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終末は突然に  作者: SMILE
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突然の事故

「隊長どうします?次の店を探します?」

「そうだな・・・」

 時計を見た。

「一旦休憩するか。工藤、中継の避難所に向かってくれ。」

「わかりました。」

 車は走り出した。

「中継って?」

「流石に捜索が遠くなってきたからね、5キロ毎に安全な場所を確保する事にしたんだ。最悪メンバーとはぐれた場合はそこを集合地点にする意味もあるんだ。」

「なるほど。」


 しばらく走らせた後、一軒の家の前で車が止まった。中尾が車から出て行き家の門を開けた。入るように合図をしている。それを見た工藤はバックで入れた。

「到着だ。車から降りよう。」

 門を閉めた中尾が戻ってきた。

「家に誰か入った形跡は無さそうです。」

 そういって何かを指差した。

「そうみたいだな。」

「え?何が?」

「簡単なトラップを仕掛けておいたんだよ。誰かが入ったらヒモが切れるようになっている。」

「へえ。」

「ゾンビが集まる前に早く中に。」

 5人は中に入っていった。


 インスタントコーヒーを飲みながら地図をひらく。

「今がここでさっきのスーパーがここだから・・・」

「近くには食べ物あるような場所は無さそうですね。」

「昼も過ぎてるし戻るか。暗くなるとゾンビが分かりにくくなる。電気なんて付けて店を散策なんてしたら、標的にされるしな。」

「しかし、あの市長はずっとあそこに居る気なのかな?もう近隣の食料も限界だし。」

「あの市長は気にはしてない。俺らが調達しているからな。気にくわなければ出ていけばよいと考えているからな。来る人間=居るからには何かの作業をしなきゃいけない。去るものは追わずだからな。結果都合が良い人間が集まっている訳だ。」

「そんな。文句とか出ないのですか?」

「出ないさ、自分のやる事さえしていれば、食と住はある訳だし。こんな時に自分から外に出たいなんて普通なら思わない。」

「でも、自分達は時期が来たら出ますよ。」

「多分大丈夫じゃないかな?さっきも言ったが去るものは追わずだからな。食いぶちが減ると思うよきっと。」


ーーー


「葵さん、上手ですよ。」

 練習用の薙刀で手合いをしていた祥子が言った。

「まだまた、祥子ちゃんに勝てる気はしないけど・・・」

「こうみえてインターハイ出てますからね。そう簡単には負けませんよ。」

「そういえば、出ていった2人大丈夫かな?」

「自衛隊の人も一緒だし大丈夫じゃないかな?葵さん、もう一回やります?」

「そうね、お願いしようかしら?」


ーーー


 広一は目が覚めた。何が起きたかわからなかった。


中継基地から出てしばらく走行していたら、一緒にいた中尾が急に倒れたと思ったらゾンビになり運転していた工藤に襲いかかってきたのだ。

驚いた工藤が急にハンドルを切り壁に激突、車は停止し衝撃で頭を打ち気絶してしまったのだった。


 ただ問題なのは起きたら1人だった事だ。ただ一緒に車内にいるのは、元は人間だった中尾だけだった。彼は頭を撃ち抜かれていてもう動かなくなっていた。

 (スーパーのあの時にやられたのか?)今となってはわからない。ただ問題なのは1人という事だ。

 他のメンバーは?何故1人なんだ?死んだと思われたのか?

「誰かいないのか?」

 もちろん返事はない。車内を見回した。運転席の所に地図と無線機が置いてあった。広一は地図に無線の周波数である番号が書いてあるのを見つけその数字に合わせ呼び掛けた。

「誰か応答してくれ。」

 返事がない。

「誰かいないか?」

「・・・ザ・・・広一さ・・・か?」

「お!もしもし聞こえますか?どーぞ!」

「生きてた・・・か?すまない。全く目が覚めなかったから死んだのかと・・・こっちも中尾がゾンビになって結局工藤も死んだ。2人で荷物を持つのが精一杯だったんだ。年のため外から入れないようにはしておいたが。地図を開けるか?」

「はい。開いてます。」

「丸が付いている場所がそちらの位置だ、皆がいる避難所まで大体三キロ位だ。工藤の銃をそちらに置いといた。それを使って何とか戻って来てくれ。」

「マジですか!?」

「こっちはもうすぐ避難所に着く、だが2人失って車も無くなって捜索が出来る状態じゃ無くなってしまった。申し訳ないが頑張ってもらうしかない。すまない。」

「どうにもならないって事ですか。わかりました。・・・何とかしてみます。」

「無線機は持っておいてくれ・・・無事を祈る。」

 無線はそれで切れた。

「死んだかと?って・・・生きてるわ!頭を撃ち抜かれなかっただけ良しと考えるべきか・・・しかしこの状況・・・最悪。」

  念の為エンジンをかけようとしたが・・・ダメだった。

「ですよね・・・。行くしかないか。」

 車内に何か使える物がないか確認する。2人が持っていったのか食料は無くなっていた。


無線機

中尾の銃

予備マガジン2個

懐刀

警察支給の銃

地図

懐中電灯


これだけだった。

「約3キロ、奴等に囲まれなきゃ足りそうだな。銃なんか使った事ないから逆に不安だ。」

 周りの安全を確認し車のドアを開けた。

「中尾さん、さよなら。」

 車内に残った中尾の遺体に最後の挨拶し車から飛び出し走っていった。

「まだ絶対死なないからな!」

 夕方になりそうな空だった。

「急がないと。暗くなったら終わりだ。」


ーーー


「隊長、広一さんは生きていたんですか!?」

「その様だ、彼には悪い事をした。」

「荷物よりも広一さんを連れてくれば良かった!」

 孝夫は苛立ちを隠せない。

「そう言うな。これで避難所に食料を持っていかなかったら、中尾と工藤の死が無駄になってしまう。」

「だがしかし・・・」

「彼の元に銃と弾を置いておいたし、自力で何とかしてもらうしかない。捜索に使える車もないし、人員も割けない。ホントにすまない。」

「く・・・」

 孝夫は隊長をみて何も言えなかった。彼も部下を2人なくしたのだ。

「自分達め早く戻ろう、死んだら誰もうかばれない。」

「わかりました。」


ーーー


 広一は見通しがよい道を地図を見ながら進む。

「畜生、こっちに来るな。」

 目の前に来たゾンビを刀で刺して突き飛ばす。仕留めている時間はない。何故なら背後には大量のゾンビがこっちに向かって来ているからだ。

「はぁ、はぁ、くそ!銃が重い!後ろにあんなに!嫌だ死にたくない!」

 広一は走る。


ーーー


「葵さん、すまない!」

 無事避難所に着いた孝夫が第一声葵に言った言葉だ。

「え?孝夫さん何言ってるの?広一は?」

 孝夫は今までの経緯を話した。

「そんな!嫌!」

 葵は膝から崩れ落ちた。

「まだ死んだと決まった訳じゃないし・・・。」

 葵は泣き出してトレーラーの中に入っていってしまった。

「父さん・・・広一さんは大丈夫だよね?」

「一時間前に無線で連絡はあった。無事だと信じたい。」

 皆無言になってしまった。

「待っているしか方法はないか。生きていてくれよ。」

 もうすぐ日が暮れそうだった。


ーーー


「はぁ、はぁ・・・銃を使っては見たが素人じゃ走りながらじゃ全然当たらない・・・当たらなきゃ奴等じゃ威嚇にもなりゃしない。」

 広一は銃の柄を使いゾンビを殴りよろけた所を通り抜けるという方法をとっていた。銃で撃っても反動が強くて大変だったからだ。

「まずいな日が暮れそうだ。後ろの奴等も人数が増えている気がするし・・・」

 地図をひらく。(後1キロは切っているか。このまま行けるか?)

 その時だった。ゾンビの集団が飛び出してきた。

「うぉ!」

 とっさに銃を撃つ。当たるが構わず向かって来る。ゾンビの1体に肩を掴まれた。

「やろ!」

 銃から刀に持ち換え頭を耳から刺した。嫌な感触と共にゾンビが動かなくなりは肩を離した。

 よろけながらも何とか逃げる。銃声を聞き付けてどんどん集まる。

「マジで泣きそうだ。こりゃ死ねる。」

 正面からもゾンビに囲まれた。広一は無線を使った。

「奴等に囲まれた。ダメそうだ。そっちは避難所に着いたか?」

「広一さんか?」

 孝夫の声だ。

「孝夫さん、大丈夫だった?」

「こっちは無事着いた。無線機は隊長から連絡が来たらって事で預かったんだ。ちょっと待ってくれ。」

「なんだ?」

「広一!大丈夫なの?」

 葵だった。

「葵か?すまない、奴等に囲まれた。逃げるつもりだがダメかも知れない。」

「そんな事言わないで!安全な場所に連れてってくれるって言ったじゃない!」

「ホントすまない・・・逃げる場所もなく手詰まりだ・・・頑張って生きてくれ!」

「いや・・・そんな・・・そんな・・・言い方しない・・・」

「声が?もしもし?聞こえているか?この無線機を持って動く、もし帰れなかったら毎日夜の7時に電源を入れといてくれ。生きていたら連絡する。」

 向こうの電源が切れたのか返事はなかった。

「さて、この状況どう切り抜けようか・・・」

 広一は銃を撃ちながら走り出した・・・

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