富士山
「孝夫さん、あのう・・・相談なのですが、貴方の方が年長者なので、もし良かったら今後リーダーになってはもらえないでしょうか?」
「え?自分がかい?多分自分じゃ役には立たないと思うんだ。避難してた学校の件もそうだけど、立て籠ってた方が安全だと思ってた。だが現実は違っていて避難場所は崩壊してしまった。この車だってそうだよ。鉄板付けたりして強化使用なんて考えてもみなかった。何より、2人だけでずっと外で生活しているのに生きているって方がいまの世界じゃ大事だと思うしね。」
「そうですか?いつでも変わりたかったら言って下さいね。」
「はは、参ったね。」
「もうそろそろ山梨入りますけど、出来たら街中は奴等に囲まれる可能性があるので、多少遠回りしても良いですか?」
「任せるよ。」
「そしたら山中湖側ではなく、富士山の反対のルートから進もうかと思うんですよ。」
「何故だい?」
「あっち側だと遊園地とかあるから人が集まる場所ってそれだけ奴等になってしまった人が多いと思って。」
「まぁそう言われると一理あるかな?」
「で、富士山挟んで反対のルートで行こうかと。途中ガソリンスタンドか食糧がありそうな場所があったら止まるつもりですのでよろしくお願いします。」
「しかしホントに世界がまるで変わってしまったようだ。ずっと避難場所にいたから気付かなかったがこんな状態になってしまっいたなんて・・・政府は機能していないのか?」
「自分も直接見た訳じゃ無いですが東京はダメみたいですよ。自分と一緒に居た彼女が言っていましたが(東京は死の街)って言ってましたから。」
「・・・そうか。」
しばらく走る。精進湖が見えてきた。
「広一さん、何か奴等が多い気がするのだが。」
「そうですね、近くにそんな大きな町はないのに。」
ゾンビ達は森からどんどん増えてくる。2人は何故なのかわからない。(さっきまで居なかったのに!?・・・は!)
「もしかしたらだけど・・・彼等は樹海の自殺者なんじゃないでしょうか?」
「広一さん、でもだとしたら噛まれてないんじゃ?」
「いえ、前に首を吊った遺体が吊られたまま動いているのを見た事があったんですよ。」
「そいえば避難所で無くなった老人も噛まれていないのに豹変してたって・・・あ、危ない!」
「前に集団が!このままじゃダメだ!囲まれる!」
葵がトレーラーにいたままだから、ボウガンも車両に無い為使えない事に気が付いた。
「くそ!奴等が比較的居ない方を走ります!少し揺れますよ!」
「え?」
(当てすぎてスタックでもしたら事だ。なるべく少ない所を走らないと!)
そう思った時だった。草で見えなかった縁石にぶつけてしまった。当たった衝撃でバーストしてしまった。
「まずい!」
「孝夫さん、タイヤがパンクしてしまったみたいです!このまま走れるだけ走って奴等を引き離します!離れた先でタイヤ交換をしますので、その間時間を稼いでもらえませんか?」
「やるしかないだろう!?」
バーストした側はホイルが丸出しになり、走っている間ずっと火花がでてしまっているが広一は構ってられない。今止まる方がよっぽど危険なのだ。
「広一さん、あそこはどうだろうか?!」
「え?はい、あ!あそこなら見通しは良さそうですね!あそこに向かいます!」
急いで車を走らす。
着いた先はゴルフ場の駐車場だった。この付近は樹海からは離れてた所にあった。だが、樹海から出てきた奴らは思っている程そんなに離れていなかった。
「トレーラーにいるメンバーも呼んできます!」
孝夫がかけていく。
急いで広一はスペアタイヤを取り外し、ジャッキアップの作業に入る。
「広一さん、来たぞ!」
「すいません!お願いします!」
ーーー
葵は説明を受けてトレーラーから出てきた。
「ボウガンのが良いけど射った矢を取りには行けなそうね。」
大事な矢を考え博物館で手に入れられた懐刀を手にする。
「来たわ!」
子供達が先陣を切って動き出す。あっという間にゾンビの顔に刃を突き刺した。(流石2人共トレーラーの中で全国行った事があるって言ってただけはあるわ!)
「私だって!」
そう言うとゾンビに向かって刃を突き刺した。だが倒れない。
「何で頭に刺さったのに!?」
刀が刺さったまま葵に近づいてくる。
「いや、そんな・・・」
その時横から人影が見えゾンビを突き飛ばした。
「危ない!」
孝夫だった。孝夫は先程突き飛ばしたゾンビの頭に手斧を降り下ろした。
ゾンビはそのまま動かなくなった。
「はい、大丈夫かい?」
そう言って葵の刀を手渡した。
「ありがとうございます!」
「君はボウガンのが手慣れてるみたいだね。後ろから援護しておいてくれ。」
「あ、でも矢が!」
「回収出来るタイミングがあれば取りに行くからさ!」
孝夫は振り返り奴等の元に向かって言った。
広一はまだ作業をしている途中だ。
(早くお願い!)
広一を見た後にボウガンがあるトレーラーに走っていく!途中ゾンビが居たが何とか交わしてトレーラーの中に入った。中では優花が奥で震えていた。
「大丈夫ですか?」
「ダメ!怖くて腰が・・・」
腰が抜けてしまったようだった。
「隠れてて下さい!」
ボウガンを手にし出口に向かおうとしたらゾンビが入ってきた。
「待ちなさいって!」
ボウガンを射ちゾンビを倒した。だがまた一体入って来ようとしてきたのだった。
「嫌ぁ!」
そう言って入ってきたゾンビを突き飛ばした。
急いで葵は扉を閉めた。
「まずい!これじ出られない!」
扉や窓から奴等の手が
「ドンドン!」
と叩くのが見える。
「最悪。扉が開かないと皆が入れないわ。」
どうする事も出来なくなった2人はトレーラーの中で身動きが取れなくなってしまった。
外では3人の戦う声が聞こえる。
「大丈夫かしら?」
しばらくするとトレーラーは動き出した。
「あれ?終わった?皆は?」
2人は疑問に思いながらも車は動いていく。
やがて車が止まりトレーラーの扉をノックする音が聞こえた。
「2人共大丈夫?」
栄太の声だった。2人は扉を上けた。
「大丈夫・・・ってうぉ!びびった!」
始めのゾンビを倒してそのままだったのだった。栄太は気持ち悪そうに外に引きずり出した。
「こっちに戻る余裕が無かったから車の方に乗ったんだ。広一さんを守らなきゃだったからさ。」
優花は栄太に向かって走り出した。
「生きてて良かった。」
優花は栄太を抱きしめながら安堵感で一杯だった。




