第154話 それぞれの思惑
「……戦況を報告せよ」
「ハッ!」
我は配下に報告を命じる。跪く連絡兵のリザードマンは震えながらも戦況を細かく語りだした。
現在、魔人王様より受け取ったアンデッド軍団と降伏してきた鳥共へ進撃命令を出している。
既に守護十二獣が全滅している以上、強者と呼んでいい戦力は少ない。いくら我が魔獣王軍ナンバー2とはいえ、流石に魔獣王様がお越しになられない戦場へ全戦力を持ってくることなどできないのだ。守護十二獣をすべて動員しただけでも破格だったのだからな。
そこまでしていただいた上で、結果は最高戦力の全滅。この失態のお詫びをするには必勝以外にない。それも、一切不安を残すことのない完全なる勝利だ。
だからこそ敗北すれば失態ではすまない外部魔王からの提供戦力を出している。所詮使い捨てなので失っても問題はないが、結果が敗北ではかの魔王の顔に泥を塗ることとなり、引いては我が主、魔獣王様の沽券に関わる話となる。
元々不退転の戦場だが、更に上乗せした背水の陣というわけだ。
我が軍の兵は敵軍より優れているが、しかし一部の強者はその程度誤差の範囲とものともしない。現に、我一人でも雑兵など相手にならないだろう。
その強者に属する守護十二獣を一人で半数殺してしまうほどの実力者がいたことは計算外であったが、それでもなお必勝にして圧勝を義務付けているというわけだ。
(魔人王様ならば何の問題もなくあの戦士を殺せるだろうが、気まぐれなあの御仁のことだ。そもそもこの戦場は我ら魔獣王軍のものであることだし、足止め以上のことはしてくださらない可能性が高い)
そのお力を本気で振るうことはない。それが我の読みだ。それどころか、恐らくは何の連絡もなく自分の用事を済ませたら帰ってしまうことだろう。あの御仁はそう言う方だ。
我が主も似たようなところがあるが……うむ。やはり、今動かせる手勢のみで勝利することを前提に考えるべきだな。不確定要素は全て悪い方に考えるのだ。
「……以上となります」
「ウム。概ね予想通りといったところか」
リザードマンは報告を終えてホッとしている様子だが、そんなことは気にせず策を練る。
現在、先行させたアンデッドビースト軍は敵軍と激突。優勢とはいえないまでもその能力を存分に発揮して敵に損害を与えているらしい。元々嫌がらせこそが最大の仕事であることだし、十分な戦果といえるだろう。
そして、同じく出撃させている鳥人族部隊は敵軍の頭上を飛び越えて敵本陣へと向かっているようだ。対空攻撃くらいは敵も持っているはずだが、空を舞う鳥人に当てる事は難しいだろう。
この戦いで見事故郷を滅ぼし、首級を挙げた暁にはその忠誠を認めると言い含めていることだし本気で我が軍門に加わったのなら奴らも本気になるだろう。裏切った振りをして獅子身中の虫となるつもりであることも警戒して全員出撃させたが、その見極めもここでできるというものだ。
「恐らく鳥人族共には鳥人族がぶつけられるだろう。空中戦で南の大陸からの救援が鳥人族に勝るとは思えん」
「念のため敵軍の部隊展開から鳥人族がいない場所を狙って進軍させましたからな。うまくいけば本陣への強襲も可能になるのではないかと」
「そこまで甘いとも思えんが、それに近い戦果は期待するとしよう。さて――」
実力はともかく頭の出来で相談役として召集した何人かの鼠獣人と意見を交えつつ、更に話を進める。
「本命はここからだ。敵軍の防衛網はアンデッドによって壊滅――とまでは行かなくとも機能を失うだろう。残って連中でいうところの英雄級とそれよりやや下の強者が数名といったところだ」
「毒、呪いに対する結界が張られているようですが?」
「素材が我が召喚したモンスターとはいえ、あのアンデッドを作ったのは魔人王様だ。その呪いに抗うことなど不可能だろう。まして、その結界が作られたのは南の住民が来てからの急造品。到底それだけで封じることなどできまい」
魔人王様が何も本気を出したとは思わないが、それでも原初の四魔王の方々は規格外だ。片手間で創造したものですら本職の召喚術師や死霊使いの力を軽く超える。
そんな方が創造し、その性能を嫌がらせに特化させた部隊……敵防衛網に穴が開くのは確定と言えるだろう。
「では、行動を開始しますか?」
「うむ。まずはアンデッド軍が攻め込んだ穴に追加戦力を投下せよ。確実にその周囲の敵兵は援護に回る。その隙を狙うとしよう」
「しかしその程度は敵も見抜いてくるでしょう。アンデッド部隊が侵攻する地は呪いと毒で汚染される事から考えましても、我々がそこから侵入するとは考えないのでは?」
「事実、征獣将様の召喚モンスターの毒ならともかく魔人王様の呪いでは我々ですら耐えられませんからな」
鼠獣人たちがこぞって意見を出す。
確かに、こちらの陽動に敵が気がつく可能性は高い。自ら汚染した地をわざわざ進み、自爆するわけがないと判断するのは自然な流れだ。
こちらにはその呪いを無力化する策がある可能性が残る以上無防備にするとは考えづらいが、それでも完全に不意を突けるとは考えにくいのは確かだ。
だが、そこは力で押し切ればいい。多少なりとも薄くなれば儲けものと言う程度でいいのだ。
この進撃は、今までとは違う。文字通り本気で行くのだからな。
「釣られないのならそれでもかまわん。元々敵勢力を分散させ、あわよくば無力化することを望む程度の戦力だ」
「では、どうするので?」
「次の軍には我が親衛隊を出す。もちろん、我を含めてな」
「なんと!」
「御自らが出陣なさると!?」
「この戦いに求められるのはただの勝利ではなく、完全なる圧勝。ならば戦力を出し惜しみしている場合ではあるまい」
「それはそうですが……」
「しかし、それは……」
家臣共がお互いの顔色を伺うようにキョロキョロと辺りを見回し、声を震わせる。
……まあ、言いたい事はわかる。ここでもっとも地位があるのは我だが、我自身もまた家臣の一人だ。
もしまだ自分達が生き残っているにも関わらず王が出陣するなどということになれば、それすなわち家臣の失態。既に勝利が決定した戦場というのならともかく、決戦の地に主人自らが戦力として出陣するなど家臣の信用がないとしかいえないだろう。
……なにせ、事実だからな。はっきり言って、現状の情報から考えてこいつらでは敵の強者の相手にならん。我が軍の中には無論奴ら以上の戦士もいるが、そんな強者は魔獣王様直属の護衛として本拠地に残っているのだから言っても仕方がないことだ。
「敵を甘く見るな。我も本来なら我自らが出るまでもなく、召喚の力だけで十分、守護十二獣まで投入すれば過剰戦力だと思っていた。だが、南の戦士たちが加わったことで敵戦力は未知数と言っていいほどに跳ね上がっているのだ。もはや、全ての戦力で確実に取りに行くほかない」
「……畏まりました。では、親衛隊の御歴々を全員ということでよろしいですね?」
「うむ。我の真骨頂、見せてくれよう。わかっていると思うが、第一目標は鳥共が虹の樹と呼ぶ敵の拠点だ。まずそこを抑えれば、敵に残るのは精々穴倉に篭ってのゲリラ活動程度のもの。一人一人弱ったところを狩ればいい」
「戦いの基本は補給ですからな。疲れを癒し仲間と連携する場所を失えば後は烏合の衆というもの」
「安心して休める場所を失えば、それこそ征獣将グラム様のお力の前にひれ伏すしかないというものでしょう」
「それに、敵の士気を砕くのにも有効です。恐らくは敵の将もいるでしょうし、その首を取れば降伏を、そこまで行かずとも今のように戦う事はできなくなるでしょう」
諦めたのか、家臣共も我が出陣すること前提で話をし始めた。
こちらの理想としては、アンデッド軍団により敵の隊列を乱し、鳥人族部隊で強襲を仕掛け分断、その後我らが制圧というところか。
とはいえ、現実的に考えればアンデッド軍団の処理には手間取るものの精々時間稼ぎ、鳥人族共も敵の鳥人族に阻まれ膠着と言ったところか。
まあ、分かっていても受けざるを得ない陽動くらいには使えるだろう。別に死んでも惜しくない駒であり、精々足掻いてもらえばそれでいいのだ。
「では、結論を述べる。我々本隊はアンデッド軍団および鳥人族部隊が交戦を開始し、双方が疲弊したところで奇襲をかける。攻撃開始合図はいつもの方法で行うため、各部隊は所定の位置で待機。合図と共に攻撃を開始せよ。この旨を全部隊に通達!」
「復唱します。本作戦は特攻部隊を使い敵を疲弊させた上での強襲。合図は通常の思念号令。待機地点は事前通達より変更なし。これを全部隊に通達します」
「ウム。――我らが王に勝利を!」
「我らが王に勝利を!」
「勝利を!」
「勝利を!」
我の号令と共に、この場にいた全員が雄叫びをあげる。
さあ――開戦といこうか。
圧倒的な個の力は数を蹂躙する。だが――圧倒的な数が個を蹂躙するのもまた真実であることを教えてやろう。
丁度、そろそろ我の仕込みが効いている頃合いであろうしな……。
◆
「香藻様。まもなく虹の樹の勢力圏内に入ります」
「わかっている」
俺様と並走して飛ぶ近衛兵が報告してきたが、そんなの言われるまでもない。
元々あの場所は俺様が君臨し、支配するためにあるのだ。今でこそ勝ち目のない戦いに挑んで死にたがるようなバカ共のせいで追われる身とはなったが、本来この俺様こそが唯一無二の王なんだからな。
(ククク……俺様に従わず虹の樹に残ったバカ共は魔獣軍の猛攻でヘトヘトなのは間違いない。俺様がいたときですら主力部隊が毒にやられて機能していなかったんだ。恐らく、今攻められればまともに抵抗できずに壊滅するはず。そうなれば外様とはいえ俺様こそが首級を上げた最功労者。魔獣軍……いやより大きく魔王軍全体にこの香藻様の名を轟かせることができるというものだ)
なんでも、今の虹の樹は南から来たとかいう羽根なしのよそ者の助力を受けているらしい。まったく、翼の民としての誇りはないのかね?
ともあれ、そんな翼もない下等種族など数に入らん。むしろ、そんなものに頼っていることそのものが虹の樹の壊滅を証明していると言えるだろう。
もはや俺様に付き従う精鋭部隊に抗える戦力はあり得ない以上、虹の樹を攻略し征服するのは俺様だ。
そんな手柄をあげたとなれば、如何な魔の住民とはいえ俺様への敬意を持つことになるだろう。
最低でも虹の樹の支配権は俺のものだ。無論降伏した手前属国という扱いになるのは避けられないだろうが、王位を手にできるのなら安いものだ。
やつらには適当な兵力でも渡しておけばいいだろうし、俺様の地位は安泰だな。
(それもこれも、あの征獣将の奴がこの役を俺様に譲ったからこそだな。奴も俺様とは仲良くやっておきたいと見える。まあ、愚民共を支配するのには最適な王族の血と、風神玉という規格外の力を併せ持つ俺様だ。友好的にやりたいと考えるのは当然だがな)
今も俺の懐で鳴動する風神玉。この力は本当に素晴らしい。
仮に壊滅状態だった兵団が万全の状態だったとしても、こいつさえあれば互角……いやそれ以上の戦力となるだろう。これほどの力を今は亡き父王がなぜ使わなかったのか理解に苦しむね。
その力を正しく理解している征獣将とはこれからも仲良くやっていくべきだろう。魔王軍全体で見ても最上に近いらしい奴を使えば俺様の地位は更に向上するというものだしな。
いや、むしろ俺様が仲良くしてやる側か。俺様のために不要なアンデッドの軍勢まで出撃させる辺り、案外奴は奴なりに王族である俺様へゴマをすっているのかもな。
「……殿下。虹の樹方面より何か来ます」
「ん? 歓迎の出迎えか?」
「いえ、敵兵です」
「……フッ! 最後まで王族たる俺様に反抗したまま死にたいというわけか。よかろう、ならば最後の矮小な抵抗、一思いに散らしてやれ! 近衛隊長! 貴様に指揮を命じる!」
「御意」
近衛隊長は俺様の命に従い、すぐさま隊列を整える。
こいつこそ、精鋭部隊の中でも最強と謳われた鳳に匹敵するとまで言われる、俺様の切り札だ。鳳が毒で使い物にならない以上、こいつに勝てる奴は一人もいないということだな。
最強の武器風神玉と最強の駒。そして最強の軍勢の後ろ楯に最高の血統……まさに俺様の明るい将来を祝福しているようではないか!
「――香藻!」
「え?」
なんかものすごいスピードで突っ込んできた。風神玉の恩恵で動体視力もアップしているから見えているが、こいつは――
「やらせんよ」
「クッ! 邪魔をするな!」
突っ込んできたのは、今まさに思い浮かべていた最強候補の一人、鳳。俺様の首を斬り飛ばす勢いで槍を振るい、それを近衛隊長が間一髪で武器を挟むことで止めていた。
……こ、この無礼者が……死に体の分際で、俺様の首を狙いやがったな!
「久しいな鳳。いつの間にか本調子に戻ったのか?」
「――凰翔!」
刃を止められた鳳が、近衛隊長――凰翔の名を叫んだ。
まったく、ひやりとさせてくれたな。危うく高貴な俺様の身体に傷がつくところだったじゃないか。
「貴様ほどの男が……何故このような愚かなことをする!」
「愚か? 俺は香藻様の近衛隊長だ。ならば、その命に従うのが役目だろう?」
「主が道を違えたのなら命をかけてでも止めるのが我らの役目だ! まして、命令だからと他の王族の方々のお命を奪うなど許されるはずがない!」
「許される気などない。それに――俺は多くの王族の中から香藻様こそが主に相応しいと自らで選んだのだ。そこにケチをつけられる謂れはないな」
二人の鳥人族最強候補はお互いの武器を高速でぶつけ合いながらも叫ぶように会話する。
ふむふむ、やはり近衛隊長の忠誠心は評価に値するな。有能な部下の忠誠はそのまま俺様の価値となる。これからも俺様の右腕として頑張ってくれ。
それに引き換え――
「翼王!」
「甘い!」
苛烈に攻撃を仕掛ける鳳。こいつは実力だけなら評価できるのだが、如何せん頭が悪くてな。
この俺様への忠義を示さないとか、バカ以外なんて言えばいいんだ?
(他の部下共は鳳の手下と戦闘中か。いざとなれば俺様が力を解放すればいいことだし、まずは様子見といくかな)
時間なら、まだあるはずだしな。何せ、この一戦は征獣将が俺様に手柄を与えるためのもの。多少まごついたくらいで邪魔など入るわけもないし、ここは我が一族最強を決める戦いを見物させてもらうとするか……。
◆
(……まずいね。アンデッド軍団に裏切り兵に加えて、こっちの防衛網の穴を狙うように魔獣王軍のモンスターが展開し始めている。それに対してこっちの主要戦力は……現在レオン君が消息不明で、ミス・メイがアンデッド軍団の抑え。オオトリさんが裏切り兵と交戦中で、その他の戦力は第一陣との戦闘で消耗中。弟子組はフィーリア、ナーティアが戦闘不能、カーラがダメージの回復中で転移により帰還したアレスは呪いや毒を受けていないか検査中。唯一元気なのはマクシス一人だけど、他の戦士と同じく疲労が溜まっている。敵の兵力を甘く見ていたか? 消耗を押さえた省エネ戦闘を基準にしていたのに、それでも足りない数の暴力が可能とは……)
元々、敵が数を武器にする能力を有しているのはわかっていた。だからこそ使い捨ての駒相手に消費しきらないよう作戦を立てていたんだけど、これは参ったね。
数で劣るのは仕方がないにしても、思ったより質に差がなかったか。もっと楽に雑兵程度なら狩れると思っていたんだけど、一匹一匹の強さが想定よりも少しだけ高かったのが響いているね。
(あのレオン君の謎の技で一気に数を減らせたと浮かれたのが間違いの始まりだ。まさか何の問題もなく同数以上の援軍を寄こすとは……)
レオン君が放った光の流星群のおかげで、一時戦線はこちらの圧倒的有利となった。
しかし、息をつく暇もなくまた増援が追加されたのだ。それも、今までよりもほんのちょっとだけ強い集団が。
少しぶつかった程度では気づかない程度の差、しかし長引けば致命的になるという絶妙な強化が施されていたのが計算ミスの元だ。
平時では少し手を抜き、本番で本気を出す――なんて初歩的な作戦に気づかなかったのは僕の責任だ。戦場の高揚のせいで誰も気に止めなかったからこそ僕が気づかねばならなかったのに。
「……今の戦力で集結しているモンスター軍団とこちらの兵団をぶつけても犬死にさせるだけか。戦線を下げて回復に徹するのがセオリーだが、相手は追撃の専門家とも言える獣系モンスターの集まり。身体能力で根本的に負けている以上ただ下げても後ろから食われるだけだな。となると……」
作戦を練る。総大将であるレオン君がこの場にいない以上、全ての兵の命を預かっているのは僕だ。
その責任を……その役目を信じて預けた信頼に応えるためにも、120%の働きが求められるんだから。
「現在の温存戦力は僕とボーンジか。ボーンジは多人数を相手にするのには向かない剣士であり、この場でのサポートこそが最大の貢献となる人材。となれば、僕が出るのがセオリーか……」
英雄とは一騎当千を地で行くものであり、ボーンジもまたその領域にいるものであることは立場上確認している。
しかし、何事にも相性というものはあるのだ。仮に敵魔獣が千匹纏めてかかってきたとしても、レオン君にミス・メイ、ボーンジなら軽く殲滅できるだろう。
しかし、敵が彼らを無視して直進するという場合は話が変わる。敵を一人殺す間に他の敵が歩を進める。それを繰り返すだけで手の届く範囲にしか攻撃できない前衛戦士は守りきれなくなるのだ。
もちろん個々にそういったケースに対応するための広範囲攻撃は持っているが、それは所詮多様性こそが本領である魔術師には遠く及ばない。彼らはあくまでも己の肉体こそが主であり、魔力主体の広範囲攻撃は副でしかないのだから。
そもそも敵は広範囲に攻撃されても問題ないと豪語できるほどの数で攻めてきている。消耗の激しい範囲攻撃でいくら吹き飛ばしても、単体攻撃と大して変わらないって結果になりかねないほどだ。
現に、今アンデッド軍団の相手をしてもらっているミス・メイは劣勢らしい。彼女自身は無傷だが、文字通り不死身のアンデッドを完全に破壊するのは時間を必要とすることもあり徐々にこちらに近づいているそうだ。
元々僕らの中でも特化型であり、対応力は低いからな彼女。本来なら攻撃こそが本領であり、もっとも力を発揮するのは敵の大将クラスとの直接戦闘だ。今はまんまとその逆を突かれているわけだね。
だから、ここは僕が出るのが最善解だ。障壁を張りつつ攻撃することで足止めと殲滅を同時に行うくらい並みの魔術師でもできることだし、多人数を相手取るのは僕の方が向いている。
ちょーと担当する数が多いのと、流石に戦闘に集中しなけりゃならない分指揮を取れなくなるのが最大の気がかりだけど……このまま後手に回るよりはましかな。
「……よし、僕が出ることにしよう。ミス・メイが相手にしているアンデッド軍団を含めて地上の敵の半分くらいは僕が面倒を見るよ」
「大丈夫なんですかな? 感知魔術が捉えているだけでも10万くらいいそうですよ?」
「本当にね。いったいどっからこんな数を出しているんだか……もしこれが個人の能力による召喚だったりしたら、改めて種族格差を感じてしまうよ」
現在把握している敵兵の数、最低20万。
自軍戦力、冒険者1000人、騎士500人、鳥人族一般兵2万人と精鋭兵1000人。弟子組含めて準英雄級50人と英雄級5人。内怪我、死亡、疲労などで戦線離脱しているもの約5000人で、短期間で復帰が望めるのはその4分の1ほど。希望的観測は除いて今動かせるだけで考えれば全部合わせて1万7000人ってところか。
敵の布陣と地形情報から考えて僕一人で10万くらいは相手できるから、実質5倍以上の戦力差で喧嘩しないといけないわけね。
うん……
(これ以上敵の数が増えなきゃ規格外戦力といくつか用意しておいた罠でなんとかなると思うんだけど、それは希望的観測だろうなー)
こっちに数の比較を根底から否定する規格外がいるように、向こうにも当然それはいる。
果たして一人で10万の兵に匹敵……凌駕する怪物は、敵の中に後どのくらいいるんだろうねぇ……。
「……よし、僕も補助するからミス・メイと僕との位置を空間術で入れ換えてくれ。代わりに戻った彼女には待機してもらい、敵陣の大将格が発見でき次第転移で奇襲を仕掛けるように伝言を頼むよ」
「わかりました。では――」
「なるべく早く終わらせるつもりだけど、いざってときはお願いね――」
僕自身もこれで戦場入りだ。この戦……こっちの陣地が制圧されるのが先か敵の大将を撃破するのが先かって戦いになるだろう。
……本当、早く戻ってよねレオン君。君一人いるかいないかで戦力大分変わるんだからさ……。
世界一意味のない戦力比較(人数比べ)かもしれない。
ぶっちゃけ主戦力勢は『同格が出てこない』って条件なら一人で国滅ぼすことも不可能じゃないし……。
なお、本章のボス征獣将は個人の能力を見るだけで確実に人類滅亡の危機です。




