盗賊
「何とか食料手に入れたな。」
「そうですね。」
以前なら苦もなく手に入れられた食料も今となっては命がけだ。
「たまには野菜食べたいですよね。自分達もここに来る前から野菜も新鮮な肉も食べてないですよ。」
「どうにかならないもんかね。」
「それで、やっぱり自分で育てないとって思ったんですよ。それで山の方に行ったりしたんですが、奴等がいるし、野菜作る前にバリケード作らなきゃとか色々思って・・・」
「まわりまわって今ここに着いたって事か?」
「はい、恥ずかしながら。」
「でも自給しようって考えはありだね。自分達もあそこにずっと住み続けるのは難しいだろうとは考えてる。いつまでもスーパーとかで探すのも限界があるしね、事実今日みたいに半径10キロは何も無くなってしまったし。」
「難しいですよね。」
その時だった。
「うわっ!」
運転していた工藤から叫んだかと思うと車は突然急ブレーキがかかった。
「どうした!?」
「急な妨害が!」
「奴等か?」
「いえ?死人ではなく生きている人間の方です。」
「くそ!何人位だ?」
「正面に5人います。他に隠れているかは現状はわかりませんが。相手も銃を持っているようで。」
「面倒だな。皆、武器は隠しておけ。被害は最小限で切り抜ける。」
(盗賊まがいな事、今まで出会った事なかった。それだけ生存者も切迫しているって事か?たまたま運が良かっただけか?)
武器をちらつかせながら車に近付いてきた。
「おい、お前ら。命が欲しかったら車の荷物を全部出しな。」
「断ったら?」
「お前らこれが見えないのか?殺すぞ?」
ニヤニヤしながら言った。(隊長はどうするつもりなのかな?)
「待て待て!ちなみにそっちは何人なんだ?」
「5人だ。今そんな事聞いてどうする?」
「そうか・・・」
隊長が他の2人に目配せしたかと思ったら、車のドアを勢いよく開け盗賊の1人にドアを開けぶつけた。1人がドアにぶつけられた反動でよろける。よろけてバランス崩した1人から銃を奪う。
「ちょ、お前!」
まさか銃を向けているのに反撃されるとは思ってなかったみたいで反応が遅れた。それを工藤と中尾も見逃さなかった。それぞれ2人を関節技で抑え、銃を奪ってその銃を残りの2人に向けた。
「手を上げろ!」
「マジか!?わかった。」
「自衛隊に手を上げたのが間違いだったな。」
「自衛隊かよ。自衛隊が運送屋のトラックに乗ってるんじゃねえよ・・・」
持っていたタイラップで盗賊達の腕を縛った。
「おい、俺らをどうするつもりだ?」
「どうするも何も襲われたのはこっちだしな。」
「くそ・・・。」
「とりあえず銃は貰っていくよ。じゃあ失礼。」
「お、おい!縛られたまま置いてく気か?」
「おう、忘れてた。」
縛ったタイラップを切った。
「さてと、君達気を付けてな。」
3人は車に戻って動き出した。
「待てって!こんな所で武器無しなんて自殺行為だろが!」
「わかったよ、ほら」
隊長は先程奪った銃を1丁窓から投げた。
「頑張れよ!」
それだけ言って車は走り去った。
「大丈夫だったんですか?」
車にいたままの2人は声をかけた。
「怪我はない、大丈夫だよ。ほら君達にプレゼントだ。」
そう言うとリボルバータイプの銃を2丁渡された。
「彼らが持っていた銃だ。多分警察官の物だろうな。弾は入っている。良かったら使いな。弾の予備はないから慎重にな。」
「はあ、すみませんです。」
「彼らは大丈夫ですかね?」
「ああ、まあ銃も1丁渡したし大丈夫だろ。襲ってきたのはあっちだし自業自得だ。」
そういうと隊長は笑った。
(こわっ!)銃は初めて持ったが、ずっしり重かった。それと広一は(素人が自衛隊に絡んじゃダメだな。)と思った。




