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番外編ー4.対岸の貴族

 まずは解毒だ。


『アンチドーテ』


 白い光が貴族の身体を包み込み消えていった。

 体力も消耗しているからついでにだ。


『ヒール』


 また光が消えた時には、かなり顔色がよくなっていた。


「少し休んで下さい。お話しできる位には回復すると思いますよ」


 貴族は無言で頭をコクリコクリと動かした。

 

「殿下、部屋にお連れします」

「アスラ殿、お願い。レイリに診て貰って下さい。解毒したと言って。薬湯もお願いと」

「はい、殿下。分かりました」


 辺境伯領の領主隊員が軽々と貴族を抱き上げ部屋を出ていった。


「ユキ、連れてくるのはマズイだろう」

「クーファルすまん。しかし、リリを連れて行く訳にもいかん」

「まあ、そうだね」

「あの貴族の婦人から文を預かった」


 何処からか手紙が出てきた。ほんと、ユキさんの能力って分からんわー。

 アラウィンの目の前に出てきたよ。意味分からんぜ。


「では、失礼して……」


 アラウィンが文を読む。そのままクーファルに手渡す。


「クーファル殿下……」


 クーファルも文を読む。


「リリ……これが本当ならこっちにも影響があるかも知れない」


 クーファルが俺に文を渡してきた。俺、読んでいいの?


「兄さま……これって……」

「ああ、放ってはおけなくなったね。とにかく父上に報告だ。それから、あの貴族が話せる様なら話を聞こう」



 ああ、面倒な事になった。

 ユキが連れてきた対岸を治めている貴族は、オダール・タクラートと言うのだそうだ。

 ある日突然、隣の領地の子息が兵を連れて乗り込んできたらしい。そして、あっという間に息子夫婦を人質にとられ自身は毒を盛られた。


 今、邸では夫人が1人頑張っている。しかし、オダール・タクラートがいなくなった事は直ぐにバレるだろう。

 そして、例の呪詛を込めた弾丸。それを作らせたのもその馬鹿子息だった。

 隣領地の馬鹿子息、ピエーク・グラーク。一体何を考えてそんな事をしたのか。理解に苦しむさ。

 夫人の文によると馬鹿子息の親はマトモらしい。ただ、既に長男夫婦に家督を譲って自身は隠居しているのだと言う。

 と、言う事はもしかしたら知らないのか?


「リリ、父上が……」


 ああ、きっとまた面倒な事を言ってきたんだろうな。


「それがね、好きにして良いそうだ。父上は、興味がないんだろうね。こっちに悪影響が出ないようにだけすれば、後は好きにしていいそうだよ」


 なんだよ、それは。じゃあ好きにさせてもらうとしよう。


「ただね、その馬鹿子息達の事はあっちの国の者に任せる様にと言う事だ」

「兄さま、そんなのどうこうするつもりはありませんよね?」

「ああ、勝手に罰するなりなんなりすればいいさ」

「ですよね。要は呪詛ですよね」

「ああ。ユキの様になっている魔物がいれば処置しないと、こっちにも影響が出るだろう。それだけだね」

「はい。ボクもそう思います」

「じゃあ、リリ。行くかい?」

「はい、兄さま。あの貴族も連れて行かないといけませんしね。それと、ご遺体も」


 父が好きにしていいと言っているなら、寧ろやり易いさ。


「殿下! お昼にしましょう! 食堂にお越しください」


 ああ、忘れていたよ。シェフだ。


「シェフ、お腹すいた!」


 あ、例の貴族は食べられるのかな?


「まだ、駄目ですね。殆ど重湯の粥をゆっくり食べてもらいます」

「シェフ、ありがとう」

「いえ、こちらの料理人も優秀ですから大丈夫です。さ、殿下方も食べて下さい。久しぶりにまた辺境伯領の材料を使うとウキウキしますね!」


 そりゃ、よかったよ。話しながら食堂に移動して、出された食事を見て俺はビックリしたね。


「うわ、シェフ! これオムライスじゃん!」

「はい。以前、殿下が仰っていたでしょう? それに、こちらの新鮮で濃厚な卵をフワフワのオムレツの様にしてチキンライスを巻かずにのせてます。その上から、こちらのミルクで作ったホワイトソースをかけました。どうです? 美味しそうでしょう!?」

「シェフ! 凄い!」


 こんなの食べなくても美味いって分かるぜ!


「アハハハ、リリ。テンション上がったね」

「だって兄さま、こんなの絶対に美味しいですよ! いただきます!」

「そうだね。いただこう。あぁ、シェフ。それと、食事が終わったら話があるから」

「はい、畏まりました」

「シェフ! 超美味しい! めちゃ美味しい!」

「殿下、ありがとうございます!」


 シェフが自慢気だよ。いやぁ、マジで絶品だよ。

 いつも思うけど、俺がこんな感じ……て、言った料理をよくここまで再現するよ。流石プロだよ!


「おや、また変わったものですね」


 げッ……俺だけ先に食べてしまったぜ。


「アラ殿、すみません! ボク先に食べちゃってました!」

「いえ、殿下。お気になさらず。しかし、また見たことのない」


 またシェフが説明したぜ。オムライスて言うんだよ〜。


「まあ、美味しそうですわね!」


 一緒に話を聞いていたアリンナ様だ。そうだろ、そうだろ。これは絶対に女性ウケすると思うんだよ。


「失礼します。リリアス殿下」


 お、アルコースだ。フィオンは元気だよ。こっちに来たがっていたよ。


「食事を終えられてからお願いしたいのですが」

「うん、何かな?」

「領主隊と領民に数人穢れらしき者が見つかりました」


 マジかよ! それはいかんね。


「そう、じゃあ早く食べるよ……モグモグモグ」

「いえ、急いで頂かなくても大丈夫です。食べておられるうちに邸まで連れて来ますので」

「そう? 本当に?」

「はい、大丈夫です」

「じゃあ、今のうちにアルコース殿も食べてしまって」

「はい、いただきます」


 うん、アルコース。フィオンと婚姻するってだけで何か親近感を覚えるよ。


「リリアス殿下」


 今度はアスラールだよ。どした?


「レイリに例の貴族を任せているのですが……その……」

「アスラ殿、何かありましたか?」

「それが、アイシャがですね……」

「あぁ……なるほど」

「はい、殿下。そうなのです」


 ん〜、アイシャは解呪できるって言ってたか……



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