第三話 聞き込み、スカリーゼ橋の死体係の話。
こんな仕事してると、本当にカラヴァルヴァは罪深い街だと思うものですよ。
もっとも、この歳では仕事は選べませんがね。
エビ漁師たちと市の約束で、水死体はスカリーゼ橋でひっかかるよう網を張ることになってるんですよ。
とはいえ、網を張ったら船が通れませんから、張っているけど張っていない。
そういう約束で、エビ漁師も納得しています。
ですが、何の皮肉か、網を張らなくても橋の脚に引っかかるんですよ。
二日に一度、多いときは一日に五人引っかかったこともあります。
ほとんどが他殺体です。頭を割られたり、後ろ手に縛られて足に重い石を結ばれていたり。
イヴェス判事の助手にこんなことを講釈するのは何ですが、水死体というのは腐って出たガスを腹のなかに溜めるのですが、このガスがえらく軽くて、ちょっとやそっとの石ではきかない。
浮かんでくるんですよ。しばらくしてから。腹を風船みたいにして。
デゼルヴァロ・ディアスもその口でした。
腹に破裂寸前にガスが入っていて、引き上げる直前、水のなかで破裂しました。
腐った内臓がエビの網にかかったってエビ漁師たちが文句を言いました。
え? どのくらい前から水に捨てられていたかって?
カルボノは三日前と言ってましたね。つまり、いまから六日前。
死因を調べるのは死刑人のカルボノが一番ですが、これ、カルボノには言ってほしくないんですが、水死体ならわたしのほうが上です。
この時期、引き上げる途中に水のなかで破裂するほど皮が弱るには最低でも三週間は必要です。
顔のふくらみ方も証明してましたよ。真冬ほどではないが、この時期なら底の水はかなり冷たい。死体は腐るのが少し時間がかかるし、脹らんではいるものの顔の形も残るんです。夏なら顔の肉がごっそり落ちて、しゃれこうべですよ。
え? 三週間前は本当かって?
間違いありませんよ。
それと、そのディアスという男、かなりの悪党ですよ。
これはエビ漁師が言ったんですが、流れていったハラワタは針金でぐちゃぐちゃになっていたそうです。
死ぬ前に針金をぐちゃぐちゃになるほど飲み込まされるなんて、よっぽどな死に方ですよ。
きっと相当恨まれていたんでしょうな。
三週間以上前 【矛盾】ディアス、妖精取引所に姿をあらわし始める
【矛盾】ディアス、川に沈められる(橋守の検死)
17日前 ウンベルト二世失踪
【矛盾】ディアス生存(妖精取引所使用人の証言)
6日前 【矛盾】ディアス、川に沈められる(カルボノの検死)
3日前 ウンベルト二世帰宅
ディアス、死体で発見
→死体には針金が飲まされていた。
現在 ウンベルト二世出かける




