情報収集
「では自分はまた警備に戻るからゆっくりしててくれ。」
「あ、あの!」
「なんだ?」
「何で銃なんか持ってるのですか?しかも1人だけじゃなく何人も。一体どこで?」
「あー、それか、自分達は自衛隊員なんだ。政府からの要請で避難場所に向かってね。始めにいた所は奴等がなだれ込んできて棄てるしかなくなってしまってね。ここに居る大半の民間人はその時一緒に逃げてきた人達なんだ。あれから上とも連絡が取れなくて一旦戻ろうかと思ったんだが・・・ここにいる人達を置いていくのも出来なくて。それで我々が周りを警備しているって訳なんだよ。」
「他の隊とも連絡は取れないのですか?」
「停電になってからしばらくは近くに同じように向かった部隊とは連絡が着いてたんだが今は音信が途絶えたままだ。確認しに行きたいが彼らも心配だから置いていく事も出来ない。しばらくはここの警備に当たるしかないのが現状だ。しかも最近盗賊みたいなのにも襲われたからね。もっと強化したい位だよ。おっと、それでは失礼するよ。」
そう言うと彼は入って来た方向に向かって行った。
「さて、どうする?」
「とりあえず情報収集兼ねて自由行動にでもしようか?今が3時だから5時にまたトレーラーに集合で。」
「ああ、わかったよ。じゃあまた後程。」
広一と葵、鈴木家の二組に別れた。
「広一どうする?」
「先ずはここら辺の情報収集だね。静岡は来たばかりだし、どんな状況か把握したいし。」
「わかった、じゃあ行きましょう。」
このコミュニティは通りを挟んで合計10軒の住居があった。通りの両側はバスで通れない状態になっていて、外側は家の壁がある為奴等は入ってこれない作りになっている。
「でもホント久々に道を不安なく歩いている気がするわ。」
「人も沢山いるしね。奴等が集まる前に退治すれば囲まれる心配も少ないから立て籠るよりはストレスは大分改善されるし、よく考えたと思うよ。」
「まずは警備してる自衛隊の人に聞いてみれば良いんじゃないかな?」
「行ってみるか。」
自衛隊員の話し。
2人は先程バスを運転した人と話す事にした。
「お疲れ様です。」
「お、見ない顔だな。さっき入って来た人達か?」
「ええ、そうです。静岡の状態を知りたくて。お話し伺っても良いですか?」
「ああ、よいよ。とりあえず自分達は政府からの要請で三島の避難場所に向かう事になったんだ。奴等が大量に発生してたから一応発砲許可は下りていた。基地からヘリで出発して基地を発ってこっちに向かっている時に停電になってしまった。現地で学校の校庭にに着陸する予定でいたんだ。だが現場は予想以上に最悪だった。学校の門が破壊されていて校内に奴等がなだれ込んでいたんだ。校舎のバリケードも破壊されていて校内も奴等が大量にいた。生存者は体育館に逃げ込んでいたようで体育館の周りに奴等が群がってたんだ。発砲許可は下りていたんで即座に発砲したよ。ある程度奴等が倒れて動かなくなったんで校庭に着陸したんだ。そして門を閉めた。敷地内に残った奴等も倒し生存者の元に向かったんだ。」
(こっちも奴等はいたのか。)
「その時後ろの方で叫び声が聞こえて振り返ったんだ。そしたら倒したと思ってた奴等がまた起き上がってこっちに迫って来やがった。その時は奴等が不死身とは聞いていなかったからね。ただの人を襲う異常者程度しか知らされてなかった。ただそれが仇になった。起き上がって来たのが1人2人じゃなかったのが問題だった。弾薬を大量にヘリに置いたままにしてしまったから取りに行かなければならなかったから。弾の数が不安になりながら撃ったのはあれが始めてだよ。ヘリに取りに戻るのに犠牲者も何人か出た。幸い門は閉め直したから増える事は無かったから、再度敷地内の奴等を殲滅させたんだ。その後に体育館にいた生存者と合流したんだ。その後しばらくいたんだが、奴等に咬まれた隊員達は救護室で治療をうけていたんだが夜中に突然急死したんだ。それが急に動き出して人を襲い始めた。夜中だったのがダメだったのか対応が遅れて大分やられてしまったよ。タイミング悪く直した門もまた破壊されて奴等が入って来た。それで、そのままその避難所を棄てて移動を始めたんだ。」
「ヘリは?」
「ヘリはあの人数は乗り切れなかったし。奴等が邪魔で近寄る事も出来なくなってしまったので奴等が居なかった裏の駐車場から動かせる車を探して出発しようとしたんだ。その時にあったのが部活の遠征用のかな?このバスだったんだよ。」
「なるほど、だからうまい具合にバスがあった訳ですね。」
「無線にも何処の部隊からも連絡がつかなくて宛もなく走ってたらあの市長の家で何人か立て籠ってた所を襲われてるのを見て、この近所をバスでバリケード代わりにして奴等を塞き止め助けたんだよ。んで今の状態って訳さ。」
「じゃあここには何日位いるのですか?」
「どうだろ?一週間位かな?ちょうど安全確保も出来たしね。君らを連れてきた人がいるだろ?彼が隊長でね、何も言ってはいないからしばらくはいるんだと思うよ。どこかの部隊と連絡がつけばいいんだけどね。」
「方の部隊も心配ですか?」
「当たり前だろ。仮にも同じ訓練した仲間だしな。」
そう言って彼は遠くを見た。
「あ、ありがとうございました。 」
「君達、変な行動するなよ。こっちだって人は撃ちたくないからさ。」
「しないですよ!冗談でも銃は向けないで!」
「頼むな」
そう言って笑ってまた持ち場についた。
「どこも状況は最悪みたいね。次行きましょ。」
生存者達との話し。
「あんたらさっきの。危ない奴らじゃ無さそうだな。この前盗賊紛いなのが来たって言ってたから。」
「それ入り口で追っ払ったってやつだよな?」
「そうそう、自衛隊の方にはホント感謝だよ。彼らが居なきゃ学校で死んでたかも知れないし。」
「あのう、どなたか船をお持ちの方はいますか?」
「船?何に使うんだ?」
「あ、えーと、」
(船で安全な場所に行きたいなんて言ってまた人数増えたらたまらんしな)広一が悩んでいるときだった。
「島に病気の親に会いに行きたいんです!」
横にいた葵が答えた。(なんてベターな・・・)
「そういう事なら彼が多分持ってた気が・・・おーい、彼を呼んできてくれ。」
「わかった、待っててくれ。」
そういうと1人の男性を連れてきた。
「君達船を探してるって?」
「そうなんです。」
隣にいた男性が葵が言った内容を再度説明した。
「フェリーなら確かに持ってるぞ。伊東に住んでたから釣りに使っていたしな。しかし鍵はいまないぞ、バタバタしてて自宅に置いてきてしまったからな。すまんな。」
男性は申し訳なさそうに言った
「あの辺りはフェリーのレンタルもやってる所もあるからそこなら鍵はあるかもな?後は島への定期便なら鍵があるかも?」
「伊東に行く時があったら探してみます。助かりましたありがとうございます。」
「気を付けてな。あっちも奴等が沢山だ、温泉の旅行客が奴等にやられてしまったからな。」
「はい、気を付けます。」
2人は時間になりそうだったのでトレーラーに戻っていった。
「広一さん、何か収穫はありました?」
「伊東になら船が沢山あるみたいだ。元住人の話しだから間違いないと思う。」
「でも次の目的地が出来た訳ですね。」
「そうですね。」
「とりあえず夕食の準備でもしましょうか?葵さん手伝ってくれるかしら?」
優花が言った。
「はい、わかりました。」
2人はトレーラーの中に入っていった。
「船に乗る前に食料の確保ですね。車の燃料は伊東までなら携行缶の予備燃料使えば全然余裕ですが、食料が船の生活になると足りないかと思うんです。」
「また聞きに行くしかないかな。近くにあればよいけど。」
「そうですね。まだ夕食までは時間もあるだろうからちょっとすぐ聞いてきます!」
「自分も行こうか?」
「1人で大丈夫ですよ。すぐに戻ってきますので。」
広一はまた自衛隊の人の方へ向かった。
「また君か、今度はどうした?」
「ここら辺で食料確保出来る場所はないかな?って」
「あー、そういう事ね。悪いんだけど、近場は自分達もあらかた取り終えてしまって聞いてるからね、現状は何処かにあるのかな?自分は警備の方だから詳しい話しはわからなくてね。その内、外から隊長が戻って来るからさ。それを待って直接聞いてみたら?戻ったら市長に報告しに行くだろうから帰りにそっちに伺うように話しておくよ。」
「ありがとうございます。」
またトレーラーに戻っていった。
「どうだった?」
「隊長がもしかしたらスーパーとかの場所を知ってるらしいから、戻って来るのを待ってみましょう。」
「そうですか。」
「皆さん、夕食出来ましたよー。」
広一は夕食を食べ隊長が戻って来るのを待つことにした。




