第二十二話 ラケッティア、嬉しくなんてありませんよ。
特上のお肉に赤ワインをどぼどぼかけ、ボワッと火柱が上がる。
……別にいじけてませんよ。
別にファミリーのほとんどがダンジョンに行っちゃって、こっちの人出が少なくなったからって、別にいじけてませんよ。
そんなにダンジョンが好きならダンジョンのうちの子になりなさい!なんて、これっぽっちも思ってませんよ。
〈モビィ・ディック〉のカウンターからフレイとウェティアが憐みの視線を送ってくるけど、全然平気ですよ。
ガキじゃないんだから、
だから、ボロボロで勝った勝ったと連中がどやどや帰ってきても、別に喜んだりしませんでしたよ。
「頭領、お腹空いたぁ」
「この際、普通の食べ物でもいいから、何かくれるかな?」
しょーがねえなあ!
「季節の海鮮天ぷらお待ち! バジリスクのから揚げお待ち!」
「ミツル。おれは要塞を破壊するために人形を四つ爆破させた。自己犠牲だ」
「それなら、わたしは六個全部爆破させました」
しょーがねえなあ!
「クルマエビのエッグベネディクトお待ち! バルブーフ風スパイシー・オムレツお待ち!」
「オーナー。すまない。彼女たちを連れてきてしまった」
「おじゃまします」
「三十八回も殺されながら戦ったのでお腹ぺこぺこです。フライドポテトください」
しょーがねえなあ!
「ケベシア産子牛の赤ワイン煮お待ち! フライドポテト超盛りお待ち!」
「旦那、おいらにも何かくれよ~」
「おれも、お腹すきました。ね、フィヒターさん」
「どうして、僕まで――何かチーズのおいしいのを」
しょーがねえなあ!
「肉祭りの焼きおにぎりお待ち! ポーボーイ・サンドイッチお待ち! カツレツ・チーズ・サンドお待ち!」
「マスター、お腹空いた!」
「すっごく運動したから、たくさん食べるのです!」
「ハンバーグが食べたい!」
「目玉焼き……」
しょーがねえなあ!
「おかんのデミグラソースのハンバーグ、目玉焼きのせお待ち! はい、では、みなさん、めいめいのやり方で――」
「「「「いただきまーす!」」」」
しょーがねえなあ、こいつらは。
おれがいないとろくに飯も食えないんだから、もう!
カラヴァルヴァ アサシン・グルーピー編〈了〉




