第二十一話 アサシン、レッサーパンダにもできるガサ入れ迎撃マニュアル。
クックック。
よい子のレッサーパンダのみんなは突然、家に司法官がやってきて、逮捕された経験はあるかな?
アサシンや密輸屋ではない、よい子のレッサーパンダのみんなは司法官というものを過度に恐れて、彼らに狙われたら、もうおしまいだと思ってしまいがちだ。ククク。
そこで不肖、このクレオ、頭のおかしい司法官を迎撃する方法を説明したいと思う。
まず、第一に普段から司法官のガサ入れに備えて、体をつくらないといけない。
僕はこの通り、ガリガリだけど、それでも結構、鍛えているよ。
逆立ちで腕立て伏せをしたり、親指くらいの的に十歩離れた位置から投げナイフを命中させたり。
僕の場合、左腕が兵器になっているけど、よい子のレッサーパンダのみんなはたぶん左腕は普通の腕だろうから、左腕を使わない前提で話をしようか。クックック。
まず、今回の戦闘だけど、大きな平屋があって、それを空き地が囲んでいて、サボテンが塀のように隙間なく並んでいる。
サボテンというのは切り倒すのに意外と苦労する。
それなりに期待のできる防御だけど、過信は禁物だ。
馬のなかにはサボテンの針を恐れずに突進するやつもいる。
ただ、馬で突っ込んでくるなら、こっちにも蹄の音がきこえてくるから、準備はできる。
投げナイフを構えて備えていれば、馬から落とすのも簡単だ。
馬から落ちた騎兵が自分の馬の蹄でズタズタになるのは一見の価値ありだよ。クックック。
さて、投げナイフだけど、半分は太腿のベルトに残し、残りは全部、窓のそばに刺しておく。
どの窓に急行してもすぐに投げられるようにしておくわけだ。
投げナイフで騎兵を狙うとき、一番狙うべきは頭や首、胸ではない。
手だ。
手綱を放してからの落馬に期待するわけだ。クックック。
というのも、高い位置にいる敵に近接攻撃仕掛けるのはよい子のレッサーパンダのみんなが考えている以上に難しい。
戦争が起きたとき、貴族が馬にまたがり、農民兵が徒歩で戦わされるのは理由があってのことなんだよ。クク。
もちろん、短剣で馬に乗っている敵を斬る方法はある。
僕の経験上、山刀くらいの刃渡りがある短剣を逆手に持って、こっちは馬と反対側の足を膝折って、脛を地面にぴったりとつけて、その体勢から短剣を真上に切り上げる。
狙うのは騎兵のふくらはぎでこれを縦に裂く。
痛みは相当なもので、クックック、かなりの出血も伴うから、目がくらむ。
ただ、この斬り上げは攻撃の体勢から防御や回避の体勢に移行するのに時間がかかり過ぎる。
考えて使わないと、頭を叩き割られるから注意が必要だ。クックック。
――†――†――†――
厄介なことになったな。
よい子のレッサーパンダなあんたたちは突然、家に司法官がやってきて、逮捕された経験はあるか?
アサシンやいかがわしい売人ではない、よい子のレッサーパンダなあんたたちは司法官というものを過大評価して、やつらに狙われたら、もうおしまいだと思っていないか?
そうじゃないことを、準備次第で何とかなることをおれが説明したい。
まず、第一に普段から司法官の襲撃に備えて、普段から体を鍛えておくことだ。
鍛えるときは細く強く。狭いところで戦うことを念頭に鍛える。
それに脚力。その場でしゃがんで二メートル飛べるくらいはほしい。
というのも、司法官たちは手入れのとき、必ずこちらよりも大勢連れてくる。
だから、狭い場所で素早く、前後左右だけじゃなく上下でも戦って、数の優勢を打ち消すんだ。
具体的な鍛え方は逆立ちで腕立て伏せをして、親指くらいの的に十歩離れた位置から投げナイフを命中させる。それぞれセット数を決めて、やりたいことによって増減させる。
おれの場合、右手に短剣、左手は空にしておく。
戦う場所でつかめるものが見つかったら、それを使うからだ。椅子やマント、帽子なんかも相手の顔に投げれば隙ができる。
だが、一番なのは敵が出血した際に、イースの目を隠すのに開けておきたい。
それで、今回の戦闘だが、大きな平屋だ。それを狭い庭が囲んでいて、サボテンが塀のように隙間なく並んでいる。
サボテンというのは切り倒すのに意外と苦労する。
それなりに期待のできる防御だが、要塞というわけではない。
馬のなかにはサボテンの針を恐れずに突進するやつもいる。
ただ、馬で突っ込んでくるなら、こっちにも蹄の音がきこえてくるから、準備はできる。
投げナイフを構えて備えていれば、鍛錬を発揮して、落馬を狙える
手持ちの投げナイフだけど、三割は太腿のベルトに残し、残り七割は、窓のそばに刺す。
どの窓に急行してもすぐに投げられるよう武器をあらかじめ置くのは籠城戦の基本だ。
投げナイフで騎兵を狙うとき、一番狙うべきは目だ。胸や首、手ではない。
目は死命は制しなくても、当たれば相手の視界を奪えるし、かなりの動揺を誘う。それでこちらがやられる確率を低くできる。
基本的に馬上の敵は投擲で仕留める。
というのも、高い位置にいる敵に近接攻撃仕掛けるのはよい子のレッサーパンダなあんたたちが考えている以上に難しいからだ。
戦争が起きれば、騎士は馬で戦い、歩兵は使い捨てにされる。
意味があってのことだ。
だが、短剣で馬に乗っている敵を斬る方法もないわけじゃない。
脚力を鍛えて、二メートルの高さを飛べるようにすると訓練のとき言ったが、それをここで使う。
騎兵に横から飛びかかり、組みついて素早く首を切り裂き、屠る。
相手は両手が武器と手綱で塞がっているし、こうしたアサシン流の跳躍に慣れていない。
騎兵を屠るならこれが一番だ。
ただ、問題がないわけじゃない。
もし、相手が咄嗟に手綱を引いて、馬を棹立ちにさせたら、こっちの頭蓋骨は馬に蹴飛ばされて粉砕する。
それに後ろから跳躍するのもオススメしない。
馬というのは背後に敏感で、こっちが近づけば、間違いなく蹴りを入れてくる。
だが、ときどきうまくいくこともある。状況次第だ。試してみてくれ。
――†――†――†――
どーでも。
面倒くさがりなレッサーパンダのみんなはいきなり、ガサ入れを食らって、しょっぴかれたことある?
カタギだけど、面倒くさがりなレッサーパンダのみんなは岡っ引きを怖がり過ぎて、縄を打たれたらもうダメだって思ってるでしょ。
ほんとはどーでもな話だけど、ま、おれトキマルが教えてあげるよ。岡っ引きの成敗。
まず、最初。ガサ入れに備えて、体を鍛える。
頭領はおれのこと救いようのないぐーたらだって言ってるけど、それでも忍びとして恥ずかしいことにはならないように鍛えているつもり。
逆立ちで腕立て伏せをしたり、親指くらいの的に十歩離れた位置から手裏剣を当てたりとかさ。
気を練って忍術を放つための瞑想だってしてる。忍びは鍛えるところをホイホイ見せたりしないもんなの。
さーて、今回のどーでもな戦いだけど、泥でつくった平屋があって、それを鶏がいる空き地が囲んでいて、サボテンが城壁みたいになってる。
サボテンってのは棘があるから、こいつを切れと言われて仕事するのは楽しくない。
それなりに障害にはなるんだけど、過信するのもね。
ほら、馬のなかには頭がおかしくなって針の痛みなんか感じずに突進するやつもいるでしょ。
お腹ンなかのハラワタの七割を外にこぼしても、競走馬みたいな走りをするやつもいる。
馬の体力をなめちゃいけない。
ただ、馬ってのはやかましい生き物だから、どこから攻めてくるのかは音と気配で分かる。
手裏剣を構えて備えていれば、殺れる。
ま、どーでも。
で、手裏剣だけど、手持ち全部を窓と扉のそばに刺しておく。
コレ、籠城戦のジョーシキ。
相手は騎兵で来る。狙うのは頭。できれば眉間。
それ以外は意味がない。
大ぶりの苦無なら頭蓋を砕くことが可能だ。
それ以外の場所じゃ即死が狙えない。
手裏剣がなくて、鞍の上の敵に斬撃を仕掛ける方法だけど、片膝をついて低い体勢から忍び刀で一気に斬り上げる。狙うのはふくらはぎだ。
これで落馬した敵を組み敷いて、喉を搔き切る。
ただ、この姿勢、馬からしてみたら頭がかじりやすい。
馬って凶暴なんだよね。
アズマの馬術にはわざと敵を噛みつかせるための技もある。
これは頭を頭巾で覆えば、避けられるけど、絶対ではない。
膝斬り上げをするときは馬の口に注意する。
こればかりは、どーでも、とおろそかにできない。
――†――†――†――
冗談じゃねえや。
よい子のレッサーパンダな旦那たちはおまわりにガサ食らったことあるかい?
なんも悪さしてねえカタギはおまわりにビビるけど、でも、そんなに絶望するもんじゃねえ。
うまく立ち回れば、かわせる。このジンパチさまが説明してやるぜ。
まず、戦いはガサが入る前から始まっている。
つまり、普段から気を鍛えるのさ。
オイラの十八番の変化の術はかなりの気を使う。
ガサ入れみたいな修羅場でも落ち着いて気を練られるようにするには、まあ、一朝一夕は無理だが、鍛錬あるのみだぜ。
まあ、具体的には丹田の位置をしっかり理解して、そこで気を練ることを、こう、頭に浮かべるんだ。そのうち、うどんをこねるみたいに気ができて、そうしたら、もうキツネにしようがタヌキにしようが鍋焼きにしようが、自由自在。
もちろん気は消耗する。
これはオイラの経験だけど、気を消耗すると、イライラしたやつに出くわす確率が高くなる。
なんとも損な話だけど、そこはうまくかわしてくれ。
で、戦いだけど、オイラとしては変化の術で敵さんの仲間に化けてずらがるのが第一だ。
戦わないでかわすのがオイラの忍びの道なのさ。
とはいえ、こんなふうな状態じゃ戦わないといけない。
まあ、オイラも実戦経験がないわけじゃあない。
だから、コツは分かる。
まず、手裏剣は窓や扉のそばに置かない。
一枚残らず身につけておく。これは絶対だ。
これを守らないと、いざというとき手持ちで投擲ができなくて死んじまうから、よい子のレッサーパンダの旦那たちはくれぐれも気をつけてくれよな。
で、手裏剣だが、どこを狙うのがいいか?だけど、オイラはどこでもいいと思うな。
当たればいいんだよ、当たれば。
で、今回の籠城戦だけど、ぼろい平屋、まわりを庭、サボテンの壁。
サボテンは簡単に切り倒せないが、馬が針を恐れず突っ込んでくることがある。
耳を澄ませることだ。蹄の音がドゴドゴドゴをやかましくなったら、敵さんお出ましの合図だ。
馬乗りを倒すのは飛び道具が絶対だ。
飛び道具がねえなら、あきらめて逃げるこった。
間違っても徒歩で騎兵とやり合えると思っちゃいけねえ。
騎兵が打ち下ろす斬撃はどこに落ちるか読みづらい。
それに比べて、こっちはふくらはぎくらいしか狙えるところがないから、どうしても動きが読みやすくなる。
気づいたら、アタマがスイカみてえに真っ二つ!なんてこたぁザラにある。
騎兵に刀はやめろ。せめて薙刀が欲しい。
――†――†――†――
ふん。
よい子のレッサーパンダなきみたちは突然、家に司法官がやってきて、逮捕された経験はあるか?
暗殺者やいかがわしい売人ではない、よい子のレッサーパンダなきみたちは司法の力というものを過大評価して、やつらに狙われたら、もうおしまいだと思っている。
そうじゃないことを、準備次第で何とかなることをおれが説明しよう。
まず、第一に、家宅捜索に備えて普段から体を鍛えておくことだ。
具体的に言えば、吹雪のイメージを体のなかに飼い続けて、魔力の補助をしておく。
やつらが手錠で拘束をかけてくるなら、こっちは吹雪で身動きをとれなくしてやる。
魔剣は強力だが、精神面で脆弱なところを見せると、逆にこっちにかかってくる。
まあ、おれのような暗殺者なら、魔剣に飲まれるなどありえないがな。
剣は基本的に両手持ちだ。
体に斬り込んでからのブレがない。
血の一滴流す前に氷づけにしてくれる。
それで、今回の戦闘だが、平屋をゴミが転がった庭が囲んでいて、サボテンの壁に四方を囲まれている。
サボテンは強い植物だが、抜刀突撃に耐えられるほどではない。
白兵戦は覚悟する。
ただ、馬で突っ込んでくるなら、こっちにも蹄の音がきこえてくる。丸わかりだ。ふん。
それと、手持ちの投げナイフだが、三割は太腿のベルトに残し、残り七割は、窓のそばに刺す。
どの窓に急行してもすぐに投げられるよう武器をあらかじめ置くのは籠城戦の基本だ。
別にヨハネを真似しているわけではない。真似しているわけではないぞ。
ナイフの投擲で狙うなら、相手の剣だ。
攻撃を防いで、氷づけにしてやる。
落馬したら粉々に砕けるくらいな。
とはいえ、高い位置にいる敵に近接攻撃仕掛けるのはよい子のレッサーパンダのきみたちが考えている以上に難しい。
戦争が起きれば、騎士は馬で戦い、歩兵は使い捨てにされる。
生き残りたいなら、まず馬を盗め。
おれの剣はそれなりの長さはあるが、馬上の敵を相手にするにはまだ心もとない。
リーチの差は魔法でカバーするが、よい子のレッサーパンダのきみたちがどうしても斬撃で対処したいなら、そうだな――(ジャックのほうをチラチラ見る)――飛び違い斬りにすることだ。
別にヨハネの真似をしているわけではない。
おれはただ斬撃での最適解を教えているだけだ。
決してヨハネを意識したりしているわけではないぞ。
違うからな。
――†――†――†――
んもー。
最悪。おまわりさんって、どうしてこうみんな無礼なのかしら。
もうちょっと、礼儀正しく、スウィートになれないものかしらね。
かわいいかわいいレッサーパンダのみんなもそう思うでしょ?
でもね、おまわりさんが来たら、ちゃんとお迎えすればいいんだから、必要以上に悲観しちゃダメヨ?
一度、どの賭け屋でもあたしの賭けを受けてくれなくなったことがあったけど、あれに比べれば、おまわりさんなんて、どーってことないんだから。
まずね、おまわりさんがやってきたら、ティー・パーティーに招待してあげるの。
おいしいビスケットをたくさん用意してね。
ビスケットっておいしいでしょ?
おまわりさんも食べたら、スマイル。
あたしもスマイル。
睨みあっても花は咲かないけど、スマイルすれば、お顔に素敵な花が咲く。
そうよね。
え?
窓に何本、ナイフを置くかって?
まー、そんな物騒なこと、考えたこともないわよ。
お金にちょっと詰まったら考えるかもしれないけど。
お馬さんに乗った相手に斬りつけるにはどうしたらいいかって?
んまー!
そんなことできるわけないでしょ!
お馬さんにケガさせたら、どーするのよ! もーっ!
そんなこと言う、悪いレッサーパンダのみんななんて、知らない!
ぷんぷん!




