さらば温泉
「宿の人達大丈夫かしら?」
「そう言われても俺らはもうどうにも出来ないよ。後ろ見てみな。」
そう言われ後ろを振り向く。大量のゾンビが追って来ていた。
「ほら、しかも正面からも!」
そう言うと目の前に来るゾンビを撥ね飛ばしていく。その度にゾンビの血が車両に付く。ワイパーで血を拭うが伸びてしまい余計汚くなった。
「とりあえず俺らは温泉街から抜ける事だけ考えなきゃ。」
(多少だけど車を強化しといて良かった。タイヤハウスも鉄板で隠したからタイヤに巻き込むのも少しは防げるし。死体でスリップしたりスタックしたらそれこそ大変だからな。)
「まだ俺は死にたくない!」
「私だって!」
フロントが血だらけで所々ゾンビの一部が付着した車は温泉街をかけ降りる。
「まだトレーラー置いた駐車場は見えないのか?」
またゾンビを撥ね飛ばす。腕だけフロントガラスに飛んできた。ガラスの前に付けた網に引っ掛かり指先は尚も動いている。
「うぇ、気持ち悪い。」
彼女血の匂いと目の前に来た腕を見て気分が悪くなったようだ。
「見えた!トレーラーだ。・・・あ!誰かいる!」
閉めたハズの駐車場が開かれて車が1台入ってきている。
「おい!それは俺らのだ!」
「え?先に見つけたのはこっちだ!」
男性はこちらを見た。
「あ、いや、あんたらのなのか?・・・あ、へへ、悪かったよ。失礼するぜ。」
不思議な事に食い下がらず男性達は立ち去った。何があったんだ。そう言うと自分の車の方を見た。
「バンパーの前に付けた鉄板にゾンビの血や内臓が大量に付いてる。そこ以外にもガラスにもボンネットにも。これ見て奴等危ないのが来たと思ったのか?どちらにせよ助かった。」
急いでトレーラーを車両に取り付ける。
「さて出発しようか。」
網に付いた腕を外して遠くに投げた。腕だけになってもまだピクピク動いている。
「凄い生命力だな・・・いや死んでるから生命力じゃないか。」
そんな事を言いながら車に乗った。
「私気持ち悪い・・・匂いが・・・」
「そうだな。川か何かがあったら車を一度洗うかな?とりあえずまた安全面な場所を探すとしますか。」
(身体は綺麗になって体臭はなくなったけど、ゾンビの匂いが凄い。これじゃ検証は出来ないな。)




