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ラケッティア! ~異世界ゴッドファーザー繁盛記~  作者: 実茂 譲
星々の世界 ラケッティア宇宙へゆく編
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第五十七話 ラケッティア、次の星へ。

 絶対助ける、手に残ったフレイのぬくもりにそう告げた。


 テスラ・コイルのお化けみたいなやつが破裂してメガリスは活動を停止。


 洗脳が解け、蟹の民は勝利宣言をし、お嬢も喜んでお腹が空いたのか、ダイオウイカは一挙に十一号になった。


 魚人たちの国は復興し、ギル・ローとカルリエドは元の体に戻った。


 かつてのギル・ローの体は水の星の守護神がいただいたが、そのころには全長が十八メートルになっていて、生体ミサイルポッドとか、竜巻を発生させるトゲだとかがついて、ますますヤバくなっていた。


 ギル・ローは進化を極めた魚体に未練たらたらだったが、水の星の守護神が刻印を与えたので、それで我慢することになった。

 その刻印はギル・ローの顔にあらわれたのだが、左頬に水車みたいな太陽の模様、右目の下に四粒の涙といったものだった。


 少年院に入るたびに悪ガキが同じような涙のタトゥーを入れるときいたことがあるが、まあ、いまの体を誉めて誉めて誉めぬかないと、また例の樹人のところにいって、本当に取り返しのつかないところまで行ってしまうので、黙っておくことにした。


 何もかも元通り、きつきつのウェットスーツからいつもの中折れ帽とジャケットに戻り、シップの本体が次の星に出発するそのとき、お嬢が最後のお別れにやってきた。

 切なげな魚竜というのは初めて見たが、イスラントが決して溶けることのない氷でつくったブレスレットをつくった。イスラントは百五十七個の丸い永久氷結の玉をお腹を上にして浮かんだお嬢の胸ビレの基部にぐるっとまわして、つけてやった。


「いいとこ、あんじゃん」


「うるさい」


 こうしておれたちは〈水の星〉を旅立ち、次の目的地である〈砂の星〉を目指すことになった。


 バールを開く準備でもするかと思ったのだが、シップとカルリエドがカピアさまに関する謎について話していた。


 あのお嬢の最強突撃の際、カピアさまはこっちに魅了の魔法を放ったのだが、その後、起きたことが見たやつによって、いろいろ異なっているのだ。


 ジャックはカピアさまが頭のてっぺんから、まるでどこか別の世界に飛ばされるように分解されて消滅したといい、イスラントはむしろ、カピアの体の中心に奇妙な渦巻きが生まれ、まるで紙を折りたたむようにそのなかに吸い込まれていったと言っていた。


 ギル・ローは体を乗っ取られていたから、ろくに見ていないし、女子高生幽霊は少なくともカピアさまは霊界に消えたわけではない、いや、もっとマズいところに行ってしまったと言っていた。


「でも、カルリエド、わかるんよ。カピアさま、ブラッダのなかに飛んだんよ」


「ボクもそう思います。あの洗脳が始まろうとしたとき、来栖さんを中心とする強力なフィールドが生まれたのです。それが磁気に由来するのか、魔導理論に由来するのかは分かりません。ただ、とにかく強力なフィールドがあって、敵司令官は自身が放った魔法のせいで、フィールドの放つ力に直接つながってしまい、そこに飲み込まれたのです。来栖さん。なにか心当たりはありますか?」


「まあ、たぶんアメリカのどこかのリサイクル・センターでアルミ缶か、よくて自動車部品に生まれ変わってるはずだ。実はあのときのおれは夢のようなものを見てて、そこでフレイに会ってるんだ。どうもただの夢ではないらしい。ただ、確かなことはフレイはおれたちの助けを待っている」


「それ、ハートのブラッダ、想いなんよ。サタンな話。想い、サタンなら飛んでいくんよ。ヒューマンのブラッダ、想いキャッチしたんよ。ヘルプれるのブラッダだけだや。ブラッダ、ハートのブラッダんサタンになるんよ。これ、まじサタンな話」


「ともあれ、水の星のカッターナイフは回収できた。後は〈砂の星〉だ。そこの四天王はどんなやつなんだろうなあ」


「捕虜から得た情報によれば、主教、と呼ばれる人物が〈砂の星〉の帝国軍を率いているそうです。主教の存在は謎に包まれていて、誰もその素顔を見たことはないそうです。噂では〈錆の星〉が新生フレイア帝国と名を変え、あの〈剣〉を集めることを進言したのは、その主教だと言われています」


「すると、諸悪の根源かもしれないわけか。帝国も四天王のうち、三人も倒されたら、さすがに焦るだろう。今度の星では気合入れていかないといかんかもな。〈砂の星〉にはどんなやつらが住んでるんだ?」


「トカゲ人が住んでいます。好戦的な種族ですから、そう簡単には征服されないと思いますが、そもそも帝国の目的は星の征服ではなく、その星のエネルギーを吸い取る〈剣〉の回収です。〈水の星〉のような全面戦争に入る前に、帝国が目的を達成してしまうかもしれませんから、急いだほうがいいかもしれません」


「こっちはカッターナイフを三枚持ってるけど、一枚でも何か悪さはできるのかな?」


「まったくの未知数です。おそらく古代フレイアでも、この〈剣〉のことを知っていたものはごくわずかでしょう。ボクのアクセス・ライセンスは野戦指揮官レベルなので、ぼんやりと知らされている程度で詳細までは分かりません」


「砂の星の守護神はどんなやつ? まだ生きてるかな?」


「分かりません。でも、まあ、なんというか紳士的な人です」


「紳士? 神さまが?」


「守護神のなかでは一番世俗に近いかもしれません」

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