表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラケッティア! ~異世界ゴッドファーザー繁盛記~  作者: 実茂 譲
カラヴァルヴァ ギデオンと〈街の中〉編
1201/1369

第九話 聞き込み、死刑人カルボノの話。

 朝一に検死というのはあまりいい気分はしない。

 だが、死刑執行よりはマシかもしれん。


 なぜかは分からないが、監獄は朝に死刑をしたがる。

 首切り人の一日がそれでよくなると思われているのなら心外だが、そもそも死刑人の心なんかに気を配るやつなどおらん。


〈まわる蛇〉と最後に会った男は青い帽子をかぶっていたそうだ。


 そうだな。真夜中の十一時。

 夜でも青と分かるくらいの青。


 近所の住民が三人見ている。

 ただ、どのくらい青いかには差がある。

 海のように青い。

 夫に踏み込まれた間男の顔のように青い。

 ただ、青い。


 まあ、そのへんはお前さんたちの仕事だからな。

 おれは深入りせん。


 検死の結果だが、さっきイヴェス判事に説明したことの復唱になるがな、死因は刺殺だ。

 体はまだ固まっていないから、五時間前くらいに死んだ。

 午前三時ってところだ。


 ところで〈まわる蛇〉は刺殺と言ったが、外から刺されたんじゃない。

 なかから刺されていた。


 錆びた針金のごちゃごちゃしたものを無理やり飲み込まされていた。

 それで肌に傷はないのに体じゅうが内側から刺された傷を受けたわけだ。


 特に胃と肺がひどいことになっていた。

 デゼルヴァロ・ディアスと同じだ。


 あれも針金を飲み込まされていた。

 ひどい顔だった。


 穴?


 いや、そんなびっしりと開いた穴なんてなかった。

 肌はきれいなもんだった。水死体にしてはな。


 顎だよ、問題は。


 顎が外れて百八十度開いていた。

 頬が裂けていたよ。


 針金を飲ませるんだから、そうなるが、それにしてもひどかった。

 あんまりひどいんで、市のほうから刑罰にしようという話が上がっている。


 いまから顎の外し方を勉強するのはきついな。

 おれも歳なんだ。


 それで〈まわる蛇〉だが、呪術師だから呪いを食らった相手の仕返しかもしれないと思うところだろうが、ディアスのこともある。

 ディアスは盗賊団の故買屋で、ウンベルト二世伯爵が失踪している。

 そのディアスが同じ方法で殺されている。


 こうなると、イヴェス以外の不良判事どもも重い腰を上げるし、それに〈聖アンジュリンの子ら〉がいる。

 連中と事件の管轄がごちゃごちゃしてくるんじゃないか?


 まあ、判事のかわりにそのへんの面倒事をかぶるのは助手の仕事だ。

 励むんだな。


〈聖アンジュリンの子ら〉は暗殺もできるって話だ。


 もし、やつらに殺されたら、検死は任せろ。

 絵入りの報告書もつくってやるぞ。

三週間以上前 【矛盾】ディアス、妖精取引所に姿をあらわす

       【矛盾】ディアス、川に沈められる(橋守の検死)

17日前   ウンベルト二世失踪

       【矛盾】ディアス生存(妖精取引所使用人の証言)

10日前   【矛盾】ウンベルト二世、指輪を呪術師に持ち込み、飲み込む

6日前    【矛盾】ディアス、川に沈められる(カルボノの検死)

3日前    ウンベルト二世帰宅

       ディアス、死体で発見

         →死体には大量の針金が飲まされていた

         →【矛盾】死体は指輪を所持か?

         →【矛盾】死体の顔にびっしりと穴(川のなかでつけられた)

         →【矛盾】顎が百八十度開いていた

       エビ漁師、死体の指輪を売る

現在     ウンベルト二世出かける

1日後    呪術師〈まわる蛇〉死体で発見

        →死んだ時刻は午前三時

        →錆びた針金を飲まされて殺害

        →最後に会ったのは青い帽子の男

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ