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32話 貴猿族の仕業?!

 32話 貴猿族の仕業?!




 会議室に俺たち3人と近衛隊隊長の4人が入った。


 重臣たちはすでに集まっている。


「アドハ! どうだった?!!」


 アドハとは近衛隊隊長の名前だ。 将軍が半分腰を浮かせて怒鳴る。

 アドハ隊長はいつも女王が座る席の後ろまで行き、硬い顔で立った。 いつもの彼の定位置だ。


「早く答えろ!!」


 将軍はダンッ!とテーブルを叩く。



「女王様は東の隠し通路を通ったのは確かです」

「東? 貴猿国の方向か?」


「はい······しかし途中で女王様の臭いが消え······」

「消えたとはどういう事だ!!」


「分かりません。 嗅ぎ慣れない匂いと共に匂いが消えたと思ったら、その先に女王様の血痕が見つかりました」

「血痕だと?!! 確かなのか?!!」


 アドハ隊長は頷いた。


 他の重臣たちも騒ぎ出す。


「先という事は、貴猿国の方なのだな?!」

「そうです」


「貴猿の野郎!! 女王様を拉致して何をするつもりだ?!!」

「戦争を仕掛けるつもりなのでは?」

「女王様がいなくなった混乱に乗じて攻撃してくるつもりなのではないか?!」

「なんて卑怯な手を使ってくるんだ!!」

「奴らの好きにはさせないわ!」

「そうだ。 我らも出撃準備だ」


 重臣たちの様子を見て、ヴィート先生が必要だと感じたので、振り向いてニコロを見上げる。


「ニコロ、急いでヴィート先生を呼んできてくれ。 来る途中に事態の説明をわすれないように」

「了解」


 ニコロは急いで部屋を飛び出した。



 重臣たちの罵声(ばせい)は止まらない。 完全に貴猿族の仕業だと決めつけている。



「ちょっと待ってください!」


 俺が叫んだが聞く耳を持たない。



「我々には伝説の人間族であるケント様がついている。 これは楽勝だ!」

「その通りだ将軍! 最短で兵はどれくらいで集められる?」

「3日もあれば全兵力を整えられる」

「では、後は後方支援だな。 何日かかる?」


 戦争の方向に話がどんどん進んでいる。


「皆さん! 俺の話を聞いてください!」


「貴猿などに後れを取ってたまるか!」

「ケント様もおられるし、全兵力を注げば、我々が負ける要素はない」


 その時、扉が開いてニコロに連れられたヴィート先生が入って来た。



 一斉にヴィート先生に視線を向けられる。


「なぜ貴猿が入って来たんだ!」

「もしかすると貴様が手引きして女王様を拉致したのじゃないのか?!」


 一人が立ち上がってヴィート先生に掴みかかろうとするのをニコロが慌てて止める。



「ちょっと待ってください!! 俺の話を聞いてください!!」


 いくら怒鳴ってもこの事態を収拾することは不可能に思えた。




 俺がダンッッ!!と思いきりテーブルと叩くとバキッバキッ!!とテーブルが真っ二つに割れた。


 みんなが驚いてシンと静まり返る。




「落ち着いて俺の話を聞いてください!」

「部外者は黙っていてもらおう!」


 将軍が威圧的な態度で(にら)みつける。 俺も負けじと(にら)みつけた。



「さっきは伝説の人間族がいるから何とかって言ってたのはあんただろう!! 俺は部外者か?! 必要ないなら出ていくぞ」

「あっ······すまない······申し訳ありません」


 将軍は大きな体を小さくして椅子に座った。 ムカついたので丁寧語はやめる。



「先ずは俺とヴィート先生の話を聞いてくれ。 テーブルを壊してしまって申し訳ないが、とにかくみんなも座ってくれ」


 全員がおずおずと椅子に座った。




 俺は全員の顔を一度ゆっくりと見回した。



「俺は貴猿族の仕業ではないように感じるんだ」

「「しかし!」」

「いいから聞け。 ヴィート先生が貴猿王と面識があるそうだ」



 全員がヴィート先生を見る。



「私は現在の貴猿王がまだお小さい頃から存じ上げています。 頭の回転が速く、聡明でお優しい御方です」


「優しさと戦争は別だろう。 昔は何度も攻撃してきたではないか」

「それは先王の時代です。 現在の王は貴狼族がお好きで、将来退位してから貴狼(ジャンシャード)国で暮らしたいと仰っていました」


「口では何とでも言える」

「そう思われても仕方がありませんが、しかし事実です。 ですから貴猿王が女王様を拉致しようなど考えるとは思えません。 ましてや戦争をしようなどとはあり得ません」


「失礼ながら貴公(きこう)はこの国に来て随分経つと聞いています。 長い年月で貴猿王の考えも変わるとは思いませんか?」

「確かに王とは長い間お会いしていませんが、貴猿国の者とは連絡を取っています。 お変わりはないと聞いています」

「そんな事は分からないだろう!!」


「ちょっといいか?」


 ヒートアップしてきたので、俺が水を差した。



「俺が思うに、これは多分()だ。 そうでないとすれば、嗅覚の優れた貴狼族を(あなど)っているか、よっぽどのバカだ。

 そう思わないか? 自分が拉致した方向をわざわざ教えてくれるのだからな」

「そう言われれば······そうだな」


「例えば俺が女王様を拉致した犯人だとする。 俺なら貴狼族に臭いを嗅がせて貴猿国に疑いを向け、怒りに任せて貴猿国を攻撃する貴狼兵の後ろから攻撃するか、兵士がいなくなったこの王都であるジャンド町を占拠するな」

「······その通りだ······では貴豹族の仕業か?」



「みんなが貴猿国や貴豹国の仕業にしたいのは分かるが、決めつけるのは良くない。

 ヴィート先生があくまでも貴猿国には関りがないと思いたいのもわかる。

 しかしあらゆる可能性を考えなければならないし、血痕が貴猿国に向かっている以上、何か手掛かりがあるかもしれない」


「そうだな、つい決めつけてしまっていた」

「女王が心配なあまり、結果を求めすぎていたのかもしれません」

「私ももう何年もお会いしていないのに、つい······」


 俺はうんと頷く。


「貴猿族はヴィート先生を見てもわかるようにとても賢い種族だと聞いている。 だから貴猿王ではない別の誰かが戦争を起こさせようとしている可能性が高いと俺は考えているんだ。

 しかし貴猿国を指し示しているからには、とにかく行ってみるべきだと思う」


「我々に戦争をさせようと?」

「貴豹族か······または戦争を望む貴猿族か、もしくは貴狼族の誰かか······」


 みんなは顔を見合わせた。


「そうとして······偵察隊は誰が?······」


 全員が一斉に俺を見る。



 行くつもりだったけど······目で物を言わないで、遠慮せずに言葉で言おうよ。



「もちろん俺が行く。 一応中立の種族だからな」

「「私も行きます!」」


 後ろで声がした。 ファビオとニコロだ。


「では私達も案内役と紹介役も兼ねてご一緒いたします」

「します!」


 ヴィート先生の胸ポケットからノエミちゃんも手を挙げていた。




「願ってもない申し出に感謝いたします。 それで兵士は何人ほど連れていかれますか?」


「我々だけで充分だ。 偵察にゾロゾロ行く必要もないし、もしもの事があった時に兵士まで守る事ができないからな」

「······ま···まぁ、ファビオ副隊長とニコロ副隊長がいれば問題ないでしょう」



「いつ出発されますか?」

「準備ができ次第」



「わかりました。 急いで貴猿王への書状と、旅の準備を整えます」









果たして貴猿族の仕業なのか?


新たな旅が始まります!

( ´∀` )b

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