牧場
長野に入ってすぐに新幹線の駅がある町が出てきた。普段なら人が賑わいをみせている所なのであろう。
「あれ見て。」
上を指差した。新幹線が線路から脱線したのか防音壁から突き抜けていた。
「新幹線って脱線しないと思ってた。」
「凄いスピードが出てたんじゃない?」
「ゾンビが増えてきたな。早く抜けないと。」
「そうだな。囲まれると厄介だ。」
伊香保の件以来ゾンビが大量に出てきたら、車で当ててかき分ける事にしていた。前に鉄板がありタイヤハウスも隠しているので、撥ね飛ばしても引く可能性は格段に低くなったからだ。
「ちょっと揺れるかも?」
そう言って進行方向のゾンビを引いていく。数が多すぎて避けるのが困難になってきたからだ。
「ガン!ガン!」
ゾンビが当たる度に鈍い音がする。時たまゾンビの血肉がガラスに飛んでくる。
「またこのパターンなのね・・・」
隣で彼女は下を向いた。
何とか逃げ切る事が出来た。途中牧場の看板が見えた。
「ほら、もうすぐ牧場あるみたいよ。」
「ホント?ゆっくりできるかな?」
牧場が見えてきた。駐車場に車を止め中を確認した。
「誰も居ないのかしら?」
「どうだろう?見てみよう。」
2人は武器を手に取り牛舎に向かう。人影はない。と言うか牛もいなかった。
「牛もいないわ。」
次に宿舎に向かった。入ってすぐ首を吊った死体があった。
「キャッ!」
彼女は目をそらした。
彼は牧場の経営者だろうか?ただ、首を吊った後も死体は動いていた。自殺した後ゾンビ化したのだろう。彼女が持っていたボウガンを借りて止めをさした。
死体の近くには紙が置いてあった。
(他のスタッフは全員逃げ出した。私はこの牛達を置いては行けない。だが、私はこの世界に疲れました。牛達はこのままだと私がいないと死んでしまうので自由にさせる為に牛舎から全て放す事にした。牛達だけでも長生きしてくれ。)
そう書いてあった。
「だから牛もスタッフもいないのか。ねえ、ここでしばらく生活してみる?」
「いやよ、自殺した死体があった場所ってちょっと・・・」
彼女は言葉をつまらした。
「じゃあ他の所に行ってみようか。」
次の場所を目指す事にし車を走らせた。




