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【番外編完結】他力本願英雄  作者: 寒天
山の民の大陸
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第171話 新生レオンハートVS斬魔将レヴァン

「ク……!」

「――ハァッ!」


 右足の踏み込みで距離を詰めると共に大地を砕く。そうして敵の機動力を奪うクン流の技を俺なりに再現し、レヴァンへ斬りかかる。

 山人族(ドワーフ)の技術力ってやつは本当にすごいな。使い慣れた嵐龍を、魔剣としては最上級だと思っていた嵐龍をここまでパワーアップさせてくれるとは。

 いくら俺でも、100万を越える数振り続けた嵐龍の力を持て余すなんてことはしない。どれだけ出力が上がり勝手が変わっているとはいえ、その程度に対応できないほど浅い鍛練をした覚えはない。

 だから――


「――剣技・五月雨」

「ぬぅ」


 雨のごとき連続突きを放ち、レヴァンの鎧を削る。やはり今の俺なら、新生嵐龍と融合したこの状態ならレヴァンの鎧を斬ることができる。

 ならば後は簡単だ。勝つまで斬る。それだけでいい!


「【加速法】――」

「同じ手を何度も――」

「【瞬剣・竜鱗ノ払】」


 嵐龍閃を放たないように刀身に留めつつ剣を振るう。レヴァンは何度か見せた超加速法の速度を基準に気影予測でカウンターを仕掛けてくるが、それは俺の想定内だ。

 俺はあえて加速法を発動しながらも最低強化率で留め、最速を刷り込んだ相手に動きの先出しをさせる加速フェイントを仕掛けたのだ。これにより、早く出しすぎたレヴァンの剣は余裕を持って回避できる悪手へと成り下がる。

 後は見えている防御をすり抜け、渾身の一発をぶちこむのみ!


「でりゃァァァァッ!」

「――――ッ!?」


 嵐龍のエネルギーを100%無駄なくレヴァンヘ叩き込んだ。

 さっきまでは全力で撃ってもちょっと削れる程度であった俺の攻撃だが、胴体を両断するように入った剣は纏った嵐の力を存分に発揮し、ガリガリと耳障りな高音を立てながら侵食していく。

 これを受けて一撃で真っ二つにならないとはさすがの強度だが……このまま押しきれる!


「……使エ、レヴァン」

「御意」


 もう少しで行ける。そう確信したとき、小さいが確かな威厳を感じさせる声が嵐龍の響かせる轟音の中から聞こえてきた。

 何だ……?


「【魔剣解放(オーバーエッジ)――」

(さっきの砲撃技? ……それは悪手だな。技を出す前に勝負を決められる)


 レヴァンの剣が咆哮を上げるように膨れ上がるが、それを振り下ろす前に勝負を決める。

 そう考えて嵐龍に力を込めたその時、想像していなかったことが起こった。膨張したレヴァンの剣はそのまま砲撃を放つかと思いきや、今度は超スピードで収縮し始めたのだ。

 何が狙い――ッ!?


「――封印剣・黒玉(シール)】」

「――封印魔法だと!?」


 圧縮されたレヴァンの剣はそのまま縮まり続ける。周囲のものを、嵐龍のエネルギーすらも巻き込んで黒い球体へと変化しているのだ。

 レヴァンの鎧の前面を削ることには成功したが、まだ致命打と呼ぶには足りないダメージだった。その段階で技を吸収された俺の攻撃はそこで終わり、それどころか――


(このままじゃ俺まで飲まれるな)


 周囲の全てを飲み込み封じる黒い球体。そんなものへと変化したレヴァンの剣は止まることなく空間ごと収縮を続けており、俺まで飲まれそうになる。

 これは欲張るには危険すぎると俺は判断し、深追いすることなく後退することにした。幸いにも発動させた加速法は最低倍率であり、負担もそこまで深刻じゃあないからな。


「――そう簡単には逃さんよ」


 しかし、距離を取ろうとする俺を見逃す理由はレヴァンにはない。当然球体と化した刀身を持つ剣を構え、追撃を仕掛けてくる。

 しっかり狙ってくるとは、ようやく本気ってことか? 鎧は大分吹っ飛ばしたのに動くのに支障はなさそうだし、タフなやつだ。


「あんまやりたくないけど――【連続加速法】」


 俺は完全には戻っていない体内魔力を再び暴走させ、再度加速状態に入る。これやると負担が倍じゃ利かないからできれば使いたくないんだけど、まあこのまま剣に食われるよりはましだろ。


「――フン」


 高速移動によって距離を取ることに成功する。流石にこのまま追い続けるのは危険と判断したのか、レヴァンは立ち止まり剣を元に戻していった。

 正直連続加速のダメージがやって来た今攻められるとちょっと危ないから好都合だな。


「……その剣の本当の能力は、周囲を飲み込む封印剣だったってことか?」

「それを教えてやるほど親切ではない」

「……だろうな」


 俺は息を整えながらレヴァンに問いかけるが、魔法の武具なら大なり小なり持ち合わせている自己修復によるギチギチという金属が捻れて締め上げられるような音を立てながらも言葉数少なく再び剣を構えている。

 休ませてくれる気は、なしか。本格的に殺す気になったってとこかね。


「――フンッ!」


 レヴァンは(からだ)の再生が完了するのを待つこともなく速攻を仕掛けてきた。踏み込みで大地が砕けクレーターができるような力で突っ込んできたレヴァンだが、さて――


(下手に近づくと卓越した剣技に封印術。距離を取れば砲撃か。なんとも嫌にバランスがいいな)


 どの距離にも対応できる技術の持ち主。それを相手にする場合、取るべき手は……


「自分の得意な距離でぶっ飛ばす!」


 どの距離でも優位にはならないのなら、自分に都合のいい距離を選ぶ。つまりは接近戦を仕掛けるべく俺も前に出ることにしたのだ。

 加速法の負担は無視できるレベル。嵐龍のレベルアップで融合している俺の耐久力と回復力もまた増加しているようだな。

 これなら、多少の無茶は何とかなりそうだ。


「――フンッ!」

「セイッ!」


 レヴァンの魔剣と嵐龍が激しくぶつかり火花を散らす。普通の剣なら一発でへし折れる危険な扱いだが、嵐龍なら問題はない。


「グググ……」

「どうやら、パワーでは私に分があるようだな」


 剣をぶつけ合い、そのまま鍔迫り合いに……力比べに移行した。

 確かに、レヴァンの言う通り、単純なパワーでは向こうが優位か。筋肉も何もない空洞の鎧の癖にさ。


「でも、パワー勝負に付き合う理由はない」


 俺は早々に力で押し込むことを諦め、むしろ力を抜いてレヴァンの力の流れをコントロールする。

 伊達にパワー馬鹿……もといパワー自慢相手に組手していたわけじゃないんだ。こういった力のいなしかたなら、嫌ってほど積み重ねている。


「剣技・白刃投げ」


 俺は剣を主軸に使った投げ技を仕掛け、レヴァンを浮かした。

 とはいえ敵も一流の剣士と呼んでそん色ない力を持っている。流石にそのまま地面に叩きつけられるようなことはなく、瞬時に反応しているため体勢を崩させるくらいのことしかできないが、それで十分。


「【竜鱗ノ払】!」


 再び嵐龍に魔力を纏わせ、倒れないよう片足で踏ん張っているレヴァンへ斬りかかる。

 俺の戦術はひたすらシンプルだ。シンプルに強いって奴にはシンプルな手で挑む。つまり連続で斬る。この一撃が通用する事は証明済みであるならば、後は当てるだけで良い。

 とにかく――斬る!


「【魔剣開放(オーバーエッジ)――」

(またか)


 レヴァンは二撃目を前に、また刃を巨大化させた。

 今度こそ砲撃で相殺か、あるいはまた吸収封印か――それとも。


「――三頭剣(ケルベロス)】」

「三つ目の能力か!」


 巨大化した刃は三つに分かれた。一つはそのままレヴァンの手の中で剣として、残り二つは空中に浮かぶ自在剣として。


「――ヌアッ!」

「クッ――チッ!」


 嵐龍はレヴァンの鎧に直撃し、やはりそれを大きく削った。しかし致命傷にはならないため、レヴァンは受けてから手にした剣で嵐龍を弾き、増えた剣が俺を狙って来た。

 いくらなんでも大技を撃った直後にこれは、避けられない――ッ!


「痛っ!」

「……やばいぞ」

「流石に助けに入らないといけないかな?」


 増殖した剣が俺の両肩に突き刺さった。

 空中浮遊する自在剣……よくある能力だが、使い手が強いと物凄く面倒だ。単純に、超がつく実力のある剣士が二人増えたようなもんだぞ……!


 だが!


「手出し無用!」


 俺は後ろで動き出した二人を止めるべく叫び、その場で回し蹴りを放ちレヴァンを弾き飛ばす。

 対して抵抗するつもりもなかった様子のレヴァンは自ら飛ぶようにその場から離れたが、しかし肩の刃は細かく振動して傷を抉ってくるのだった。


「グ……チィ!」


 俺は混沌の魔力を両肩に集中させ、刃を消滅させる。覚醒融合状態での一撃はレヴァン本体にも効いていたことから効果ありと考えてのことだったが、無事に消滅させることができた。

 傷口の蓋をしていた刃がなくなったことで両肩から噴出すように血が流れているが……ふう。流石にちょっと厳しいな。


(治癒阻害はしっかりついているか……まあ、これだけ多彩な能力があれば当然だろうけど)


 吸血鬼の再生力を持ってしても治りが遅い傷を見ながら俺は次の手を考える。

 傷にかけられている呪いは覚醒融合の能力により自動的に解除されるが、それでも傷の治癒と合わせて10秒は必要だろう。

 それだけの間まともに腕を動かせないとなると……どうするかなっ!


「回復の時間を与えるつもりはないぞ! 【魔剣開放(オーバーエッジ)雷鳴剣(ゴルゴラ)】!」

「今度は、雷属性の魔剣ってか」


 また剣を巨大化させたレヴァン。先ほどの繰り返しのように刃は収束し、元の形状に戻ったと思ったらその刀身は雷撃を帯びていた。

 刃から属性魔力を出すってタイプの魔剣は俺の嵐龍や親父殿の紅蓮、そしてさっきまで使っていた華厳など多様にあるが……今までの能力全て複合しているとか流石に便利すぎないか?

 しかも、それを扱うのが人間ならとっくに死んでいても全く不思議ではない傷を受けても問題なく機動する(からだ)と、特殊能力に依存する必要がないほど高い技量を持つ剣士だとか……能力頼りの雑魚とは桁が違いすぎんだろ!


(でも電撃との対戦はメイで慣れてる。明鏡止水で電撃を受け流して、治癒までの時間を稼げば――)

「――ヌアッ!」

「いぃ!?」


 俺が電撃魔剣をどう対処するか考えていたら、突如目の前に壁が現れた。

 なんと、レヴァンの野郎……足で地面を蹴り上げやがった。それも魔力をどう使ったのか、ありえないほど範囲を拡大化させた状態で。

 おかげで蹴り上げによって膨大な量の土と岩が盛り返され、壁となって俺の視界を遮っている。相手に合わせる明鏡止水は、相手が見えなきゃ上手く発動できない――


「言った筈だ。優秀な技一つに頼るのは危険だとな」

「――ごもっともで同意見だよ!」


 気配と言うものを持たない魔法生物に視界を封じられる。これで繰り出される攻撃に対処するのは至難の技だ。

 しかし、それはすでにわかっていることだ。一度破られている明鏡止水を――一つの技を破られたらそれでお手上げになるほど俺も馬鹿じゃない。

 俺は目を諦め、耳に全神経を集中させる。聞き取るのは迸る雷撃の音。バチバチと響く魔剣の唸り声を聞き分ければ、レヴァンの動きを読むことができるはず――


「――そこだ! 【対雷障壁】!」

「ほう」


 土煙の中から繰り出された雷撃剣を、俺は対メイ用に開発した絶縁体に近しい性質のある魔力障壁を足に纏わせた上で蹴り上げにより受け止めた。

 雷の属性の一番厄介なところは防御不可であることだ。攻撃を受け止めても電気は防御を素通りし、身体を縛る。アンデッド特性を発動中の今の俺なら一瞬痺れる程度で済むかもしれないが、このレベルの戦いではその痺れている一瞬が致命傷に繋がりかねないため、こうした技はある意味必須だ。

 普通に防御するよりも魔力を多く消耗する上にかなり防御範囲が狭いのが欠点だが……まあ剣や拳を受けるくらいはできる。


「電撃への対策は万全と言うことか」

「慣れていてね! お前の剣は、どうやら多様な能力を使い分けることができるのが自慢らしいが――切るカードを間違えたな!」


 ここまで見せられればわかることだが、レヴァンの剣は普通ではあり得ないほどの能力を有している。これほど多様な能力を持つ武器はミハイの槍くらいしか知らないほどだ。

 しかし、手札が多いってのは必ずしも有利になるわけではない。こうして、不利な武器を選んでしまうこともあるからな。


「すぅぅぅ……フンッ!」

「ッ!? ……我が剣を始点に縦に回って蹴るとは、器用なやつだ」

「――胴回し縦回転蹴り、だったかな?」


 俺は上から振り下ろされた剣を開脚して一本足で受け止めていた体勢から、上に跳んで縦回転蹴りを放った。やはり格闘術は全ての基本だな。メイ相手に組手をした経験はどこまでも俺の財産になっているようだ。

 と言っても俺の体術ではこいつの装甲は破れないが……これで体勢を建て直すことはできたな。腕も治ってきたし、もう問題は何もないか。


「――さて、そろそろ終わらせようか」

「強気だな」

「あぁ。もう、準備は十分だ」


 俺はなるべく強そうに見えるよう笑みを浮かべる。

 これからやるのは一種の奇襲だ。それなのに『これから何かしますよ』と言わんばかりの態度を取るのは自分から不利になりにいくようだが……この技は相手が警戒しているほど有効なんだ。

 何せ、相手の反射を利用し、感覚を狂わせるのが肝だからな。


「――剣技・唯一」


 俺が放ったのは、顔面めがけての全体重を乗せた体当たり染みた突き。

 しかし、レヴァンならそんな正面からの攻撃は容易く対処してくる。剣を横からぶつけ、俺の剣を払ったのだ。


「【加速法・二倍速】」

「――む?」

「二倍瞬剣・弧剣双肩」


 払われた力の流れに逆らわず、その場で回転斬りを放つ。

 同時に加速しておきタイミングをずらすが、流石にその程度で崩れるほどレヴァンも弱くはなく剣を盾に使って薙ぎ払いを防いだ。

 その予定通りの流れを手から伝わる衝撃で感じつつ、大きく踏み込みショルダータックルを放つ。この技は剣を受けさせて体当たりで崩す二段構えなんでな。


「ぬぅ」

「【三倍加速――】」


 さらに加速率を上げ、レヴァンの感覚を狂わせる。

 八段階に加速を分散することで持続時間を上昇させた上で、凶悪なまでの緩急で敵の守りを崩す奥義――八王剣。

 この技は、こいつのように確かな守りの技術を持つ者にこそ有効なのだ。


「【三倍瞬剣・砂山三華】」


 次の加速で、俺は地面を抉るように低い攻撃を放つ。この技はさっきレヴァンがやった地面蹴りあげと同じく足場を利用した技で、攻撃と同時に敵の足場を崩すものだ。

 踏み込んだ足、地面に刺して抉る剣、それを受ける敵自身の踏ん張り。この三点で、地面を崩す―― 


「――クッ!?」


 さすがと言うべきか、一瞬で足元が耕されたことに気がついたレヴァンは速やかに力を抜いて転倒を防いだ。

 すでに防御のタイミングは大きく狂っているというのに、尋常じゃない反射神経だ。


「【四倍瞬剣・四天】」


 だが、八王剣の真髄は急激な加速を用いた連続剣。敵に合わせてその剣のパターンはいくらでも変えられる。

 ガキの頃は予め入念に決めておいたパターンでしか使えなかったが、加速法を極めた……は言い過ぎにしてもかなり習熟した今は一味違うってもんだ。


「ラアッ!」

「――カッ!」


 剣技四天は、簡単な上段斬り下ろしだ。ただし一発ではなく、瞬きする間に同じところを四回打つ高速剣である。

 レヴァン相手じゃ馬鹿正直に打っても簡単に対処されただろうが、事前に隙を作るよう足場崩しを仕掛け、それから逃れるため受け身になっていた瞬間なら話は別である。


 俺の剣は、咄嗟に出されたレヴァンの剣を手から放すまではいかないもののついに弾き、完全な無防備を作り出すことに成功したのだった。


「【五倍瞬剣・五光】」


 その隙に、俺は光属性と闇属性、二つを合わせた混沌に、嵐龍が放つ水属性と風属性を合わせた嵐属性まで引き出し、都合四属性混合の混沌嵐属性を剣に纏わせ一閃する。

 俺が使える四属性を、鍛えた剣技に乗せる。それが五つの力を束ねる剣技・五光だ。ぶっちゃけ覚醒融合状態で放つ嵐龍閃を纏った剣の方が強いのだが、八王剣は連続技である関係上溜めがある技が使えないからな。


「――おのれ! 【魔剣解放――」

「その隙は与えないぜ」


 五光の直撃を受け、レヴァンの鎧は大きく損傷する。さっき与えたダメージと合わせれば流石に無視できないものがあるだろう。

 吹き飛びながらも戦いの流れを取り戻そうと再び魔剣の力を解放しようとしているが――反撃を許さない、怒濤の連続剣。それが八王剣だと教えてやるよ。


「【六倍瞬剣・六道崩壊】」


 俺は吹き飛ぶレヴァンを一瞬で追い越し、剣を狙って斬りかかる。流石に魔力を集中させるタイミングで弾かれては、どんな魔剣も意味をなすことはないだろう。特に、その剣に光の浄化を流された場合はな。

 さらに、そこで止まらず俺は人間で言うところの両腕と両足、そして胸にも続けざまに光属性強めの剣を放つ。魔力障壁を弱める剣士の技が一つ、鎧崩し強化版と言ったところだ。

 特にこの技は吸血鬼の目を駆使することで全身を流れる魔力の流れを見切り、断つというのがコンセプトだ。狙いが繊細すぎて普通に打っても成功しづらいのだが、無理な状態で大技を使おうとする――なんて隙を晒しているのなら話は別だ。


「これは――」

「力入らないだろ? オリジナル技としてはかなりの自信作なんだ」


 別に封印術をかけたわけでも何でもないのですぐに復調するだろうが、動きの全てを魔力に依存する魔法生物が体内魔力を乱されたのだから堪らないだろう。

 これで、こいつの理不尽な耐久力は剥ぎ取った。そろそろ締めだ。


「【七倍瞬剣・夜天七星】!」


 最終攻撃を前に、これで止めと俺は加速をさらに強める。

 放つのは混沌属性を全面に出した殲滅攻撃。闇属性で相手を覆い、視界と動きを封じた上で限定された視界へ魔眼・殲滅の目を放つ。本来は広範囲を視認するだけで消し飛ばす技として考案したものだが、負担が大きくて使いづらいって欠点があった。

 そこで敢えて限定的な範囲に絞ることで負担を軽減すると共に密度を上げてみることにしたのだ。

 元々魔力障壁を消されていた上で混沌の魔眼に晒されたレヴァンの鎧は砂のように崩れていく。しかしな――まだ剣を使ってないぞ?


「――セイッ!」


 強制的に闇夜に封じた上で混沌の力を与え、そこを夜空に輝く星のようになるまで高めた光の刃で強襲する。

 それが夜天七星。色々できるようになってから修行の合間に考案、練習した新技である。


「――」


 止めの一発を受けたレヴァンは、無言のまま背を地に着けた。

 死んでいるのか生きているのかはわかりづらいが、もう鎧は廃棄品としか言いようがない有り様だ。

 もっとも、あれだけやってまだ再生しているのは流石だがな。


「グググ……」

「……悪いが、最後まで手は抜かないぞ。情けをかけられて喜ぶタイプじゃないだろうしな」


 再生する鎧から籠った声が聞こえてくる。どうやらまだ生きているらしい。

 本当ならここで手を引いて再戦を楽しみに――といいたいところなのだが、これは戦争であり強敵ほど情けをかける訳にはいかない。

 俺はそう思い、剣を掲げる。この一撃で、止めだ。


「……申し訳、ありません」

「……気にするナ。見事な戦いであっタ。故ニ、褒美として最後の抵抗を許ス」


 小さく呟かれたレヴァンの言葉を聞いた魔剣王は、部下の健闘を称えた。

 それだけならいい主従と敵ながら好感を持つところなのだが……何か不吉な言葉が聞こえたような……?


「決死の切り札――ありがたく。【世界破片(レプリカキー)魔剣同化(オリジンモード)】」

「ッ!?」


 最後に止めを――と思っていた俺は、その場から大きく飛び退いた。

 ヤバい。よくわからないがヤバすぎる何かが起こっている。もしあのまま攻めていたら、死んでいたのは俺だったと確信するような何かが。


「……こうなれば、もはや消滅は免れん。王の許可を持ってはじめて使用を許される将の切り札――全力を持って我が死に華を添えよ!」


 さっきまでボロボロだったレヴァンは、変化していた。鎧が新品同様になると同時に、全身から吹き出すような魔力のオーラを纏っている。

 まるで覚醒融合――いや、そんなレベルじゃないな。あれはどう見ても、人では到達できない何かだ。それこそ、レヴァンクラスが命を代償にしてはじめて使えるようなな……。


「さあ、全力を持って応えよ!」

「ありゃヤバいよ!」

「ああ。今度ばかりは一人でやるとは言わせんぞ!」


 レヴァンの最後の攻撃のやばさを察知したクルークとメイが飛び出してくる。

 あれを前にしても助けに来てくれるのは正直嬉しいが……せっかく温存した戦力だ。ここは最後までやらせてもらうよ。


「そっちがそう来るんなら、こっちもいくぞ。馬上生活じゃ、自分の中で魔力練るくらいしかやることなかったってことを教えてやるよ――」

「【限定接続(リミテッド・アクセス)――」

「――【神造英雄・覚醒融合モード】」


 瞬間、俺とレヴァンの間に強烈な光が走り全ての視界を潰す。

 物理的な衝撃すら伴う光の嵐はクルークたちすら吹き飛ばし、そして――


「……やっぱ、まだまだ実践投入は早かったか。使わないつもりだったんだけど、そうもいかなかったか」


 全てが収まったあと、残っているのは覚醒融合が解けた俺一人。

 正真正銘、レヴァンと言う強敵の全てを消しさったあとの光景なのだった――。

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