超える存在で有る可能性が高いだろう。


 ……6対の翼を持つ天使と言って思い当たる者も無くは無いのだが、アレは確か人間とは敵対して居る存在だった筈だから、恐らく相棒は一神教系の天使と言うカテゴリーには含まれない存在の筈だ。


(頼りにしてるよ……俺は戦闘じゃぁ完全に素人だからな)


 一抹の不安も無い訳では無いが、兄貴を助ける為には乗り越えなければ成らないのだから、瑣末事に構っている暇は無い! 瑣末事だと良いなぁ……相棒の正体がガチでアレでは無い事を祈りつつ俺は座席に深く座り直すのだった。

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