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ラケッティア! ~異世界ゴッドファーザー繁盛記~  作者: 実茂 譲
メスカーロ ホテル・ミツルフォルニア編
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第二十九話 解答者ミツル、マフィア検定。

 現場監督亡き後、冷静に事件を分析した。


 トキマルは来栖ミツルと頭をぶつけている。

 だが、イスラントはぶつけていない。


 そのかわり、イスラントは現場監督から逃げるとき、イスラントが右に、トキマルが左に逃げようとして、思いきり頭をぶつけている。

 そして、イスラントはこの世界の人間が知るはずのない、法の網のかいくぐり方が見事で〈トリッキー・エディ〉と呼ばれた、禁酒法時代シカゴの弁護士で、アル・カポネのビジネス・パートナーの名を口にした。


 ホテル・ミツルフォルニアに戻ったころに弾き出された結論は()()は潜伏し、増殖する。


【イスラント】「そ、そんな、まさか……」

【クレオ】「あーあ。ご愁傷さま」

【ジンパチ】「トキ兄ぃ。顔色わりぃぜ」

【トキマル】「だって、わたしは頭領と頭をぶつけて、それでイスラントとぶつけたら、イスラントが()()を発症した……。つまり、わたしの頭のなかにも()()が! わたしもいつか、知らないうちに()()が発症して――ッ!?」

【ジャック】「な、泣いてる!?」

【哲学者ミツル】「きみたち、人の知識を遊星からの物体Ⅹみたいに言わないでくれるかな」

【ジャック】「オーナーは、まだ、そういう知識が残っているのか?」

【哲学者ミツル】「さあ。どうだろうね。よく分からないけど、残っていないと思う。イスラント、問題出してみてくれないか?」

【イスラント】「ステファノ・マガディーノのあだ名は?」

【解答者ミツル】「ザ・アンダーテイカー」

【イスラント】「ジュセッペ・マッセリアはニコラ・シーロを誘拐して、身代金として何を要求した?」

【解答者ミツル】「キャッシュで一万ドルとカステラマーレ派のボスを降りること」

【イスラント】「ジュセッペ・モレロとテラノヴァ兄弟の関係は?」

【解答者ミツル】「腹違いの兄弟」

【イスラント】「アンソニー・カルファノの巻き添えで死んだ女性ジャニス・ドレイクはどんな女性?」

【解答者ミツル】「コメディアンのアラン・ドレイクの妻で、元ミス・ニュージャージー」

【イスラント】「1962年4月8日の朝、家を出たきり行方不明になるアンソニー・〈トニー・ベンダー〉・ストロッロに妻エドナがかけた最後の言葉は?」

【解答者ミツル】「コートを着ていったほうがいいわよ」

【クレオ】「知識残ってるね。正解か知らないけど」

【ジンパチ】「残ってるぜ。正解か知らねえけど」

【ジャック】「正解か分からないが、正解だろう。イース。もういいぞ」

【イスラント】「1890年ニューオリンズで起きた反マフィア暴動でリンチにあって殺されたシチリア系の囚人たちは本当にマフィアだった?」

【ジャック】「イース。もう終わりでいい」

【解答者ミツル】「諸説あり。ただ、命拾いしたチャールズ・マトランガは完全な黒。殺された囚人のうち、ピエトロ・モナステロの息子はピッツバーグのボスであるステファノ・モナステロ」

【ジンパチ】「旦那もこたえなくていいんだぜ」

【イスラント】「ステファノ・モナステロのあだ名は?」

【解答者ミツル】「そんなものないよ」

【ジャック】「イース?」

【イスラント】「1931年の〈シチリアの晩鐘〉は嘘?」

【解答者ミツル】「嘘。ただし、マランツァーノが殺された二日後にピッツバーグのボスであるジョセフ・シラグサが殺されている。もう十分じゃないかな?」

【イスラント】「(苦痛に顔をゆがめながら)アンジェロ・ルッジェーロはトーマス・ガンビーノを何と呼んでいた?」

【ジャック】「イース!」

【解答者ミツル】「オカマの針子。ねえ、もう十分だって」

【ジャック】「縄と猿ぐつわを持ってこい!」


 全員でイスラントをふん捕まえると、縛って猿ぐつわを噛ませて、床に転がした。


【イスラント】「むぐーっ! うぐぐーっ!」

【トキマル】「とりあえず、わたしにも同じ爆弾があることが分かりました」

【遊星からの物体ミツル】「僕は割と終わっている人間だって分かったよ」

【クレオ】「そんなことないよ。きみは変な知識と変な行動原理を持った、極めて危ないイッちゃった人間ってだけだよ」

【遊星からの物体ミツル】「なぜ僕は徹底的に叩きのめされたんだろう」


 そのとき、学会追放パーティが戻ってきた。

 縛り上げられたイスラントを見て、三人は何が起きたんだ?という顔をしたが、クアリアリアレッロだけは――、


「おお、ここのギルドはクール系イケメンのムニエルを出してくれるのか? でも、ちゃんと血抜きしておいてくれよな。人間の血って焼くとひどいにおいが肉に染みつくからな」


「え?」


「え? ――いやいや! 冗談だよ、冗談! 人間なんて食べたことあるわけないじゃん!」


「目が笑ってなかった」


「きみが学会追放されたのって、食生活に問題があるんじゃ……」


「だから、食べてないって!」


「僕はクアリアリアレッロさんが畜生にも劣るカニバリストだとしても、軽蔑しませんよ」


 そうは言うが、彼らが部屋に戻るために階段を上ったとき、クアリアリアレッロがイスラントを見ながら、ちょっとよだれを垂らしたのをジャックは見逃さなかった。


 ただ、抜刀突撃スーサイダーズよりはマシだった。


 雌雄同体疑惑もあるユキワカがイスラントを見たとき、「膾にするなら梅肉をあえてくれ」と言い、他の剣士たちが、そんなわけないよな?ときいても、否定も肯定もせず、黙って部屋に戻っていったからだ。

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