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成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
番外編

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冒険者始めました その11

 とりあえず、目的だった真実の瞳を手に入れることができた。

 笑いの神様、物凄い時短テクニックをありがとう。

 さて、このまま引き返すと、間違いなくナターシャを追っていた騎士たちに遭遇することになる。

 倒すことは容易だけれども、彼らは職務に忠実なだけの一般人っぽいし、あえて戦闘をする必要はない。

 というか、帰るの面倒だ。


 ということで、ミリとキャロを召喚することにした。


「眷属召喚、ミリュウ、キャロル」


 俺がそう唱えると、ミリとキャロが現れる。


「早かったじゃない、おにい。もう真実の瞳を手に入れたの?」

「ああ、無事にな。それで、情報は手に入ったのか?」

「キャロから説明致します」


 キャロが一歩前に出た。

 この様子だと情報が手に入ったらしい。

 ミリの転移魔法により移動時間が大幅短縮できるといっても、まだ数時間しか経っていないのに。

 流石キャロの情報収集力、略してさすきゃろだ。


「まず、ナターリア様の偽者は、明日、聖女として演説をする予定だそうです。また、公爵家は魔物を大量に購入しています」

「魔物の購入? テイムするのか?」

「いえ、偽者に魔物のトドメをささせて経験値にするためでしょう。経験値が高い魔物が多かったです。聖女といってもレベルを上げないと強いスキルは使えませんから」


 金で経験値を買うのか。

 まぁ、ラストアタックで経験値が入るこの世界の仕組み、そういう裏技はあるだろう。


「また、公爵家に武器商人の出入りが激しくなっていますので、聖女の名を利用し、反乱を企てているようです」


 なるほど、ミリの予想通りってわけか。 

 ナターシャが、「お養父(とう)様」と哀しそうに呟いた。

 ナターシャは、聖女として経験値を積むため、その身分を隠して、街で多くの人々を治療していたらしい。

 そんなナターシャが、自分が聖女であることを明かし、国王討伐と掲げれば、聖女の導きとなって反乱の狼煙になるという筋書きだ。

 おそらく、反乱する理由も複数用意しているのだろう。


「しかし、その裏で隣国のミュルト魔導王国も動いているようで、おそらく公爵はミュルト魔導王国の人間に唆されているのでしょう。国内が揉めている間に侵略するつもりかと――」


 なんか初耳の国が出てきた。


「「「ミュルト魔導王国が――っ!?」」」


 あ、ルートたちは知ってるんだな。

 まぁ、隣国だし当然か。

 というか、キャロの奴、隣国の情報まで調べてるとか。


「それって国家機密レベルの情報じゃないのか?」

「はい。まぁ、諜報員らしき人間はすぐに見つかったので、ミリさんの空間魔法と暗殺者の操り人形(アサシンマリオネット)を少し利用させていただきました」


 キャロがえへっと笑って言う。

 ミリもニコっと笑った。

 キャロとミリ……この二人が組んだら、すべての情報は丸裸ってわけか。


   ※※※


 翌日、キャロが言った通り、街の広場に大勢の人が集められた。


「このように、国王は皆さんに隠れてこの国をミュルト魔導王国に売り渡すつもりなのです!」


 そういって偽ナターシャが証拠の書類を掲げた。

 とてもわかりやすい話で、何の情報もなく聞いていたら、俺だって国王が悪人だと思っただろう。

 それにしても、本当にナターシャそっくりに化けてるよな。

 それと頑張ったのだろう。

 職業も、【聖女:Lv19】とそれなりに上がっている。

 さっき、偽ナターシャが自分が聖女であると名乗ったときに使った、聖なる光というスキルも綺麗だった。幽霊などを倒す攻撃魔法なので、いまは使っても意味のない、見た目だけのスキルだったけれど。

 さらに、足が動かないと言っていた子供に治療魔法をかけるときも凄かった……子供の職業が【役者:Lv8】だったけれど。

 ただ、感情トレースを使って偽ナターシャの心を探ってみたのだが、周りの人間を小馬鹿にし、騙されていることを嘲笑っているような感情で満ちていた。

 気分が悪くなったので直ぐにスキルを解除したけれど、心は聖女とは正反対の人物のようだ。


「なんてことだ!」

「国王許すまじ!」


 真っ先に偽ナターシャに賛同する男たち――彼らの職業は【扇動者】【諜報員】なので、まずサクラに間違いない。

 ただ、彼らがそう叫んだのを皮切りに、反国王を掲げる叫びが強くなってくる。

 それを見計らって、偽ナターシャの横に立っていた初老の男――おそらく公爵だろう――が大きな声を上げて言った。


「民よ! 聖女がこの時、この場所に現れたのは女神の導きである! 今こそ立ち上が――」

「待ってください! その聖女は偽者です!」


 そう叫んだのは、本物のナターシャだった。

 目元まで隠していたローブを取り、そう宣言した。

 突然のナターシャの出現に、民衆は騒ぎ出す。


「聖女様が二人っ!?」

「偽者ってどういうことだっ!?」


 まぁ、それが普通の反応だよな。


「ええい、黙れ! 誰か、その偽者をひっ捕えろ!」


 公爵が叫ぶと、衛兵たちがナターシャを捕まえようと迫ってくる。

 が、しかし、衛兵たちはまるで何かにぶつかったかのように倒れ、それ以上前には進めなかった。

 生活魔法エアクッションが不可視の壁を作り出していたのだ。


「お養父様、いえ、公爵! もうやめてください!」


 ナターシャが叫ぶ。


「ええい、何をしている! 早くその偽者を捕まえるんだ! 殺しても構わない!」


 そう言われて兵たちは矢や火の魔法を放つも、エアクッションに矢は弾かれるし火の魔法は吹き消された。


「民たちよ、どうか力を貸してください! そこにいるのは魔族の遣い! 私の姿を偽り、皆を混乱に陥れようとしているのです!」


 偽ナターシャが民衆にナターシャを捕まえさせようと扇動し始めた。


「それはあなたたちでしょう! これは真実の姿を暴き出す真実の瞳という魔道具です!」


 ナターシャがそう叫び、真実の瞳を天に掲げた。

 すると、偽ナターシャの姿が、一瞬にして別人の、灰色の髪の少女に変わった。

 偽ナターシャは自分の変身が解けたことに気付き、顔を真っ青にしている。


「聖女様がっ!?」

「ナターリア様じゃないっ!?」

「違う! いまのはその偽者が謎の魔法を使ったのだ! こっちが本物のナターリアだ!」

「公爵、もう諦めろ」


 そう言ったのは、最前列の左側ですべてを見ていたおじさんだった。


「ええい、指図をするな! まだだ、まだ終わらん」

「いや、終わりだよ。それとも私の顔を見忘れたのか?」


 青年がそう言ったとき、公爵は気付いたようだ。

 その青年こそ、この国の宰相の姿であると。


 そして、彼を取り巻くように守っていた騎士たちが変装を解き、剣を構える。

 まるで、時代劇の悪代官のように、公爵は、その場に跪く。


「宰相殿、違うのです。私は偽聖女に騙されていたのです」

「言い訳は見苦しいぞ。ユーイ公爵! 反逆罪で捕縛する! 軽い罪で済むと思わないことだな」


 こうして、公爵と偽聖女は無事に捕縛された。

 時代劇だったら、ここから「宰相の姿を偽る偽者だ!」とか騒ぐのだろうが、宰相だけじゃなくて騎士数十名、そしてそれを見ていた民衆もその場にいる。集めていた傭兵や武器もこの場に揃っていない以上、歯向かうだけ無駄なのだと悟ったのだろう。

 跪いたまま動かなくなっていた。


 そして、俺はエアクッションを解除し、気付いた。

 偽ナターシャの職業が、聖女から平民に変わっていることに。

 そして、さっきまでいた扇動者や諜報員がいなくなっていることに。

 全部ミリの予想通りだな。


 俺は鷹の目を使い、空から街の外に向かって移動する一団を見つけ、その近くのレストランの二階テラス席に移動した。

 俺が逃げ出す一団に追いついたときには、既にラインとルートが諜報員や扇動者の行く手を塞いでいた。


「ミリさんの予想通りだな」

「うん、ここまでだと気味が悪いよ」


 余裕ぶる二人に対し、男たちは、「どけ、小僧!」と叫んで短剣で襲い掛かったが、俺によって鍛えられた二人の敵ではなかったようで、一瞬にして叩き伏せられた。

 まぁ、諜報員って準戦闘職だし、扇動者に至っては非戦闘職だからな。

 ステータスの差は大きい。

 そして、諜報員が持っていた指輪を見つけ、そこに着けられていた職奪の宝石を、ルートが剣で叩き割った。

 ナターシャに職業が戻ったことだろう。


 さて、後は、ミュルト魔導王国の方だが……ミリ、やり過ぎてないだろうな?

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