表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【番外編完結】他力本願英雄  作者: 寒天
上級騎士のお仕事
108/241

第97話 最強の冒険者

「えー、本日はお集まりいただきありがとうございます」


 かなり大きい広間。本来はダンスパーティとか開くために使われるために作られた空間に、雰囲気だけで強者であると理解させる戦士たちが集まっていた。

 この人たちは全員冒険者。騎士団に属することもなければ兵士になることもなく、個人としての力でこの世界を生きている者達だ。

 特に資格も試験もないから誰でも名乗れる肩書だが、だからこそ生き残るのが難しい。正真正銘実力がなければ野垂れ死にするしかないって業界だからな。俺も騎士としての給料は貰っていたが、ぶっちゃけ生き方は冒険者に近かったからそれはよくわかっている。


 ここに集められている中には、その一握りの本物たちすら混じっている。恐らくは中級騎士以上、中には上級騎士と同等かそれ以上の者もいるってくらいの有名どころまで参加しているのだ。

 ロクシーがどんな手を使ったのかはわからないが、よく集まってくれたと思う。それだけの実力があれば仕事には困っていないだろうにな。


「これより、新しく立ち上げる新組織についての説明を行います。質問等は多々あるでしょうが、まずは最後まで説明をお聞きください」


 俺は前置きをした後、こっちを半ば睨みつけている冒険者達を相手に説明を始める。

 組織の目的、管理体制、組合員への保障や報酬などなどいろいろ話すことはあるが、それらについてはロクシーのほうで草案を作ってもらっている。俺はただ貰った資料を読み上げればいいだけだ。


「まず始めに――」


 予め練習した文章の朗読を行いながら、俺はこの会合の真の目的について思いをめぐらす。


 俺がこの組織を作る目的は、冒険者の横のつながりを作ること。それによって全体の底上げをすることだ。

 彼ら冒険者は最大でもチーム単位で活動し、情報を共用することなく――むしろ隠しながら生きている。と言っても、それは別に彼らの心が狭いとかケチだからとかそんな話ではない。彼ら冒険者にとって、自分達の力を高める情報は命に等しいものなのだ。

 冒険者の仕事は水物。仕事が得られるかは運に大きく左右され、さらに仕事を見つけたら今度は商売敵に勝つ必要もある。そのためには他のチームにはできないことができるってアピールが必要なわけで、自分達の虎の子を隠すのは当然って話なのだ。

 しかしそれでは成長がない。互いの知識を出し合い、共有するだけで冒険者達の技能は飛躍的に上昇すると誰もがわかってはいるのに各々の利益を考えればできないってのが現状なのだ。


「――そう言った現状を、我が組織に属した冒険者は改善することができます。その方法とは情報の共有を行うことで発生するデメリットの排除――」


 マキシーム商会をスポンサーに据えた冒険者組織。それが実現できれば情報の共有、管理ができる。


 現在、武力が求められる問題が発生したときには騎士に助けを求めるか冒険者に依頼するかのどちらかの手段をとる必要がある。

 その中でも特に難易度が高いと思われる案件は精鋭部隊である騎士に回ることが多いため、冒険者達の主な仕事は騎士の手が回らない雑魚討伐や魔物の生息地帯を突破する必要のある配達辺りが主流だ。

 その仕事を取るのはもちろん、冒険者各自で足を使っての売り込みだ。もしくは知名度があること前提だが、依頼人側から直接拠点にしている街に依頼が持ち込まれることもある。

 しかしいずれにしても、足を運んだタイミングで依頼があるとは限らないし、逆に依頼が持ち込まれても冒険者が外出していないとも限らない。命賭けて街から街へ移動したのに骨折り損――なんてケースも珍しくないし、最悪依頼するための旅の途中で依頼人が命を落とすケースも見られるくらいだ。


 そんな不都合を、冒険者組織を作ることで解消する。依頼を探すのを組織で担当し、冒険者達はよりよい環境の中で自分に都合のいい依頼を選ぶことができるようになる。

 そう、無理に情報を隠して少しでも食い扶持を増やすなんてことをしなくとも、自分の得意分野だけで生きていける土壌を提供するのだ。


「我々は通信魔法を使ったネットワークを形成します。各地から寄せられる冒険者への依頼を一箇所に集め、集計した後所属する冒険者へと紹介する。こうすることで依頼人は安全確実に冒険者へ自らの要望を届けることができ、冒険者は自分の資質と実力に合わせて最適な依頼を選ぶことができるようになります」


 通信魔法自体はそこまで珍しいものではないし、実際そうして大きな町と連絡を取り合っている村なんかもある。通信魔法で商会に食料品や衣服なんかの注文を行っている辺境も多いしな。

 しかし、現段階では『冒険者に相談する施設』は存在していない。冒険者同士が協力しないというものあるし、それほど強大な武力を束ねる組織を作ることを国が許可しないってのもある。後者は既に解決しているから、後は冒険者を説得するだけなんだけどな。


「各町や村への通信具の用意はこちらで行いますので、皆さんへの負担はありません。実際に配布する際には組織からの依頼と言う形でお願いすることになるかもしれませんが、その場合も正式に依頼料は支払います」


 この辺のごり押しはマキシーム商会がバックにあるからできることだな。

 冒険者組織はマキシーム商会の傘下ってわけではないが、スポンサーである以上それなりに融通を利かせられる。それだけの資金を出すだけの価値が冒険者組織にはあるのだ。


 今までは商会で保有している戦力では足りないって時に街から街への行商を行う場合、一々腕の立つ冒険者を探し回っていた。

 しかし組織があれば仕事を探している冒険者をすぐに見つけられるし、入手困難な商品の原材料を手に入れるのも遥かに楽になる。あくまでも金の関係であり依頼人としての立場ではあるが、商会は今までの常識では考えられない自由戦力を手に入れることになり、これまでとは比べ物にならない規模の商売が可能になるだろうからな。

 その辺がこの話にロクシーが乗り気な理由だ。こんな物騒な世界で上を目指すのに辺り、武力があって困ることはない。

 世の中は結局、金と力がなければどうにもならないって話だ。


「更に組織に加入するメリットとしては、こちらで送られてくる依頼の事前調査を行うことが可能であることも挙げられます」


 俺は更に話を進め、次のメリットを説明する。今度は依頼の健全性の話だ。


 冒険者への依頼が常に公平で良識的であるとは限らない。

 一般人に比べて財を持っている――魔法の込められた装備品一つで一般人の年収に匹敵することもざら――冒険者を罠にはめ、所持品を略奪するために偽の依頼を出すものも珍しくはないのだ。

 その辺の見極めも現段階では冒険者各自でやっているわけだが、やはり多くの冒険者が詐欺師の罠に嵌っている。経験豊富な冒険者なら大丈夫――なんて考えは甘いってのは周知の事実ってくらいには被害が出ている。相手もまた経験豊富な詐欺師なのだから当然って話で、ここに集まっている冒険者達だってこの問題には常に危険を感じているはずなのだ。


 事実、読み上げられる俺の説明にかなりの数が頷いているし。


(それに、いざ依頼に出向いたら聞いてた話と全然違うってのもよくある話だしね)


 依頼人に悪意がなくても、偶然という不幸な事故が起こる事はよくある。

 例えばただのゴブリン討伐だったはずなのに、気がついたら上位の吸血鬼と死闘を繰り広げる破目になったりとかね。


 しかしその辺の問題は“影”の皆さんが頑張ってくれれば解決する。

 戦闘能力は皆無でも情報収集能力に特化した彼らが本気になれば周辺に生息しているモンスターの情報を集めるくらいは楽勝だし、これだけでも依頼達成率と生還率に大きな貢献をしてくれることだろう。

 いつ死ぬかわからない世界に身を置くものとして、これに乗らない理由はないはずだ。

 それに、仕事もなければ能力もないって一般人たちが最後に選ぶ職業って観点から見れば、戦闘力は低くとも訓練次第で身に着けられる“影”の技術は就職先として有力だろう。現役の“影”は情報収集関連の才能豊富な人が多いとは言え、簡単な地理調査くらいなら訓練次第で誰でもできるってお墨付き貰ってるし。


「また、依頼料に関しても公平に扱うことができます。今までの依頼料はある種依頼人と冒険者の間の匙加減で決められていたわけですが、組織で一括して扱うことで安定させることが可能となります。当然、依頼料の踏み倒しなんて問題への大きな抑止力にもなりえるでしょう」


 相手の足元を見て依頼料を値切ったり踏み倒されたりなんて経験、冒険者なら誰でもあるだろう。冒険者の大半が学のない人間であることを見越して不当契約を結ばせようとする悪徳商人なんて珍しくもない。

 まあ逆に言えば冒険者側が弱みに付け込んで依頼料をぼったくることもできなくなるわけだが、そんなことしたい奴はこっちからお断りだ。



 そのほか、俺は事前に考えられていた『組織に加入した場合に得られるメリット』について語っていく。

 当然そこには依頼の仲介料として組織がいくらか抜くとかそんな話も含まれるが、いつくるかわからない仕事をただ待ち続けるよりは遥かに美味しい話に聞こえていると思う。

 そう――俺の見る限り、説明段階で集まっている冒険者の8割はかなり乗り気になってくれたと思う。彼らも死にたくはないはずだし、手間を省けるのならそっちの方がいいだろう。元々冒険者ってのは学のない者がなる職業――読み書き計算ができるのなら、社会的地位がある騎士って訳でもないのにわざわざ命賭けた戦場に立とうなんて普通は思わない――ってのもあり、交渉下手のせいで損している人多いからな……。


(……まあ、ロクシーが考えたお互いに利益のあるプランに早々問題があるとは思えない。想定される質問への対応法とか、もう見るのも嫌になるくらいの分厚い冊子渡されてるし)


 とにかく、利益を優先して考える相手ならロクシーの独壇場だ。その手のことを考えさせたらあいつの右に出る人間は早々いない。

 でもまあ、俺たちの本当の目的は――そんな利益や金勘定で動く奴らじゃないんだけどね。


「……話は終わりか?」

「ええ。説明は今ので最後ですよ」


 全ての話が終わった後で、一人の男が声を上げた。他の男たちとは質が違うオーラを放っている強面の男だ。

 ……やっぱり来るよな。と言うか、来ないと困るんだけども。俺達がこの集まりを開いた真の本命が食いついてくれなきゃ、この集まり意味なくなっちゃうからな。


「そうか。ならば、最初に言っていたように俺たちからも言わせてもらおう」

「ええ。質問反論批判なんでもどうぞ」

「ならば言おう。……俺たちのチームは、お前の語った組織構造だのメリットだのに何の興味もない。わざわざ仕事のお膳立てなどしてもらわずとも俺たちには俺たちの顧客がいるし、自分の腕を今更疑うほど未熟でもねぇ」

「なるほど」

「俺達が――“四獣”が求めているのは金じゃねぇ。ここに集められたときに聞かされた話だけだよ」


 傲岸不遜に言い放ったのは、冒険者の中でも最上位、言ってしまえば冒険者の中のシュバルツ家やクン家みたいな大御所に相当する冒険者最強チーム“四獣”の一人――事前情報が間違っていなければリーダー格の男だった。

 “四獣”は30人ほどの冒険者が集まって作られたチームであり、言ってしまえば小規模の冒険者組織だ。国から危険視されないギリギリの保有戦力で留めているから今作ろうとしている冒険者組織より規模が小さいが、それでも組織的に活動する“四獣”は今更誰かの手を借りなくても十分やっていける基盤を作っている。今までで稼いだ金だけでもメンバー全員が不安のない老後を過ごすには十分だろうし、まあ確かに俺の語った組織へ加入するメリットはないだろう。むしろ、自分達の商売敵とも言える組織の設立なんて妨害したいと思っているかもしれない。


 それは事前に予想していたことだが……集められたときに聞かされた話ってのは何のことだろうか?


「俺たちはここにくれば人類最強の称号に――シュバルツに会えると聞いて来ただけだ。その組織とやらに参加すれば人類最強に会えると言われてな」

「……ああ、そういうことか」


 日々の食事にも苦労している冒険者達が何故集まったのかは何となくわかっていた。美味しい儲け話があるといえばすぐに寄って来るだろうし、発言元がマキシーム商会なら説得力も十分だからな。

 でも、金では動かない一握りの本物が何故動いたのかは今の今までわかっていなかった。何をエサにして呼び寄せたのかと不思議に思っていたんだけど……エサは俺だったか。


 となれば、うん。律儀で丁寧な対応は必要ないな。冒険者らしく、荒事に携わる武闘派らしく行かせてもらうとしよう。


「それで? 望みは?」

「結論から言わせて貰えば、俺たち“四獣”がその組織とやらに参加すること自体には問題ない。俺たちはそんな組織がなくとも問題ないが、加入すると問題があるわけでもないからな。話しを聞く限り俺たち自身の活動は今までどおりこっちのペースでやらせてもらえるらしいし、意地になって否定する理由は現段階ではない――というのが俺の結論だ。この考えはこの場にいないメンバーにも理解してもらえると思っている」

「……それはありがたいけど、じゃあ入りますってわけじゃあないんだよな?」

「当然だ」


 俺は“四獣”が思ったよりも好感触であることに内心でガッツポーズをとる。

 正直なところ、冒険者として最低限の活動ができている二流勢全員よりも“四獣”一つの方が価値があるくらいだ。

 もし冒険者業界最強の称号をほしいままにする“四獣”が加入してくれれば、他の冒険者達もこぞって参加するだろうと俺たちは思っている。弱者ってのは盲目的に強者に従い、真似したがるものだからな。


 だからこそ他の全てを諦めてでも“四獣”は口説き落とせって事前に言われているわけだが、こりゃあ俺好みの展開になりそうだな。


「俺たちの要求は一つ。この場で“四獣”の戦闘メンバーと戦え。その力が人類最強の名にふさわしいものであるのならば、俺たちはお前の下につこう」

「……上等。わかりやすくて好きだよ、その考えはさ」


 力で序列を決める。何とも短絡的で――実に楽しく明快な方法じゃないか……!



「こんな場所まであるとはな。流石は急成長する商会ってところか」


 辺りを見渡して呆れたように言う双剣士。


「十分なスペースが確保された訓練施設。戦闘を行うにも十分な広さと施設だな。おまけに観客席まであるたぁ驚きだよ」


 一周回って感心したように呟く盾の重戦士。


「でも、本当によかったのかしら。正直、あのシュバルツと正面から剣を交えるって聞いたときはバンシの頭がおかしくなったのかと思ったわよ?」


 俺をやや冷たい目で見てくる魔女。


「実際おかしくなっているんじゃないかね? リーダーは根っからの戦闘狂なところあるし、人類最強と手合わせできる機会なんて早々ないからね」


 初めから諦めたかのように肩をすくめる回復術士。


「冒険者として頂点に立っているといっても、所詮我流。真の強者には及ばない。そんな世間の評価、いつか覆すとバンシいつも言ってる」


 特徴的な訛りがはいった言葉で淡々と話す弓兵。


 この五人に大剣を振るう戦士である俺を加えた六人こそ冒険者チーム“四獣”の中でも強力な個に相対するための最強チーム“赤”のメンバー。

 レオンハート・シュバルツ。若き超越者との戦闘許可を得た後、俺たち“赤”は予め用意されていた訓練場の控え室に案内されたのだ。

 あのシュバルツと矛を交えるのにあたり、チームリーダーとして考えられる最強メンバーを集めたつもりだ。どいつもこいつもイマイチやる気がないというような態度を取っているが、それが戦いの前の緊張を解すジョークであることは皆分かっていることだからな。


 ……そうだ。この弱気はいつものジョークのはずなんだ。そうだろ、お前ら?


「この戦いで勝てりゃあ長年の目的達成。負けても最強の下でその力の秘密を探れる。一石二鳥って腹なのかね、うちのリーダーは?」

「一対一ではなく“赤”のメンバーで挑む辺り、負ける気はないんでしょうね。あたしらからすればいい迷惑だけど」


 ……そろそろ、止めてくんねぇかな。

 生きる伝説に挑戦できるって緊張がでかいのはわかっているが、無駄口もこの辺にしてもらわねぇとな。

 冒険者最強に、弱気は似合わねぇよ。自信と誇りを持って挑むのが多くの冒険者への礼儀ってモンだ。


「お前らその辺にしとけ。事前情報から対策会議は今までに十分やってきたことだから今更確認はしねぇが、油断だけはするなよ」

「……わかってるわよ。最強の一族を相手に、まだまだ若いボウヤとは言っても油断なんてするほどボケちゃいないわ」

「対応レベルは最大――外陸種を相手にするつもりでやるね」

「わかってりゃいい。事実、外陸種の中でも面倒な吸血鬼の力を持っているって話だ。人間相手だなんて思っていたら瞬殺されると思え」

「了ー解」


 ほどよく緊張し、実力を発揮できる精神状態に各々が持っていく。

 これから始まるのは冒険者になり、誰の後ろ盾も得ないまま進んできた俺たちの力を試す戦いだ。

 ……先日刻み付けられた、敗北の刻印を払拭するためのな。


「……あの大ヘビと、どっちが強いんでしょうね?」

「さぁな。実際闘った感想としちゃ、あのヘビより強い奴なんているとは思いたくねぇが……噂じゃシュバルツの方が上らしい」

「そりゃ、挑みがいがあるな。俺達が前に進むには必要不可欠な戦い、ってわけか」


 つい先日戦闘を行った、一体のモンスター。外陸種と思われる巨大な蒼いヘビを討伐してくれって依頼を受けた俺たちは、“四獣”フルメンバーで挑んだ。

 そして――全く敵わず敗走した。強靭な蒼い鱗にこちらの攻撃は全て弾かれ、ヘビの放つ石化の魔眼にこっちは次々とやられ、対策魔法が間に合った面子は単純なパワーとスピードに圧倒された。

 今まで俺たちは冒険者として闘ってきたが、ついに限界を突きつけられたのだ。人間では敵わない圧倒的な種族の力って限界に。


 今までも大陸にやってきた外陸種と戦闘したことはあった。辛勝ではあるが、そんな化け物にも勝利してきたってのは“四獣”の誇りだった。

 それ以外にも、最近活性化しているモンスターたちを無数に倒してきた。俺たちはそのたびに自分の力を再確認し、自信をつけてきたはずだった。冒険者最強のチームって称号に恥じない自分達でいたはずだった。

 だが、それも最近は押されぎみだ。冒険者最強――なんて言われていても、所詮人間。人と魔物の差には抗えず、その決定的な差を蒼いヘビに見せ付けられたってだけの話だ。


 俺たち人間は、個々の能力で魔物に及ばない。それは常識であり、だからこそ俺たちは集団で徒党を組み連携を駆使して奴らと渡り合ってきた。

 でも、弱者にできる精一杯じゃどうにもならねぇ強者もいるって自分達の身体で知っちまったってこったな。


(力は、絶対だった。どんな技も策も、圧倒的な力の前にはただ潰されるばかりだ……)


 小細工を全て無視し、ただ力を振るい蹂躙する強大な存在。攻撃が通らない強靭な皮膚と全てを叩き潰す腕力。ただそれだけで人は蹂躙される。

 そんな化け物相手じゃ、俺たちは無力だ。だが――


「……シュバルツは、個の力で化け物と渡り合っている。その力の秘密――手にできるんなら、なんだってしてやるよ」


 俺は自分の決意を小さな呟きとし、仲間たちと共に訓練場に向かう。

 俺たち以外にも集められた冒険者共を観客として、人類最強に挑ませてもらおうか……!












「6対1か。別に文句はないけど、こりゃ本気の本気でやらなきゃまずそうだな……【モード・吸血鬼(ヴァンパイア)】」


 気合をいれ、フル装備で向かった訓練場。

 そこには、見覚えのある蒼い鱗の鎧に身を包み、かつて大敗した蒼い大ヘビすらも霞む神性すら感じる蒼い刀剣を構える真紅の眼をした魔人が君臨していた。


(………………ぇ?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ