コミカライズ14巻発売記念「究極の二択」
『成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです』のコミカライズ14巻が3月22日に発売するので、それを記念しての短編です。
ある夜、俺とハルが二人で部屋にいた時のことだ。
「ハル、頼みがある……とても大切な話なんだ」
俺がそう言うと、ハルは耳をピクピクと動かして聞く。
「はい、なんでしょうか? ご主人様」
「お前のスカートの下……のことなんだが」
「こちらでしょうか?」
ハルがそう言って自らのスカートを捲る。
そこには、見慣れたブルマが。
この世界では、どういうわけかブルマが各地の洋服店で普通に販売されていて、動きやすく見られてもそんなに恥ずかしくないことから、見せパンくらいの地位を確立している。
素晴らしい……非常に素晴らしいことなのだが。
「実は俺、スパッツ派なんだ」
俺は衝撃の告白をした。
そう、俺はブルマよりスパッツが好きなんだ。
どのくらい好きかというと、ミルキーのスカートから僅かに見えたスパッツを見て(4巻口絵参照)あいつの変態性を理解していながらも少し興奮したくらいだ。
ブルマとスパッツ。
これは、キノコ、タケノコと同じく好みを二分する論争の火種になるものだ。
そもそも、俺が学生の頃、既にブルマはこの世からレッドリスト――文部科学省によって制定されているかもしれない、絶滅のおそれがある男の夢リストのことを指す――に登録されていて、実際に見たことがなかった。
逆にスパッツは、学校で女子が普通に穿いていた。
そのため、俺の青春はスパッツと共にあった。
だが、俺がスパッツ派なのは、何も慣れ親しんだものというだけではない。
ブルマとスパッツ、それらは全く違う物だと言っても過言ではないのだ。
ブルマが好きな人は目に見える物が好きな人。パンツに見えるようなその形状、そして普段はスカートを穿いていても見えない太ももなどを見ることができる。
逆に、スパッツが好きな人は、目に見えない物が好きな人だ。
どういう意味かは、後ほど説明する。
「スパッツ――? とは一体何なのでしょうか?」
「これだ」
俺はそう言って、黒のスパッツ(ポリエステル製)を見せた。
「なるほど、これがスパッツですか――短パンとは違うのですか?」
「短パンとは少し違うな。一度穿いてみてくれないか? どっちが動きやすいか確かめてほしいんだ。あ、尻尾が出るように穴をあけても構わないから」
俺はそう言って予め用意してあったハサミを渡して、後ろを向く。
いくら妻とは言え、後で脱がせるとはいえ、着替えるところを凝視するのは紳士としてマナーに反するからな。
「ご主人様、少しサイズが小さいのではありませんか?」
「大丈夫、ちゃんと合ってる」
「そうでしょうか? ん……あ、入りました。ご主人様、どうぞ」
振り返るや否や、俺は感動した。
まず、特筆するべきは、今現在、ハルはスカートを捲し上げてはいない。
にも拘らず、彼女のスカートから僅かにスパッツの端が出ているのだ。
もちろん、スパッツの端程度に欲情する俺ではない。だが、その端が見えることにより、スカートの内側にスパッツがあるのだという実感を与えてくれる。
「少し捲ってもらえるか?」
「はい――」
そう言って、ハルはスカートを捲ると――俺はいきなりノックアウト寸前になった。
そう、下着のラインが見えるのだ。
これで、俺がさっき言った意味がわかるだろう。
目に見えない物を楽しむ。
それは、スパッツがタイトであればタイトであるほど、体のライン、そして下着のラインがはっきりとわかるのだ。
ハルはさっき、少し小さいと言ったが、これこそがまさにジャストサイズと言ってもいい。
唯一欠点を上げるとすれば、こういうタイツを見ると、破りたくなるってところなんだけど。
まぁ、俺は野獣ではないし、そういうキャラではない。なにより、スパッツを破る奴は、スパッツに対して敬意を持っていないことになる。
「あの、ご主人様、そんなにスパッツがお好きなのでしたら、皆さんでどうですか?」
「え? 皆さん?」
突然気配を感じ、振り返るとそこには信じられない光景が。
「イチノ様」
「楠さん」
「おにい」
キャロ、真里菜、ミリが全員スカートを捲り、穿いているスパッツを見せてきたのだ。
なんだ、この状況!?
「どうですか、イチノ様。キャロのスパッツは。小学生時代を思い出すのではありませんか?」
「た、確かに、キャロの体格でスパッツは……ていうか、なんでキャロが小学校を知ってるんだ?」
「楠さん、私は恥ずかしくて……えっと、ロングタイプのジョギング用の奴なんですけど……これでも喜んでくれますか?」
「いや、喜ぶとか喜ばないとかじゃなく……喜ぶけど……え? お前、地球に帰っただろ?」
「もう、おにい。そんな細かいことばかり気にして。そっか、おにい、スパッツ好きなんだ。道理でパソコンの隠しフォルダに――」
「おま、なんでそれをっ! ていうか、なんなんだこの状況!」
スパッツの女の子四人に囲まれて、ここは桃源郷――ん?
悪寒が走った。
突然部屋の壁が無くなったかと思うと、遠くから、はち切れそうなスパッツを穿いて走ってくるマーガレットさんの姿が――
「イチきゅーーん! 私のスパッツ姿、あなたに、あ、げ、るぅぅぅっ!」
※※※
「ギャァァァァァァっ!」
俺はベッドから起き上がった。
全身びっしょり汗を掻いていたので、浄化で綺麗にする。
「……マスター、どうかしたんデスか?」
ベッドの横に座っていたシーナ三号が尋ねる。
「いや、なんでもない。変な夢を見たんだ」
「夢デスか。まったく、近所迷惑を考えてほしいデス」
シーナ三号がぷんぷんと怒っていう。
「悪かった……って、お前は一体何をしてるんだ?」
「マスターがスパッツ派かブルマ派か、調べようと思ったので、耳元でスパッツとブルマ、どっちが好きデスか? と音波を送り続けていたデスが、中々寝言を言わなくて困っていたのデス。さぁ、マスター、続きをしますから、早く寝るデス」
変な夢を見たのはこいつのせいか。
と俺はシーナ三号を部屋の外へと蹴飛ばした。
そして、再びベッドの中に入って呟く。
「……今度、ハルとキャロにスパッツ穿いてもらうかな」
最近の漫画でハルのブルマをよくお目にかかるので、それに関する短編を書こうと思ってたらこうなりました。
それと、現在、恋愛小説を執筆中です。
『公爵家を追放された貴族令嬢は、タイムリープしたので冒険者として頑張る予定です~殿下、私に興味がないのならすぐに婚約破棄してください。それと私は聖女ではありませんから!~』
シリアス:ギャグ:恋愛=3:5:2
くらいの割合で書いているつもりなので、よかったら読んでみてください




