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42話 消えたファビオ

 42話 消えたファビオ




 詰所の中で事件の経緯をチンパンジー(キエン)の店員が説明してくれている。

 付け足しや、訂正があれば言うようにと言われたが、特に間違いもないので黙って聞いていた。



 その時、ダダダッ!と、走ってくる足音がして、誰かが詰所に飛び込んできた。


「ケント様ぁ!! ケガはしてへんのか?!」


 ニコロだ。 入ってくるなり俺の肩を掴んで振り向かせ、ケガがないか確かめる。



「大丈夫みたいやな」

「聞いたのか?」

「貴猿が4人の強盗を投げ飛ばして捕まえたって聞いたから、もしかしたらと思たんやけど、黒い貴狼と一緒やって聞いたから、これは絶対ケント様やと思ったんや。

 ケント様のおるところには必ず事件が起こるやろ?」


「おいおい。 ニコロまで俺が元凶(げんきょう)のように言うのか?」

「そういう訳とちゃうけど······」


 ふと気が付くと、兵士たちが立ち上がって剣を胸に当てている。


「ニコロ、みんなお前に会うのを楽しみにしていたようだぞ」

「俺に?」


 敬礼している兵士たちを見て驚く。


「なんでや。 俺を知ってるんか?」

「もちろんであります。 双剣の鬼神と奇跡の剣士に、伝説の人間様が一同に揃うなど、夢心地であります!」


「だそうだ」

「ハハハ······」 


 ニコロは乾いた笑いでテレを誤魔化(ごまか)していた。



 ◇



 取り調べも終わって詰所を出た時には夜の7時を過ぎていた。 宿ではヴィート先生とノエミちゃんが心配していた。


 

「遅くなって申し訳ありません」

「もしかして、強盗なんか捕まえていませんよね」

「何で知ってるんですか? さすがヴィート先生やな」


「やはり······噂でもちきりでしたよ。 それより、謁見の申し込みをしたのですが······」

「まさか会ってくれへんのとちゃうやろな」


「その逆です。 通例では早くても2~3日かかるのですが、明日の11時に許可をいただきました」

「えっ? なんでや」


「10時半にこの宿の前まで迎えを寄こしてくださるそうです」

「特別待遇やな」


「それで、みなさんの収穫は?」

「俺はさっぱりや」

「俺も何も見つかりませんでした」


 ニコロとファビオはシュンと耳を垂れる。


「俺が聞いたところでは、ここ数日で翼竜を見た者はいませんでしたが、20日前に見た者がいました」

「翼竜をですか?」

「はい」


「20日と言えば、女王様が誘拐された日の10日近く前ですね」

「ケント様が見つけた翼竜ではありませんか?」

「うん。 時期的には近いが······同じ翼竜なのだろうか?」


「わかりませんね。 貴猿国王が関わっていない事がはっきりすれば助けを求める事もできるのですが······」

「翼竜がこの国に降り立っているか、または女王様の臭いがあるかどうかだな」

「俺たちの鼻にかかっているちゅう事やな」


「翼竜がいるなら高い塔の上とか、女王様を隠すなら地下牢の中とか、だよな」

「どちらも俺たちが臭いを嗅ぐために入る事すら出来ない場所です」

「臭いさえ嗅げればわかるんやけどな」

「そうですね」


「······」




 俺たちは遅めの夕食を食べて、それぞれの部屋に入った。




  ◇◇◇◇




 朝方、ドンドンドンと扉を叩く音で目が覚めた。


「ケント様」


 ニコロだ。 急いで扉を開ける。



「ケント様、ファビオがおれへん」

「どういう事だ?」

「夜中の2時頃に起きたらファビオがおれへんかったんや。 そのうち戻るやろうと思ってたんやけど、いまだに戻ってきてへんのや」


 今は5時だ。 ヴィート先生も起きてきた。


「夢中になって臭いを探し回っているのでしょうか」

「もう少し待ってみよう。 そのうち帰ってくるかもしれないし」




 結局、10時半のお迎えの時間になっても帰ってこなかった。




「ヴィート先生、絶対ファビオに何かがあったのですよ。 彼がこういう場をすっぽかす訳がありません」

「俺もそう思うわ。 どうする? 俺だけ残ってファビオを探そうか?」


「でも城内の臭いを嗅いでもらわないと」

「ほんまやな······じゃあ、謁見が終わってからみんなで探そか」


「そうですね。 先ずは国王様に逢いに参りましょう」




 表に出ると、立派な馬車が待っていた。 馬車と言っても引いているのは大型の4頭の山羊(やぎ)だ。 御者と案内係の兵士が前に乗る。



 しかし、馬車にも山羊にも感動する余裕はなかった。 ファビオが心配だった。


 馬車の中からファビオを探す。 4人とも景色を楽しむ事もなく目を凝らして窓から外を見続けた。



 ◇



 城の前に到着した。


 豪勢で立派なお城だ。 中庭には形よく刈り込まれた植木に色とりどりの花が植えられ、美しい彫刻やオブジェがセンス良く置かれている。



 馬車を降りて建物に入ろうとした時、ニコロが「ちょっとまってや」と、俺たちを引き留める。



「どうしたんだ?」

「ちょっと静かにしてくれへんか·········」


 ニコロは大きな耳をぴんと立てて何かの音を聞き取ろうとしているみたいだ。

 案内係の兵士と御者までもが動きを止めて聞き耳を立てる。



 ニコロの顔がパッと明るくなった。


「ファビオや!」

「えっ? ファビオがどうした?」

「この城の中に居る」

「城の中?」


「牢屋の中やって言ってるわ。 白はいないって」

「牢屋に入っているのか?!」

「そうや」

「何をしたんだ?! 捕まったのか? 先生、どうしましょう」


「······」


 ヴィート先生は何かを考えていたが「そうか」と言って顔を上げた。


「先生?」

「ファビオちゃんも無茶をする。 誰の影響でしょうね」


 そう言って俺の顔を見た。


「俺?······俺が何か?」


「白はいないというのは、彼女は地下牢に居ないということでしょう。 ファビオちゃんは牢屋の中の臭いを調べようと、ワザと捕まったと思われます」

「ワザと捕まった?!」



 もし女王がこの城に(とら)われているとしたら地下牢の可能性が大きい。


 しかし忍び込むにしても牢の中まではそう簡単に入り込むことは出来ない。 それならワザと捕まって地下まで連れて行ってもらう方が早いと思ったのだろう。




 それだけ切羽詰(せっぱつ)まっているという事だ。




······わぁ······俺以上に無茶をする奴だ······









女王様が心配でしかたかなかったのでしょうね?

ファビオは責任感が強いですから。

( ´Д`)=3

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