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ラケッティア! ~異世界ゴッドファーザー繁盛記~  作者: 実茂 譲
カラヴァルヴァ ケッレルマンネーゼ戦争編
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第十八話 マフィア、九月二十三日昼。

 ポルフィリスタの幹部のうち、三人が揃って、ポルフィリオ・ケレルマンと食事をした。


 最年長のパスクアル・ミラベッラは山賊を統括する大幹部であり、ポルフィリオの信任も厚い。

 ミゲル・ディ・ニコロの亡き後、副官的な立場にある。


 いつも赤い筒型の帽子に黒い布地を垂れさせた白ヒゲの老人はガエタノ・ケレルマンとともに駆け出しの時代を経験した古い世代の幹部だった。


 ディエゴ・ナルバエスは都市出身の幹部であり、賭博部門を統括する切れ者だった。

 なかなか贅沢も好きで、愛する家族とともに馬なし馬車、つまり輝素エーテルで動く赤い自動車に乗って、観劇や戦車競争を見に行くのが楽しみだということをよく仲間に話していた。


 それ以外のこと――酒、女、麻薬、ギャンブルとは全く無縁の生活を送っていて、治安裁判所ではなぜナルバエスがポルフィリスタについたのか、ちょっとした謎だった。


 そして、ガスパル・トリンチアーニは山賊から都市に移った幹部でギルドと数当て賭博、それに売春を統括していた。

 上納金では一番だったが、ギルドと数当て賭博と売春というのはなぜか山賊に馬鹿にされやすく、実際、ポルフィリオ・ケレルマンはよく冗談の種にしてからかった。


 いつも洗練された身なりをしていたが、それをポルフィリオ・ケレルマンが発情した雄鶏と言って、からかったことがあった。


 ガスパル・トリンチアーニも一緒になって笑っていたが、その日の会食は用事があると言って、はやめに切り上げた。


 ミラベッラはポルフィリオに、


「トリンチアーニをバラしましょう」


 と、進言した。


 ポルフィリオの返事は――、


「ガスパルを? なんでだよ?」


「大勢がいる前であんなふうに馬鹿にされて黙ってる男はいません。若に報復するだろうし、報復する気概もないやつなら、どのみち今度の抗争の役に立たない。つまり、生かしておく必要がないってことです」


 ポルフィリオはその忠告を笑って流した。

 それにその場にいたナルバエスがトリンチアーニは稼ぎ頭だと言って、かばったので、仕方なくミラベッラは次の会食でトリンチアーニを、いまどれだけ必要な人物であるかと持ち上げるように言った。


 そうした会食がケレルマン商会の持つレストランで行われた。


 上等のワインと一緒にロブスターや鹿肉をふるまい、ミラベッラとナルバエスはポルフィリオがトリンチアーニに前回の態度を詫びるとはいかないが、最低限、トリンチアーニに誠実に当たってくれることを期待したが、事態は最悪の方向に転がった。


「おい、ミラベッラ。見ろよ。今日の雄鶏はまたずいぶん着飾ってるじゃねえか?」


 まだ昼だが、ポルフィリオは相当飲んでいて、デキあがっていた。


「外見は雄鶏でも中身はどうだか」


「そりゃどういう意味ですか、若?」


「てめえがホモ野郎だって言いたいのよ。なあ、ガスパル」


「……」


「てめえときたら、へらへらしてカネの話ばかりでまるでディ・シラクーザみてえだ。そのうち宦官みたいにぶくぶく太り出して、カマみたいな声でしゃべり出すぜ」


「先代のときはきちんと尊敬された」


「――なんだって?」


「先代のときはおれの働きはきちんと――」


 尊敬、の言葉が出る前にワインボトルがトリンチアーニの額で割れ、その後、机の上に飛び上がり、料理を蹴散らしながらやってきたポルフィリオがトリンチアーニの頭を蹴飛ばした。

 それからポルフィリオはトリンチアーニをさんざん蹴飛ばし、ついにトリンチアーニは人の手を借りながら、部屋の外へ運ばれた。


 最近の抗争の泥沼化でポルフィリオの指導力がドン・ガエタノと比較されることが多くなった。

 ドン・ガエタノも血に飢えたケダモノらしいところはあり、ひょっとするとポルフィリオよりもひどかったかもしれないが、組員のシノギが潰れてしまう抗争のようなことに発展することはなかった。


 もちろん、それをポルフィリオに面と向かって言うものはいない。


 今度はナルバエスもミラベッラの言葉に賛成した。

 ふたりはポルフィリオにトリンチアーニを殺す許可を求め、人を送ったが、トリンチアーニの家はもぬけの殻で家族ともども逃げたらしかった。


「ほっとけ。どうせ海外にでも逃げたんだろ。ナルバエス、やつの商売はあんたが引き継げ」


 その後、誰も予想しなかったことが起きた。


 ガスパル・トリンチアーニがカラヴァルヴァに戻ってきたのだ。


 さらに予想だにしなかったのは、それをポルフィリオ・ケレルマンが許したことだ。


 ミラベッラもナルバエスもこう思わずにはいられなかった。


 ――ドン・ガエタノだったら。

ポルフィリオ・ケレルマン派(ポルフィリスタ)

ポルフィリオ・ケレルマン

†ミゲル・ディ・ニコロ 9/9 殺害

パスクアル・ミラベッラ

ディエゴ・ナルバエス

†ルドルフ・エスポジト 9/8 殺害

ガスパル・トリンチアーニ

†アニエロ・スカッコ 9/12 殺害

ピノ・スカッコ



フランシスコ・ディ・シラクーザ派(フランキスタ)

フランシスコ・ディ・シラクーザ

バジーリオ・コルベック

バティスタ・ランフランコ

†サルヴァトーレ・カステロ 9/7 殺害

†アーヴィング・サロス 9/13 殺害

アウレリアノ・カラ=ラルガ

ロベルト・ポラッチャ



〈鍵〉の盗賊ギルド

〈砂男〉カルロス・ザルコーネ

†〈キツネ〉ナサーリオ・ザッロ 9/3 殺害

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― 新着の感想 ―
[良い点] ハードな抗争になってしまいましたね ガエタノは狂暴でしたが全方位に喧嘩売るようなことはしてかったですね 逮捕せざるを得ない程のことしたら放置は出来ないけどしたらこうなると
[気になる点] >愛する家族とともに馬なし馬車、つまり輝素エーテルで動く赤い自動車に乗って、 596部の カラヴァルヴァ 最悪の二人編 第二十七話 ラケッティア、王のいない王国。 にて、 >この馬…
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