第三十四話 ラケッティア、誰が一番セクシーグランプリ。
最終結果
ポルフィリオ・ケレルマン派(ポルフィリスタ)
†ポルフィリオ・ケレルマン 10/1 殺害
†ミゲル・ディ・ニコロ 9/9 殺害
†パスクアル・ミラベッラ 10/1 殺害
†ディエゴ・ナルバエス 9/25 殺害
†ガスパル・トリンチアーニ 10/2 殺害
†ルドルフ・エスポジト 9/8 殺害
†アニエロ・スカッコ 9/12 殺害
†ピノ・スカッコ 10/3 殺害
フランシスコ・ディ・シラクーザ派(フランキスタ)
†フランシスコ・ディ・シラクーザ 10/15 殺害
バジーリオ・コルベック
バティスタ・ランフランコ
†サルヴァトーレ・カステロ 9/7 殺害
†アーヴィング・サロス 9/13 殺害
†アウレリアノ・カラ=ラルガ 10/3 殺害
ロベルト・ポラッチャ 10/3 転向
〈鍵〉の盗賊ギルド
†〈砂男〉カルロス・ザルコーネ 10/4 殺害
†〈キツネ〉ナサーリオ・ザッロ 9/3 殺害
十月の終わり、さすがにカラヴァルヴァにも秋の気配が濃厚になり、気温は下がり、広葉樹は『葉っぱ赤くしちゃうぞ? うそじゃねえぞ? 本当に赤くしちゃうぞ?』と言い始めた。
帽子業界は麦藁帽子からフェルト帽に製造を切り換え、先日新しいフェルト帽を手に入れたので、それに合うクラヴァットをあれこれ試してみて、納得がいったので、一階へ降りていくと、〈モビィ・ディック〉に男どもが集まっていた。
カウンタ―にジャックとイスラント。スツールにトキマルとクリストフとシャンガレオンとジンパチ、ビリヤード台にクレオとシップ。
「ものの見事に野郎しかいねえな。女子はどこにいるんだ? まあいい。ちょっと待ってろ」
そう言って、二分後、戻ってきた来栖ミツルの手には怪盗クリスのカードの束が!
「誰が一番セクシーにこいつを投げ放てるか大会しようぜ」
試行錯誤しながら、様々な投げ方が考案された。
ノールック殺法やナルシスト打ち、ブーメラン、十連続螺旋乱れ投げ、『フラマー村のベリーは最高だぜ』投げ、キューカンバー・キラー……
大会を始めて分かったのだが、全員が参加者のため、公平に評価できるものがいない。みな自分のやり方に自信を持っている。
こうなると、誰が一番強いギロチン・チョップを打てるかでグランプリが決まる。
「なら、おれが降りよう」
と、ジャック。すると、イスラントが――、
「ヨハネが降りるのか? ならば、おれも降りる。勘違いするな。お前のためではない。おれのためだからな」
男のツンデレ、需要ある?
――†――†――†――
こうしてジャックとイスラントが審査員になり、グランプリはクリストフに決まった。
そりゃそうだ。本職だ。プロとアマチュアの違いだ。
ノールック殺法とナルシスト打ちを絶妙に混ぜた技は確かにみなを唸らせるものがあった。
そのうち、一階のあちこちに野郎どもが散らばった。
トキマルだけはグラマンザ橋に引越しした妹ちゃんに会いに行こうとしているようだが、溜め込んだぐうたらを一気に解き放ったせいか、なかなかキリっとしたモードに切り替えられず、困っているようだ。
おれは〈モビィ・ディック〉と反対側にある広間で肘掛椅子に深く腰掛け、あくびをして、ちょっと片ケツ持ち上げて屁ぇこいて、さて一日の残りをどう潰そうか考えていると、クリストフがふらりとやってきて、隣の椅子に座った。
「ちょっとひとり旅してくる。まあ、二週間かそこらだ」
「〈砂男〉か?」
「ああ。泥棒で悪党に違いないが、あんなふうに死ななきゃいけないようなやつじゃなかった」
クリストフなりにあの事件には思うところがあった。
泥棒同士のネットワークは結構強い。
そして、〈砂男〉については思うところがある。
「ポルフィリオもディ・シラクーザも、とっとと殺しとけば〈砂男〉は生きてたかな?」
「どうだろ? それやったら、権力の空白ができるから、みんなが欲望のまま動いて、殺し合いは終わりが見えなくなる。掟もへちまもなくなって、それこそ、よくミツルが言ってる通り、街じゅうケダモノだらけになる。それにそんなことになったら、ここにいる誰かが最低ひとりは殺されたと思う。おれらはできることはした。〈砂男〉も覚悟はしてた。……なんか、いいことがしたいな。自分はまだ人を救えるって感じたい。くそいまいましい自己満足でも別にいい。誰かを助けて、それを〈砂男〉の弔いにする」
「そんな弔いもらっても〈砂男〉も困るだろ?」
「そりゃ違いない」
カラヴァルヴァ ケレルマンネーゼ戦争編〈了〉




