第二十七話 手紙、コルネリオ・イヴェス気付
ギデオンへ。
やっほー。あんたがなかなかこっちに帰ってこないから、こっちから手紙を書いてやったわよ。感謝しなさい。
お父さんは便りがないのは無事な証拠だ、なんて、暢気なこと言ってるけど、あんたのことだから面倒くさがってるんでしょ? まあ、いいわ。
今回、手紙を書いたのはね、前置きすっ飛ばして書くけど、子どもが生まれたのよ。
郵便事情が最悪で、ひょっとしたら、半年後とかに届いてるかもしれないけど、とにかく生まれたの。まさか、あんた、わたしが結婚してることすら知らないなんてことはないでしょうね? まあ、いいわ。
とにかく生まれたの。男の子。元気な男の子よ。子どもを産むのがこんなにヘビーだとは思わなかったけど(ベビーなだけに!)、なんかもう貧血でふらふらだけど、まあ、とにかく生まれたの。
信じられる? こんなにかわいい赤ちゃんに寿命があるの。いつか死んでしまうの。それはずっと先のことだし、それより先にわたしとダーリンが死んじゃうけど、とにかくいつかは死んでしまうの。それが信じられなくて信じられなくて、涙が止まらないのよ。
あー、一応、あんたが生まれたときも泣いたのよ。まあ、いいわ。
で、赤ちゃんの話に戻るけど、とにかくこの子がいつか死んでしまうことを思うと、わたしもダーリンもどんなことがあってもこの子を守ろうって気になるの。それで、わたしたちが死ぬころにはこの子もやっぱり自分の赤ちゃんを見て、寿命があること、いつかは死んじゃうことを思って、わんわん泣いて、それでこの子を守るために!って思うの。
この繰り返しがずっとずっと続くのよ。それはとても素晴らしいこと。素晴らしくないなんて言うやつには頭突きを食らわせるべき。
さて、赤ちゃんの名前だけどね、デゼルヴァロに決めたの。かっこいい名前でしょ?
あんたもこれで叔父さんなんだから、ちょっとはそれらしくしなさいよ。それと名前はデゼルヴァロだからね、デゼルヴェロとかデゼルヴォロって呼んだら往復ビンタなんだからね。
まあ、いいわ。とりあえず、この手紙が届いたら、一度、サン・フェルナンド・デル・ソルに帰ってきなさい。母さんのお墓参りもするのよ。
いい? きっと帰ってくるのよ。
それと判事さんによろしく。あんたのことを引き受けてくれた稀有な人なんだから、しっかりお手伝いするのよ。いいわね?
赤ちゃんの名前はデゼルヴァロ・ディアス。ちゃんと覚えておきなさいよ。
間違えたら往復ビンタだからね。
あなたの愛する姉
アデリータ・フランティシェク・ディアス
カラヴァルヴァ ギデオンと〈街の中〉編【了】




