45話 貴豹族の仕業?!
45話 貴豹族の仕業?!
宰相は声を潜める必要はないにもかかわらず、身を乗り出して小声で話し出した。
「実は、新たな噂を聞きました」
「噂ですか?」
「はい。 噂レベルなのですが······10年前、貴豹族の王が代わったのですが······」
「代わった? 何かあったのですか?」
「毒殺されたそうです」
「また?! 貴狼王も毒殺されたと聞いています」
「はい。 当時、貴豹王が毒殺された事が何故か貴猿の仕業にされて、貴豹族が攻めてこようとしたのです」
「今回と似ているな」
「それを止めたのが貴豹の新王だったそうです」
「ではもしかすると毒殺したのは······」
「そうです。 貴豹王の毒殺は新王の仕業ではないかと、まことしやかに囁かれました」
「違うのですか?」
「真相は分かりません。 その事よりも、その新王は白い貴狼に執着していて、白い貴狼を何人も捕えてコレクションにして囲っているという噂です」
「なんだと!! コレクションなどと!! 狂っている!!
そういえば貴豹王は女王様に好意を寄せているように見えた!
だからってコレクションとはどういう事だ!! 許せない!!」」
「ファビオ!! 座れ!!」
宰相に掴みかからんばかりに立ち上がって怒鳴るファビオを制する。 しかし怒りが収まらないようだ。
「宰相さんに文句を言ってもしゃあないやろ! 大人しく座って話を聞こうや」
怒りで全身の毛が逆立ち、牙を剥くファビオをニコロが宥めて座らせた。
俺は改めて宰相に向かう。
「すみません」
「お気持ちは分かります。 これで貴豹族の仕業と確定しました。 貴猿族も女王様奪還に出来る限り力になりたいと思っております。 すでに貴狼国への共闘協定の作成に取り掛かっております」
······いや······何かがおかしい。 普通に考えれば貴豹王の仕業だろう。 しかし何かがひっかかる······
「待ってください」
「なんですかなケント様」
「なぜだか証拠に踊らされている気がします」
「証拠が示しているのですから、当然の事でしょう」
「始めは貴猿族に向けて、その次は貴豹族に向けて、分かりやすく証拠が揃いすぎています」
「我々が調べた結果が示したのです。 それ以外に考えられないでしょう?」
「何を迷っておられるのかがわかりません。 直ぐに助けに行かねば、間に合わなくなりますぞ!」
宰相の言葉に将軍が被せるように怒鳴る。
ゴリラの将軍は短気なようだ。
ちょっとお待ちくださいと、ヴィート先生が割って入った。
「宰相殿、将軍殿、もう少しケント様の話しを聞いてみた方がよろしいかと思います。 貴狼族の会議でも貴猿国攻撃が決まっていたのを止めたのはケント様です。 何か御考えがあるはずです」
「し···失礼した、少し興奮しすぎたようだ。 それでお考えとは?」
「はい。 なぜ翼竜が貴豹王の言いなりになっているのかはわかりませんが、何か事情があるのかもしれません。 翼竜が貴豹王の命令に従っているとしましょう。 ではなぜ翼竜は東に向かう姿を見せたのでしょうか?」
「それは、貴豹国に帰るために······」
「翼竜なら貴猿族に見つからないように飛んでいく事は容易いはずです。 なのにわざわざ姿を見せたという事は、我々が苦労して手に入れた証拠だと思わせるためではないでしょうか」
将軍と宰相は顔を見合わせる。
「そして都合よく白い貴狼の噂話が出てくるのもおかしいと思うのです」
「しかしケント殿、貴豹王が女王様に御執心だという噂があるのは本当ですし、そう見えました」
「ファビオは会った事があるのか?」
「チラリとですが何度か」
「うん、ファビオ。 それをうまく利用したのかもしれない。 何せ俺たちの周りには貴豹王の事を詳しく知る者はいないからな」
「そう······かもしれないです」
「今回は貴猿の王様の事をよく知っているヴィート先生をたまたま知り合いだったから頭から疑う事がなかったが、貴豹王の事は知らない。
だからといって白い貴狼をコレクションにしているなどとバカげたことをしていれば、いくら貴豹国の事でも噂は入ってきそうなものじゃないのか? 女王様に御執心だという噂のように」
「そう言われればそうですね」
「どう思われますか?」
俺は将軍と宰相を見たが、二人も納得の表情をしてくれている。
「ケント様の御考えはごもっともです。 ではこれからどうすれば良いとお考えでしょうか?」
「もちろん、貴豹国に行ってみます」
ファビオとニコロ、そしてヴィート先生とノエミちゃんも頷いてくれている。
俺たちを見て宰相たちは頷く。
「さすが人間族の御方です。 感服いたしました。 王様には私の方からお話をしておきます。 貴豹国に入れるように通行証を準備できると思います」
そう言うと、宰相と将軍は立ち上がった。
「晩餐まではもう少し時間がございますので、申し訳ありませんが、ここで暫くお待ちください。 失礼いたします」
そう言って二人は出て行った。
◇
次は貴豹国だ。 初めてこの国に来た時に襲われた経験がある。 暗くて鬱蒼とした森のイメージだ。
「貴猿国にはすんなりと入れたが、貴豹国には通行証がないと入れないのですか?」
「かなり閉鎖的な国なので、通行証無しでは、門前払いされますね」
「ヴィート先生は貴豹国に行ったことがあるのですか?」
「一度だけ若い頃に。 しかし貴豹族は貴猿族にあまりいい感情を持っていないので、長居は出来ませんでした」
「貴狼族でも貴猿族に差別的な態度を取る者がいるほどですから、仲が悪いと聞いている貴豹族ならなおさらでしょうね」
ファビオとニコロは下を向いている。 二人は何も悪くないのに、申し訳なく思う優しさが嬉しい。
そんなファビオが遠慮しながら口を開いた。
「あのう先生、先ほど宰相殿が通行証を出してくださると仰っていましたが、貴猿国のよりも国交のある貴狼国の通行証の方が動きやすいと思います。 ですから報告がてら一度貴狼国に戻ってはどうでしょうか?」
「その方がいいかもしれませんね。 さほど遠回りにもなりませんので一度戻りましょう」
という事で、貴狼国に一度戻る事に決まった。
◇◇◇◇
晩餐の準備が整ったという事で案内されたのは、200~300席ほどもある結婚式場のような巨大ホールだった。
国王と王妃の横に座らせられた俺たちは、一人ひとり紹介された。
「ご存じの方も多いと思いますが、昔、国王様の指導局に在籍されていたホレケーゼ・ヴィート殿とアメート・ノエミ殿。 現在貴狼国に滞在されています」
ヴィート先生とノエミちゃんが頭を下げると、パチパチと拍手が起こった。
「お隣は、貴狼国の双剣の鬼神といえばご存じの方も多いと思います。 インザーギ・ニコロ殿」
それを聞いてザワザワしだして、おぉぉぉ~!!という言葉と共に、拍手が起こった。
「次の貴狼族の御方の噂もみなさんご存じだと思います。 奇跡の剣士、サルバトーレ・ファビオ殿!」
再び騒ぎ出した。 わぁ~~という歓声と拍手と共に、ファビオの顔を見ようと立ち上がっている。
「最後に······」そう言うと、会場がシンと静まり返った「この御方はご存じの通り貴猿族ではありません。 伝説の人間族! クラキケント様ですぅ!!」
わぁぁぁ~~!! と言う歓声とともに、割れんばかりの拍手が起こった。
その後もピューマの話しや強盗の話しと、ジャンシャード国での警察消防隊を創設した話まででてきて、会場を沸かせた。
豪華で美味しい料理を堪能した。
事情を知らない貴猿たちに「是非とも御案内いしたい場所がございますので、もう数日御滞在ください」と何度も引き留められたが、丁寧にお断りをした。
そして俺たちは急いで貴狼国に戻ったのだった。
誰かが戦争をさせようと仕組んだことのようだ!
( ̄□ ̄;)!!




