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【番外編完結】他力本願英雄  作者: 寒天
風の民の大陸
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第134話 虹の樹

タイトル変更しました。

「……他所の大陸からの使者?」

「はい。先立って現れたのは、異形の翼を持つ男と羽なしが二人です」

「……怪しすぎないか?」


 軍の仮拠点として建造した砦の一室。そこで私は上官であり最高責任者である隊長に物凄く怪訝な声を出されていた。

 獣共との戦いの後に行われる浄化任務の際に、私は三人の不審人物――自称南の大陸の民と出合った。そのことを本人の希望もあり、隊長の(おおとり)殿に報告したのだが……当然と言うべきか、これ以上ないくらいに胡散臭いと思われているらしい。

 現在この砦に招待――当然監視付き――している三名がいる以上私が嘘をついていると思われることはないだろうが、彼らが嘘をついていると思うのは当然すぎる話だ。

 この大陸へとやってきた移動手段である船の存在を語っていたので、それが確認できれば多少は変わるかもしれないが……とても信じられないことに変わりはない。


 だが――


「信じられるかは別にして、邪悪なものではないと思われます」

「根拠は?」

「件の三人を発見したのは先の戦場だったのですが……その直前に精霊竜様による浄化が行われていたのです」

「なるほど、邪悪な輩ならまとめて浄化されているはずだということか」

「はい。邪悪でなくともかの風を耐えきったのは少々信じがたいものがありますが……精霊竜様が敵視する存在ではないのかと」


 精霊竜様は我らの大陸の守護者。別段我々を守ってくださるわけではないが、この地が汚されるのを許しはしない。

 その精霊竜様が見逃したのだ。あの浄化の烈風を耐えきるほどの強者に関心を示されないとは考えにくいので、恐らくあの獣共の手下ではないのだろう。

 羽なしでありながら本当に強者なのか、あの異形の翼は間違いなく我らと異なる存在であるといった懸念と疑問はあるが。


「精霊竜が敵視しないからといって我々の敵ではないとは限らないのだが……ゴホッゴホッ!」


 鳳殿は話の途中で咳をした。それ自体は何のこともないことなのだが……やはり、そうなのだろうか?


「すまん、失礼した」

「いえ、お気になさらず」

「……続けるが、今はその者達を信じる根拠も敵と見なす根拠にも欠ける。まずは話をすべきだろうな」

「同意見です。……一応、ここに彼らの話をまとめてありますが、あまり深くは突っ込んでおりませんので参考程度に」

「そうか、ご苦労」


 鳳殿へ、この虹の樹へ彼らを案内するまでに聞き出したことを纏めた書類を渡す。速度重視で報告書というよりはメモ書きに近いものだが、これでも努力したのだということは認めてほしい。

 鳳殿はしばらく渡した資料を読んでいたが、どうにも反応に困っている。やはり情報が少なすぎるのだろうか。


「……明らかになにかを隠している……と言った感想だな」

「はい。どうも腹を割って話そう――といった様子ではありません」

「こちらを警戒しているのか、あるいは何らかの工作か……しかしこれでは怪しんでくれと言っているようなものだし、魔物共の策謀とは考えにくいか?」


 鳳殿は少ない情報から相手の姿形を想像するように呟く。だが、やはり確信は持てないらしい。

 あの資料に書かれたこと……つまり『れおんはあと』とか名乗った異形の男が語ったことは至極単純明快。魔物共の驚異に対抗すべく、同盟を結びたいと思っている。だが詳しい話の前に、連れてきた仲間と船をこの地に入れて欲しい……だけだ。

 同盟と言っているが、それが真実である保証は皆無。もし敵の策略であったら――と考えるのは脳みそさえついていれば当たり前のことであり、普通その疑念を晴らすべくもっと多弁になるべきだろう。ここまで直球で言われると、逆に裏がないのではないかと思ってしまうくらいに単純明快過ぎて困ってしまうのだ。

 もしそれを狙っているのだとすれば、大層な策謀家と言えるかもな。


「……やはり会ってみるしかないか」

「よろしいので?」

「ああ。彼らの言葉が真実であれば、確かに願ってもないことだ。今は少しでも戦力が欲しい」


 鳳殿は何かを飲み込むような僅かな葛藤の末、そう口にした。

 全ての戦力を掌握する隊長として、自分達以外の戦力を当てにするのは屈辱であろう。それでも必要なものは必要と判断できるからこそこの方は隊長なわけだがな。


「では、俺自らが行こう」

「鳳殿自らですか?」

「本音はともかく、建前だけで考えればそやつらが上位者との謁見を望むのは至極当然。立ち入り許可にせよ同盟締結にせよ、その辺の民間人ではどうしようもないからな。しかし、こんな得体の知れない連中と姫を姫を会わせるわけにもいかん。ならば俺しかないだろう」


 鳳殿はゆっくりと立ち上がり、部屋から出ようと歩き出した。

 確かに彼らの要望を考えれば、否定にせよ肯定にせよ話が出来る人物は限られる。一分隊長クラスの私では絶対に無理……というより、現状の我らの中で正式な返答できるのはただお一人、姫様だけだ。

 しかし姫様を危険に晒すわけにはいかない以上、代理人を出す他ない。王族代理として認められるとなるとやはり数は絞られるが、“雄々しき翼”のリーダーである鳳殿ならば……そして事実上の虹の樹リーダーでもあるこの方ならば十分その資格を有しているといえる。というか、この方がだめなら他に誰がいるのだという話だ。


「……仮にも他種族の指導者代理となれば、あまり貧相な格好では我ら鳥人族(バードマン)の沽券に関わるか。俺一人が侮られる程度ならどうにでもなるが、姫様の名に傷を付けるわけにはいかない。まずは着替えからだな」


 矢面に立つ人物として、様々な事情を考えれば鳳殿がもっとも相応しい。ある一点に目を瞑って私がそう考えたとき、鳳殿はふと思い出したように立ち止まり、呟いた。

 確かに、今の鳳殿の服装はお世辞にも政治的な場に相応しいとはいえない。いつでも戦場に出られるよう戦闘装束を纏ったままなのだから。

 隊長である鳳殿の戦闘装束がみすぼらしいわけはないが、連戦に継ぐ連戦でかなり痛んでいる。もちろん破けていたりするほどではないが、よく見るとその鮮やかな紅色の衣には汚れや傷がある。元々が優れた防具であると同時に隊長としての威厳を示す見事な装束であるが故に、小さな傷が目立つのだ。


「俺は一旦着替える。その間にその客人への対応の手配を任せる。ああ、それと客人の下へ向かう前に姫様の下へ許可を取りに行くから、少々時間がかかると思っていてくれ」

「畏まりました。使用人頭に伝えておきます」


 鳳殿は今度こそ言い残すことはないといった様子で一度頷き、部屋を出て行った。私もその後ろについて部屋を出る。

 さて、私は私の仕事をするとしよう。ゴホゴホと小さく咳き込む、鳳殿の不調に目を瞑ってな……。



「……あ、どうもお構いなく」


 俺は都合三度目になる無言の給仕――舌に苦味が残るが決して不快ではない何とも味わい深い緑茶を湯のみに注がれながらも軽く引きつった笑顔を浮かべる。

 正直、気まずい。俺達は今、始めて出合った鳥人族(バードマン)に連れられてやってきた彼らの国――いや、樹に来て秘密裏にではあるが立ち入りを許され、話ができる人物を待っているところなのだが……何か怖いのだ。

 その原因の一因――窓からの風景を俺は横目でちらりと見つつ、異文化交流の難しさを改めて感じるのだった。


(……ここから落ちたら、流石に死ぬかな……。空飛ばない限りは)


 俺は窓の外に広がる光景――やや目線の下にある雲を眺めてそう思う。

 鳥人族(バードマン)特有の文化として、彼らは巨大な樹木を住まいにする。これは文献調査などではなく実際に今この身を持って体験しているのだから間違いない。多分故郷の学者とかに話せばそれだけで一日中わけわからんこと討論しあう事実なのだろうが、まあ俺からすればそう言う文化なのかと思うだけだ。

 なのだが、それでも俺は驚いた。何せ、巨大樹を改造して住居にするという発想だけはまあわかるのだが、規模がでかすぎるのだ。超太い枝の上に家を建てたり、やや細め――といっても十分太い――の枝に家一軒吊るしたりと、そんな住宅事情なのである。一番スペースとして使われるのは幹をくりぬいた部分であり、そこに何層にもなる木の内部空間で大半の住民が生活しているらしい。

 そんな巨大樹、名称“虹の樹”の高さは計測不能。とりあえず今目の前の光景からもわかるとおり、文字通り雲より高い。別にこの部屋が頂上ではないことから考えるに、マジでこの樹一本の中に国家一つ入るくらいの容量があるのだ。


(彼らにとっては高いところであればあるほど居心地がいいらしいが……俺からすると生きた心地しないな)


 基本的に地に足をつけて生きている俺たちの種族と、天空に近しいところに生きる鳥人族(バードマン)。異文化交流と言うのは本当に難しい。

 しかも――


(このバチバチの警戒心と覚悟……完全に死地にいるよこの人たち)


 この場にいる鳥人族(バードマン)は全部で10名。内、メイド服らしきものを着た給仕が5人、鎧と槍を持った戦士が5人という構成だ。

 その全員が背中から魔力を感じさせる純白の翼を持っているわけだが、それ以上に押さえ込んだ意思がきつい。給仕からは死の覚悟、戦士からは強烈な戦意を感じるのだ。

 これは俺達がいつ暴れだしても押さえ込んでやるって決意と、それに巻き込まれて自分達が死んでも構わないって覚悟だな。警戒されるのは仕方がないとはいえ、この状況ではいくら美味いと言っても優雅に茶を啜るってのは難しい。特に、次の瞬間死んでも構わないって決意に満ちた目でお茶を注がれるのは何かこう、ね……。


 しかも、限界が来て覚醒融合を解除したときから余計にその懐疑に満ちた目が強くなった。

 なんと言うか、理解の外にある珍獣でも見たような顔になったんだよね……。


「このお茶美味しいですよね。茶葉が違う……いや、加工の工程が違うのか……?」

「普段飲みなれない味だけど、これはこれでいいね」


 そんな俺の精神状態を知ってか知らずか、アレス君とクルークは優雅にお茶を飲んでいる。

 アレス君はお茶自体への興味がこの場の気まずさを上回っているらしい。元々得意分野でもあり、最近この子、この前休暇に何を思ったのか王都利き茶選手権だか王都一お茶入れ決定戦だかに出場して優勝してたしな。興味があるのは仕方がないだろう。

 ……何やらとある庶民派喫茶店の看板娘が柄の悪い男に詰め寄られているのに遭遇した後、『この大会で優勝しないとこの店が乗っ取られる~』的な事情を知った果てにそうなったらしい。休暇のたびに面倒ごとに遭遇するのはもういつものことだし、その結果ファンクラブのメンバーが増えるのは恒例行事だからつっこまないが、何で本職に勝るほどの腕を身につけてんだとは言いたい。毎日その腕を振舞ってもらっている立場の俺が言うことではないが。


 それにクルークは……こういう全然リラックスできないお茶会には慣れているんだろうな。元とは言え貴族だし、あの人種は人にストレスをかける天才の集まりだから。


「……間もなく、“雄々しき翼”の隊長である鳳様がご到着です」

「え? ああ、はい」


 やや現実逃避していたら、部屋の入り口辺りで不動の姿勢を見せていた戦士の一人が非常に重々しい口調でこちらへ連絡してくれた。

 雄々しき翼……ここに来る途中で聞いた話によれば、彼ら鳥人族(バードマン)の中でも最高峰の精兵が集まった軍の呼称らしい。

 彼らには、義務として15歳から戦士として3年間軍に所属するという規則がある。その後も軍属を続けるか止めるかは本人の自由意志らしいが、ともあれ鳥人族(バードマン)は男女無関係に全員が軍に所属した経験を持つそうだ。もちろん、一部例外はあるが。

 その中でも自ら戦士の道を選び、更にその才と実力を認められたのが“雄々しき翼”……という話だ。


(精鋭の中での隊長……つまり最強ってことか?)


 南の大陸人の文化に照らし合わせれば、一般軍が兵士で“雄々しき翼”が騎士団となる。見た感じその平均戦力は大分違うようだが……その隊長のオオトリってのは親父殿級ってことになるかな。

 もちろん、その実力がどうなのかは未知数だけど……っと、来たか。


「……お待たせした。私が虹の樹の長代理、鳳だ」

「これはどうも。お初にお目にかかります。私は南の大陸よりの使者代表を務めているレオンハート・シュバルツと申します」


 入り口から入ってきたのは、2メートルを越す身長と、その身体を更に大きく見せる一際見事な翼の男だった。

 衣服は見事なもので……文化の違いか南の大陸で見るものとは全く違うが、金色と赤の糸を使って編まれた着物に近しいその装束は上流階級であると一発で理解させるものだ。

 機能性よりも見栄えを重視しているように見えるが、値段をつけたら庶民の生涯賃金くらい吹っ飛びそうだ。ロクシーが欲しがりそうだな……。


「貴殿らとの出会い、大いなる風に感謝しよう。さて……おい」

「はっ!」


 オオトリさんの一声で、部屋の中にいた給仕と戦士が一斉に壁際へとよった。どうやら少し離れろと命じたらしい。

 これから話し合いになるわけだが……ふぅ。


(……俺の仕事は船と船員、それに俺たち自身の入国許可を求めること。なんだけど……荷が重い)


 話し合い――いや、外交に俺は適していない。だからこそわざわざ戦闘力の低い姫様を危険を犯して連れてきたわけで、それは今更考える必要もない。

 しかし今この場にこられたのは俺を含めた三人だけ。本格的な同盟締結にまで俺が踏み込むわけにも行かない以上、胃が痛くなる思いは仕方がないことだろう。


 ……とりあえず、後々不利になる言質を取られるのだけは避けなければいけない。

 そう何度も言い聞かせられているからこそ俺はほとんど何も喋らず笑顔で詳しい話を回避していたつもりなのだが……この場をどう取り繕おうかな……。



「……それは我々の長にお尋ね願いたい」


 ……れおんはあと、しゅばるつ。いや、発音はレオンハート・シュバルツか?

 聞きなれないし言いなれない名ではあるが、中々に食えない男だ。いくら言葉と言う刃を突きつけても、のらりくらりと核心を話そうとせん。少し踏み込んだことを言えば『それは別の者に聞け』の一点張りだ。

 つまり、より詳しい話をしたかったら最初の要求――結界の限定解除を行いこの者の部下を受け入れろと言っているわけか。中々に強かな男だな。


(……現状では、断固として断る理由も快く受け入れる理由もない。安全策をとれば拒否で、現状の打開を考えれば受け入れと言ったところか)


 どちらにも利点と欠点があるが、今考えるべきなのはこの者達の真意について。これが疲弊した我らへのトドメを狙った魔物共の策略であるか否かを見極めることだ。

 精霊竜の一件を考えれば魔物の仲間というのは考えづらいのだが……一度発現した翼が消失するなどという怪奇現象を起こす生命体を信じるのもな……。


「……ああ、そう言えば、忘れておりました」

「おや、何ですかな?」

「これ、つまらないものですが……」


 レオンハートはそう言うと、小さな少年に手振りで指示を出した。

 あの少年が抱えている荷物をもってこいと命じたようだ。正直あの大荷物のことは気になっていたのだが、とりあえず危険物ではないことだけはこちらの検査で判明している。仙術士たちの【悪意感知】に反応がない以上毒物や爆発物ではないのだろう。

 そんな荷物を自分の隣に置き、レオンハートは中から何かを取り出した。これは――


「お口に合うかわかりませんが、我々の大陸から持ってきた食料品と……医薬品です。こちらの大陸で使えるかどうかはわかりませんのでそちらでも精査してからお使いください」

「あ、ああ。これはありがたい」


 ……食料と薬、だと?

 驚愕しながらも私は巨大な大荷物を受け取り、その中から幾つか手にとって観察する。


(……主に乾燥させたり燻製にしたりと、日持ち優先で考えられた食料ばかりだな。彼らがやってきた距離を考えれば仕方がないことだが……ありがたいことに変わりはないか。今の現状を考えると食料はいくらあっても邪魔にはならない)


 驚愕する高級品というわけではないが、栄養を取るには十分だ。これだけでは種全体からすれば焼け石に水とはいえ、ないよりはいい。

 そして――


(薬の方は、宝石にも等しい価値がある。現状を考えれば今すぐにも使いたい――しかしそれは危険か)


 医薬品不足。それは今我々を襲っている問題のひとつ。それを僅かでも解消できるのなら手放しに喜びたいところだ。

 話によれば彼らの船にはこの数十倍の量を積み込んでいるらしいし、それだけでも彼らの手を取る価値がある。場合によっては力で奪いとってもいいくらいだ。


「……どうされましたか?」

「いえ、何でもありませんよ」


 レオンハートはこちらの動揺を悟ったのか、少し訝しげだ。

 ……さて、どうしたものかな。多少怪しくとも現状を考えれば断るという選択肢は無くなった。後は後顧の憂いを断つべく敵対して奪うか、相手の手を取って協力関係を結ぶかだが……うむ。


(手を取れば戦力も増え、場合によっては定期的な支援も期待できる。敵対するのなら彼らがエサをチラつかせてこちらを釣ろうとしている敵と出合った場合のリスク回避……。悩ましいな)


 万が一を考えなければ共闘が最善なのだが、俺は今長代理なのだ。指導者として、安易な希望に飛びつくわけには行かない。

 そもそも医薬品はともかく、戦力として翼を持たないこの者達が役立つのかも不安であることだし……ああ、そうか。


 ――試せばいい。こやつらが腹に何かを抱えた敵なのか、背中を預けるに足る戦士なのかを


「……一つ、提案がある」

「何でしょう?」

「貴殿らは我々と共闘し、魔物共と戦うのが目的。相違ないですかな?」

「ええ。その通りですよ」

「でしたら……まずはお互いの力を知るのはどうでしょう? そちらは三人。ならばこちらからも三人選出しますので……親善試合、ということでは?」


 戦士は戦士を知る。その戦いを見れば、嘘偽りで身を固めた詐欺師なのか盟友を求める勇者なのかくらいはわかる。

 加えて、同盟を結ぶ価値がある強者であるかもな。


「……親善試合、ですか?」

「ええ、ルールはシンプルに、こちらが用意した武舞台の上でのタイマン。敗北条件は武舞台からの落下か降参。武器の使用その他もろもろは自由で、殺しはなし。いかがです?」

「……わかりやすくていいですね」


 レオンハートは思った以上にこちらの提示した条件に食いついてきた。やはりこの男の本質は腹芸を好む策略家ではなく戦士か。

 ならば、こんな場所で口を動かすよりも矛を交えた方が早かろう。戦士の選出はそれなりに気を配らねばならないが……最近の暗いムードを払拭するイベントにも使えるかもしれん。


(彼らが強ければ『強者の味方が現れた』。弱くとも『雄々しき翼は健在』とアピールできる。民を元気付けるには丁度いい)


 内心でちょっとせこいことを考えつつ、レオンハートとの戦いを決定する。

 別にどちらが勝ったら同盟締結と言う話ではないが、やはり負けたくはない。今までの硬直した空気は一瞬で霧散し、燦燦と輝く戦士の眼を見せる男に思わず笑みが浮かぶ。

 これは久しぶりに、楽しいことになりそうだな……。




















「……え」

「どうだ? ここが“雄々しき翼”が普段使う訓練場――葉上天空闘技場だ」


 レオンハートたち三人を案内したのは、我々が好んで使う決闘場。

 虹の樹の中でも比較的高高度に位置する丈夫な葉の上であり、辺りを漂う雲が視界を遮り、吹きすさぶ風が身を斬り裂く。

 この高さと風が癖になると大人気の闘技場だ。下手な金属よりも頑丈な葉とは言え、下手をするといつ落ちるかわからない快感がたまらないのだ。

 きっと彼らも喜んでくれることだろう――


「……え?」

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