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39話 ファーノザ国の王都フォッジャ町

 39話 ファーノザ国の王都フォッジャ町




 その後2晩小さな町に宿泊し、午後3時頃に王都に到着した。


 王都の周りはどこまで続くのか、見える限り高い壁で囲まれていて、大きな門は閉ざされていた。

 しかしその奥に見えている街並みはヤコボ町を豪勢にしたような街で、かなり高い山の上まで家が連なっていた。



 ヴィート先生(いわ)く、王都の面積で言えば貴狼(ジャンシャード)国には遠く及ばないが、貴猿族は小さいために、建物も小さく、山の斜面を使っているために、建物の数だけで言えばこちらの方が多いという。



······楽しみだ······



 門の前には兵士が立っていて、俺たちに視線をロックオンしていた。


 門の前で馬から降りて馬を引いていく。


 ヴィート先生が一言二言兵士と話すと、すんなりと大きな門を開けてくれた。





 貴猿の国をファーノザ国と言い、王都はフォッジャ町と言うそうだ。



 門を(くぐ)って見上げると、フォッジャ町はやはりヤコボ町と規模が違う。


 門から真っすぐ伸びる広い(にぎ)やかな大通の左右にはオシャレな店が立ち並び、途中から山肌に沿って階段状に建てられている家々は高層ビルを思わせる。 


 そして建物の間には、多くの緑が太陽の日差しを反射して眩しく輝いていた。




 俺もだが、ファビオとニコロも()()()()()()のようにキョロキョロと見回しながら歩いた。


 何といっても高い山の上から見下ろされているような威圧感を感じる建物が並び、小さなヤコボ町とも広いジャンシャード国ともまた違う、見惚(みと)れてしまうような美しさを感じる街並みなのだ。



 ここでも貴狼族の二人は好奇の的になっている。


 しかし多くはないが貴狼族も見かけるのに、なぜそこまでと思ったら「ピューマを······」「ヤコボで······」と言う声が聞こえてきた。


 ホエザルの連絡(とおぼえ)を街のみんなも聞いていたのだろう。



「俺たちやなくて人間族のケント様が倒したんやでって、大声で叫んでもええか?」

「ダメ」



 好奇の視線に慣れていないニコロがいたたまれなくて俺に聞いてくるが、もちろん却下した。

 人間だという事は知られても構わないが、大勢に寄ってこられると面倒だ。

 



······ここはピューマを倒した()()()()()()という事で······クックックッ······





 馬を()きながらヴィート先生についていき、大きな建物の前に到着した。


 宿だと言うが、これこそ完全にホテルだ。 


 騎獣を預けて建物の中に入ると、吹き抜けの広い場所にはソファーが並べられたロビーがあり、そこでゆったりと飲み物を飲んでいる(キエン)もいる。



 ジャンド町も人間界と似ていると思ったが、フォッジャ町はこのまま都会の真ん中に移転しても、誰も気付かないだろうというレベルだ。


 違いと言えば電気がない事くらいだろう。



······貴猿族、恐るべし······




 今回も大きいチームと小さいチームに分かれた。 貴狼族などの大きい種族用の部屋に隣接する部屋を、俺たちに用意してくれた。


 ファビオたちの部屋を少し覗いてみたが、貴狼国で見慣れた天井の高い部屋で、天蓋(てんがい)付きのベッドもキングサイズだ。


 不思議なもので、周りが貴猿サイズだと、今まで見慣れていたはずの貴狼サイズが大きく感じる。


 俺たちの部屋も中東の豪華な家を連想させる作りになっていて、金持ちになった気分だった。



 ◇◇◇◇



 荷物を置いて落ち着いたところでノックがあった。 ファビオとニコロだ。


「街中を調べてきます。 夕食までには戻ります」と言って出て行った。


 窓から見ていると、ファビオとニコロは左右に分かれ、転変して臭いを嗅ぎながら走って行った。



······また忘れていた······女王様捜索の旅だった······



 ヴィート先生たちも「国王謁見の申請に行ってまいります」と言って出て行った。




······そして誰もいなくなった······




············寂しい······




······よし! 俺も聞き込みだ······




 で、とりあえず剣を一本だけ背負って部屋を出た。




 ◇◇◇◇




 フォッジャ町は本当にオシャレな街だ。 街ゆく貴猿たちの服装も貴狼とは一味違う。


 立ち並ぶお店も原宿や渋谷かと思わせるセンスの良さで、人間界に戻ったような気分になる。



 一つ一つのお店を(のぞ)いて回る。 しかし、聞き込みは忘れない。


 お店の店員さんに聞いてみた。


「最近翼竜(よくりゅう)を見ませんでしたか?」

「いや、見ていませんね······ところでお客さん、失礼ですが種類は何ですか?」

「ハハハ、どうも俺は珍しいみたいですね。 ありがとうございました」


 翼竜の事を聞くと必ず代わりに俺の種類を聞いてくる。 やはり違いは分かるのだ。




 そういうやり取りを何度かしたが、年配のヒヒのような貴猿に聞くと、違う答えが返って来た。


「そういえば、20日程前だったかのう。 久しぶりに翼竜を見たのう」

「20日前ですか? 12日前じゃなくて?」

(うたが)うのか? そこまでボケちゃおらんぞ。 あれはエジオが訪ねて来た日の夜じゃったから······きっちり20日前じゃ」


 「エジオ」って誰だ?と思ったが、もう一度考え直し、指折り数えて確信をもって20日前だと答えてくれた。 女王が拉致されたのは12日前だ。 日にちがずれている。


「久しぶりという事は、昔にも翼竜を見たことがあったのですか?」

「あれは150年ほど前じゃったな······あれはわしが············」


「ありがとうございました」


 10分ほど自慢話を聞かされてから、お礼を言って別れた。




······しかしどういう事だろう······この近くに翼竜(よくりゅう)の生息場所があるとか······そう言えば前にも貴狼国内でも一度見たな······




 一人で考えても分からないので、パス。




 またウインドーショッピングに戻った。


 小腹が空いたのでスイーツショップに入る。 


 貴猿国と貴狼国のお金は同じものを使っているそうだ。 一袋500ルギのクッキーを買って、つまみながら歩く。




 そう言えば貴猿国と貴狼国の文字も同じようだ。 アラビア文字によく似た、クネクネした模様のような文字だ。



 実は一年ほど前からヴィート先生に文字を習っている。

 ただ、俺の耳にはこの世界の言葉は日本語に訳されて聞こえている。 多分文法も違うのだろう。 単語は分かるが、文章は理解できないし、俺が何が分からないのかヴィート先生にも理解できないようだ。



 だから文章を理解することは(あきら)めた。



 しかし、数字や名前など名詞はだいたい覚えた。 だから買い物などに困る事はないのだ。










貴猿国の観光(女王様探し)は、楽しいみたいです。

何といっても、サイズ(身長)が同じ位な国は久しぶりたからでしょうね( ´∀` )b

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