表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/57

26. クウィル

PVが跳ね上がって既に10万近いアクセスをいただいております。一昨日までの5倍近いです。


読んでくださってありがとうございます!

「え? あー、うん。助けに来てくれてありがとう」

「実際、私たちで3対2だと厳しかったから助けにはなったよ、うん」

「そ、そうか、それならよかった。オレはクウィル、宜しくな」

「私はアリスよ、それでこっちはツクミ。宜しくねクウィル。ついでに一つ頼まれて欲しいんだけど、いいかな?」


 二人とも、外に出た時のための偽名はあらかじめ話し合って決めていた。メアリは母の、ルナは前世の名前を使っている。

 微妙に目が泳ぎつつ礼を言い、上目づかいで可愛くねだるメアリに少年――クウィルは顔を赤くして思わずといった様子でうなずいた。


「よかった! あのね、私たちのことは誰にも言わないで欲しいの」

「別に構わないが……なんでだ?」

「ちょっと事情があってね、特にクウィルにはしゃべって欲しくないというか」


 自警団の人間なら黒髪と金髪のコンビというだけで多分ばれる。そうなると自動的にジェフィードに報告が行って……となる可能性が高い。


「は? なんだそれは。……お前たち結構強かったよな、オレたちの仲間になるなら考えてやる」


 少し考えるように間をおいてこたえたクウィルの発言にメアリは即答した。


「え、やだ」

「なんでだ? どういう事情かは知らないが、周りの大人に言いふらすかも知れないぞ」


 悪戯っぽい笑みを浮かべて二人を脅迫(?)するクウィルは、メアリの声をひそめた次の一言に凍りついた。


「じゃあクウィルが貴族だってことみんなに言いふらすよ」

「なっ……!?」


 ルナがクウィルを見て頭を抱えた理由はこれだった。

 クウィルの立ち振る舞いは、メアリがルナと出会った当初のそれと酷似していたのだ。もちろん男女で差はあるのだが、高貴な生まれとしての教育を受けた雰囲気は相当慣れないと意図的に消すことは難しい。

 クウィルは下町に出るようになって1、2か月ほどだろうか、慣れてきてはいるようだがまだ甘い。

 固まったクウィルに追い打ちをかけるようにメアリは声をひそめる。


「どういう事情かは知らないけど、貴族の子供がこんなところで油を売ってるなんて知られたら狙われちゃうんじゃないの?」


 完全にブーメランな物言いにルナは思わず半眼になるが、クウィルはメアリも貴族の令嬢であることには全く気付いていないので外面的には問題ない。

 それほど上手くメアリは平民と同化していた。


「……なんで分かった」

「そりゃあ細かい仕草とかしっかり見たら貴族っぽい動きがちらちら見えてるんだもん、気付くよ。

 で、どうする? こっちとしては完全に助けられなかった負い目を感じて黙っていてくれればそれでいいんだけど」

「商人の娘か?お前。……まあいい、取り込まれるのが嫌なのかは知らんが俺たちはお前らなんて見ていない。それでいいか?」


 狡猾な表情を見せるメアリをクウィルは商家の娘だと判断したらしい。そんなクウィルにメアリは「ありがと。助かるよ」と笑みを見せた。



「ねえねえ、なんでクウィルみたいな貴族がこんなところで愚連隊のリーダーみたいなことやってるの?」


 好奇心に負けたらしいメアリがクウィルに尋ねる。自分と同類の貴族子女を見つけられて嬉しいのだろう。そんなメアリの事情を知らないクウィルは貴族だとばらされると困るのか、真面目に答えを返す。


「愚連隊って……オレは単純に外を見たくて屋敷を抜け出したんだ。そしたらあっさりと人攫い共に拐かされた。その時に助けてくれた人がかっこよくてな……それで、その人たちの手助けをしたいって思ったんだよ」

「うん、なんで一回誘拐されて懲りずにまた出てきてるのかがわからない」


 ルナの反応にクウィルは不思議そうな顔をする。


「なんでだ? 誘拐なんてそうそうされるもんでもないし、初回に喰らってたらしばらくはないだろう」

「「あるわ!!」」


 メアリとルナの声がハモった。この少年、どうやら自分が攫われた原因をただの不幸だと思っていたようだ。


「いい? 貴族の立ち振る舞いなんて見る人が見ればすぐにそれと解るものなんだよ? クウィルが誘拐されたのは偶然じゃなくてほとんど必然。攫われたのが初めの1回だけで済んだのは幸運だったと思ってね」

「お、おう」


 メアリのあまりの剣幕にクウィルは若干気圧されている。

 ルナは「メアリが言うなよ」と、初めてのお忍びの時からルナという優秀なガイドを見つけ、東の市では一度も襲われるようなことがなかったメアリ(豪運娘)に対して声に出さずに突っ込んだ。


「それじゃ、私たちは帰らないと行けないから。じゃあねー」

「な、なあアリス、また会えないか?」


 流石にそろそろ帰らないとお昼に間に合わない。そう別れを告げようとしたメアリに顔を赤くしたクウィルが尋ねた。

 背後にいる愚連隊(?)はヒューヒューと囃し立てている。


「んー、縁があればまた会えるんじゃない?」

「……そうか、じゃあ、またな」

「またねー」


 次に会うのならば王立学院だろうか、偽名を名乗ったけど気付くかな?とそんなことを考えながらルナ達は西の市を出た。






全体的に読みやすいように改稿しました。

だいぶ書きなれてきて漢字が多すぎることに気付いたので。


なにか意見等ございましたらご指摘ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ