第十九話 アサシン、偽物でした。
「あ、あわわわ! マスターが捕まっちゃいました!」
「落ち着け」
「ジャック、コップ逆さま。ククッ」
「マスターの濡れ衣を晴らさないと!」
「あの~」
ついこのあいだまで、助手だったフィッツがしわしわと手を挙げる。
「濡れ衣じゃないんです。伯爵さまを殺してしまったのは先生なんです」
あー、と三人は喉の医者にかかったみたいな声を上げる。
「ま、まあ、そうですよね。マスター、マフィアのボスですし」
「別におかしいことはない」
「でも、島の支配者殺りましたって宣言してタダで済むようには思えないけどねえ。クックック」
「マスターを助けなきゃ! マスターは師匠たちの薬のために自分が捕まったんです」
来栖ミツルは現在、城の外れの、お姫さまタワーとも言うべき、塔に監禁されていた。
「とにかく、師匠を治して、大急ぎでマスターを助けましょう!」
「それなんだけどねえ、ククク。この薬、ちょっと舐めてみた」
「健康になった気がしないか?」
「まあ、健康にはなれたよ。たぶん、砂糖入りの鉱泉だから」
「は?」
「つまり、ククク、ミツルくんは騙されたんだよ。たぶん、彼女たちのためなら騙されるリスクなんかどうということもないと思ったんだろうねえ」
「ヴォンモ。オーナーはもし、薬が偽物だったら、どうするように言っていた?」
「えーと。確か、マスターは薬が偽物だったら、カンパニーの人を片っ端からぶっ殺せと言ってました」
、
クレオが、ひゅー、と口笛を吹く。
「クックック、そう来ないとね。チキチキ殺戮大レース。で、スコアはどうやって稼ぐ? 僕としては切り取った首を持ってくるのが一番手っ取り早いと思うけど」




