ある家族の話し
(今日も物資が来ない、避難の人達も体力的も精神的にも限界のようだ。自分の子供達は部活の特技を買われてか死人達を退治しに避難所の学校の周りを警備しに回っている。)
「あなた、大丈夫?」
妻の声だ。
「あ、大丈夫だよ、腹が減って動けないなんて恥ずかしい話しさ。」
男性は力無く笑う。
「ここでは農家の仕事も役に立たないしな。子供達のがよっぽど役に立ってる。」
電気も止まっているからテレビも見れない。ラジオもしばらく何も聞こえてこない。一体世の中何が起きてしまったんだろうか?死人達が人を襲うようになってから、近くの小学校に逃げ込んだ。それから数日すれば救助に来てくれるかと思ったら一向に来ない。
「やっぱり自分が思うより世界は深刻なのかも知れない。」
その時遠くの方で声が聞こえた。
「奴等が現れたぞー!」
警備してた人達が声のした方に向かっていく。
「栄太は後ろに下がってなさい。」
「祥子姉こそ下がってろよ。」
「今回は数が多いな。1、2、・・・7体だな。でもまたフェンス越しにやれば大丈夫だろ。」
「来たぞ!」
それぞれ得意の武器を使って応戦する。2人も例外ではない。剣道部の栄太は木刀、薙刀部の祥子は薙刀で応戦する。
「ま、楽勝だな。」
フェンス越しと言うのもあってまだ余裕があった。
「父さん、今日の仕事終わったよ。」
「ご苦労様。今日ももう暗い。早く寝て明日に備えなさい。」
「はいよー。」
こんな感じで数日がたった夜。同じ部屋にいた老人が亡くなった。元々寝たきりだったうえに、停電で医療器具も使えない為亡くなってしまった。
「誰か運ぶのを手伝ってくれ。」
そう言われ若いのが遺体を部屋から使ってない部屋に運んで行った。
その時、
「ギャー!」
遠くで悲鳴のような声が聞こえた。
「死体が動き出しやがった!」
遺体運んでた1人が血だらけで走っていった。
「何が起きたんだ?電気が無くてよくみえない。」
「誰か助けてー!」
「息子が食われた!」
「様子が変だ。おい、お前達荷物をまとめておけ。」
叫び声の位置がどんどん近づいてくる。自分達がいる扉が開いた。暗がりで見えない。
「あ、あれアンタ死んだ筈じゃ・・・うっ!」
話しかけた男性は喉元を噛みつかれ血を吐きながら言葉にならない声を出しながら死んでしまった。
「逃げるぞ!」
そう言うと4人は準備を完了していて動き出した。子供2人の荷物を持ち、子供達はそれぞれ武器を使い道を開いていく。
後ろで先程喉元をやられた男性が立ち上がり他の人間を襲い始めた。こうなるともう広がるのが早かった。何よりも問題だったのが始めに逃げた人物が門を開けたままにしたまま逃げた事だ。これによって中からも外からも奴等が来るようになってしまった。
「車で逃げるぞ!」
4人は駐車場に向かう。何人か駐車場にいた。同じような考えをもった人がいたんだなと思ったが違った。奴等だった。人間を襲い食べていた。
「くそ!見るな!早く車に乗るんだ!」
車に乗り込みエンジンをかける。急いで出発した。他の車に当たろうがお構い無しだ。目の前で死人達がいようが早く抜け出したいが為に奴等を何人か引いていった。その際にヘッドライトが衝撃で割れてフロントガラスも奴等が当たった拍子で割れてしまった。学校から出て周りに奴等がいなくなりふとメーターをみたらガソリンが僅かしか無かった。(逃げる前にガソリン入れておけば良かった。)
「学校にはもう戻れそうもないな。」
そう思った時だった。目の前に人が飛び出して来て引いてしまった。当たった拍子で割れていないヘッドライトもダメになってしまい完全に暗闇に包まれてしまった。
「さっきのは生きていたのかな?死んでいたのかな?」
「死んでいたと思うしかないでしょ?こんな暗いんじゃ確認もしに行けない。」
そう思った時だった。ふいに窓ガラスを叩かれる音が聞こえた。ルームランプの電気を付けた。
暗い明りだったが外の人物の顔ははっきり見えた。血だらけで土気色の白い目をした顔をしていた。
「キャー!」
後ろで娘が叫んだ。娘は目があってしまいパニックになってしまった。
「早く!早く車出して!」
「さっきのは奴等だったって事でしょ?早く行きましょう!」
「わかった。」
車を動かした。街灯も無く、ライトも付かない車で行き先も分からず道も見えにくい為に速度も出せなかった。その内ガソリンも尽きて車は止まってしまった。周りには電気は何も無い。
「明るくなるまで車から出ない方が良いな。」
そう3人に伝え明るくなるまで待つ事にした。気づいたら全員寝てしまっていて、車を叩く音で目が覚めた。
「!!」
言葉にならない声を上げてしまった。車がゾンビに囲まれていた。静かに3人を起こす。
「なん・・・」
口に指を当て、しゃべるなというジェスチャーをした。この状況はどうにもならない。木刀も薙刀も広い場所じゃないと戦う事が出来ない。ドアを開けて外に出ようものなら1人はうまく出れるかも知れないが他がやられるだろう。
「俺らはもうダメかも知れない。」
そう言って手を繋ぎ死を待った。
・・・が時間がたっても奴等は来なかった。ガラスの割れる音も無かった。(諦めるなんてないだろうし。)そう思った時だ。
ガラスを叩く音がした。(やはりまだいる!)
「もう大丈夫ですよ。」
人の声だ。顔をあげ、声のする方を向いた。青年が1人立っていた。(助かったのか?)そう思った。




