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ラケッティア! ~異世界ゴッドファーザー繁盛記~  作者: 実茂 譲
カラヴァルヴァ ギデオンと〈街の中〉編
1199/1369

第七話 聞き込み、呪術師〈まわる蛇〉の話。

 あら、坊や。何かご用かしら?

 恋の悩みも、学問もお金も、思いのままに。


 え? 判事が賄賂をもらうようにする呪い?


 イヴェス判事のこと? 無理ね。できることとできないことがあるわよ。


 で、何の用なの? 治安判事のお世話になるようなことはしてないわよ。


 指輪……ふーん、まあ、同業者から〈まわる蛇〉なんてあだ名つけられると、こういうものが持ち込まれるのが多いのよ。


 自分で自分の尻尾を噛む蛇竜は永遠の象徴なんていうけど、あれは駆け出しの呪術師を象徴しているのよ。

 食べ物を買うお金に困って、自分の尾を食べようとする蛇。

 ひょっとすると、呪術師がお金に困ること自体が永遠の象徴なのかもしれないわね。


 じゃあ、どうしてわたしは呪術師になったのか。

 永遠の謎ね。ああ、また永遠。


 指輪を呑み込む呪術? あんた、その歳でずいぶん突っ込んだものを知っているのね。


 あることはあるけど、ちょっとキツイのよね。


 指輪を呑み込むのがキツイのもあるけど、もうひとつ別のキツさがあるのよ。


 きいたことはない? 指輪は持ち主を虚飾する。

 虚飾というのは何かと強い想念がついてまわる。

 そうした指輪のなかには呪術具に持ってこいになるものがあるのよ。


 それで指輪を呑む。

 それとさっききいた針金のことだけど、そんなものを呑み込む話はきいたことないわよ。


 そんなことしても何の得にもならないから、やっちゃダメよ。


 で、他にききたいことは? かわいい顔の男の子には特別にサービスしちゃうけど。


 ディアスは他に何か持ち込まなかったかって?


 ディアスって誰?


 いえ、違うわよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 うん。間違いない。()()()()()()()

 九日前じゃなかった。その日はシウダー・デ・サンザネラで占い師をやってる妹が遊びに来た日だから。


 デステ伯爵はあまり余裕があるようには見えなかった。

 何か焦っているようだったし、どうしても会いたい人がいるって。


 それで指輪呑みの術を教えたの。


 でも、そのどうしても会いたいって幸運な女は誰なんでしょうね?


 貴族で顔立ちが美しくて、権力と富もある。

 荘園をいくつも持っているから、あちこち旅行もできる。


 女から見たら、羨ましい限りよね。そんな伯爵が指輪を飲み込んでまで会いたい女性なんて。


 伯爵はわたしの目の前で指輪を呑んだ。これは間違いない。

 ただ、呪術ってちょっと気まぐれな術式なのよね。気まぐれな悪霊の力に頼り過ぎてるから、どうしても結果にムラがあるのよ。

 だから、待ち人来ずとも恨むなかれ。

 わたしのせいじゃないってことを分かっておいてね。探偵さん。

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[一言] だめだ、さっぱりわかんね。 謎が謎を呼びます。
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