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355 閑話ー狙われる皇子 3

読んで頂き有難う御座います!

明日から、とうとう第6章突入です!

最後まで、リリ達を宜しくお願いします!

 そんな折、たまたま光属性を持つ皇子殿下の護衛をしていた。


 母である側妃のエイルと、皇子付きの侍女ニルが城の庭園で皇子を遊ばせている。すぐ側にはエイル付きの侍女もいる。

 それを周辺を警戒しながら眺めるリーム。

 城の中の庭園と言う事もあり、護衛に付いていたのは騎士団副団長のリームと隊員1人だった。

 もちろん周りには、城の警備の兵達が等間隔に立っている。


「大きくなられた。もう歩き出されそうだな。しっかりしておられる」


 庭園で日向ぼっこをしながら、今にも歩き出しそうな皇子を見ながらリームがしみじみと言った。


「副団長のところの下の子と同じ位ですか?」


 一緒に警護している騎士団の隊員が話しかけてきた。


「そうだな。うちの方が半年程早いか」

「可愛らしいですね。殿下は天使の様だ」

「本当にな。まあ、子供は皆天使さ」

「ハハハ、本当ですね」


 穏やかな陽の光を切り裂く様に、近くにいた庭師の格好をした男が剣を振り上げ襲いかかってきた。

 咄嗟にリームが前に出て剣で受ける。


 ――ガキーン!!


「警笛を鳴らせ! 騎士団に知らせろ!」

「はい! 副団長!」


 隊員が警笛を吹く。隊員が吹いた警笛の音と、リームが打ち合う剣の音が庭園に響き渡る。

 突然、どこからか矢が皇子目掛けて放たれた。


「殿下!」


 咄嗟にリームが叫ぶが、自身も賊と剣を打ち合っていて離れられない。もう1人の隊員も、どこからか現れた賊と打ち合っている。


 ――カン! カン!


 皇子付きの侍女が短剣で矢を打ち落としていた。

 短剣をいつの間に持っていたのか? いや、それ以前にどこに短剣を持っていたんだ?


「侍女殿!」

「大丈夫です! 早くその賊を!」


 リームが賊を倒し気絶させる。その後も矢が放たれる。リームと侍女で矢を打ち落とす。

 

 ――カン!

 ――カキン!


 警備の兵達も駆けつけ、援軍の騎士団が到着し、木の上から矢を射っていた賊目掛けて短剣が投げられる。


 ――ドサッ!


 木から落ちた賊は騎士団に捕らえられた。

 これでもう安心だろう。と、皆が思ったその時だ。エイルの後ろから侍女が短剣を振り翳し襲い掛かろうとしていた。

 咄嗟にリームが走る。


 ――ガキーン!


 侍女が持つ短剣を剣で打ち払い侍女を捕らえた。


「あなた! 何て事!」


 直ぐそばで、皇子殿下を抱き締めながらエイルが叫ぶ。

 そんな緊迫した中、リームの腕を誰かがポフポフと叩く。


「え……? 殿下?」


 リームが見ると、エイルに抱かれながら皇子がリームの腕を小さなプクプクとした手で叩いていた。


「あーと! あーとねー! あーと!」


 満面の笑顔だ。正に天使の微笑みだ。背中に白い翼が見えそうだ。

 少しだけ頭をヒョコッと横に曲げて、笑顔でリームを見ている。

 


「ご無事で良かったです。殿下」

「あーと! ニリュー! あーと!」

「はい、リリアス殿下」


 一気に場が和らいだ。母に抱き締められながら、今度は侍女に向かって笑顔で礼を言う小さな皇子。

 手をパタパタさせている。


『ああ、この殿下は特別だ。お小さいのに、こんな場面で泣くどころか笑顔をお見せになるとは。

 護衛に礼を言われるなんて。皇子殿下をお守りしなければ! 必ず!』


 リームはそう決意した。天使の微笑みにやられたのかも知れない。

 

 皇子を狙ってきた賊は、側妃の侍女が招き入れていた事が分かった。

 側妃が実家から連れて来た侍女が出産の為に産休をとっており、入れ替わりで最近入ってきた侍女だったらしい。しかも、本当に入るはずだった侍女が殺害され、成りすまして入ってきていた。

 どこかの貴族が手を回して城に入れたのか。それはきっと皇帝付きの側近が徹底的に調べ上げるだろう。

 あの襲撃の時、短剣で矢を落としていた皇子付きの侍女は、皇帝付き側近の娘だそうだ。

 あの侍女はかなり強い。普通の侍女が飛んでくる矢を短剣で落とす事等できる筈がない。

 そんな侍女を付けると言う事は、それだけ皇子が狙われているのだろう。

 なんて馬鹿な事をするんだ。誰もがそう思った。

 そして後日、帝都から一つの貴族が消えていた。



 そんな賊の襲撃から暫く経った。皇子は無事に1歳を迎えた。


「まさかなぁ。俺は本当にビックリしたわ」

「何だよ」


 いつもの厨房の裏口だ。だが、今日は2人共、白いエプロンをつけていて料理人の格好をしている。


「まさか、リームが皇子専属の料理人になるとはな。よく家に許してもらえたな」

「まあな、話した時に親父も兄貴もポカンと口を開いていたさ。でも、俺は戦う料理人になって皇子殿下をお守りしたいと言ったら案外アッサリと許してくれたよ」

「はぁ!? 戦う料理人!? 何だそれ? アハハハ!」

「戦えるし、料理もできる。お守りするには持ってこいだろ?」

「アハハハ!」


 バシバシとリームを叩く料理人。


「イテーよ」

「奥方は何て言ってたんだよ?」

「あー? いつか言い出すと思っていたと言われた」

「よく、分かってんじゃねーか! できた奥方だ! じゃあリームは、最強のシェフだな!?」

「ああ! 当たり前だろ!」


 厨房の片隅に、戦う料理人の剣がひっそりと置かれていた。



 こうして、リリアス専属のシェフが誕生した。自称、戦う料理人。最強の料理人だ。何せ、元騎士団副団長だ。

 それは、リリアスがまだ1歳になったばかりの頃。

 リリアスがシェフと顔を合わすのは、まだ数年先。戦うシェフ。最強のシェフ。

 リリアス専属シェフの二つ名だ。


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