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27話 放火犯

 27話 放火犯





「ダニオさん、 ボルジアさんの家は?!」

「裏の通りの右に二筋行った所です」

「火事を知らせる遠吠えを!!」



 それだけ言うと、屋根の上に飛び乗った。

 ボルジアの家は直ぐに分かった。 既に火の手が上がっているのだ。



 俺が屋根の上を急ぐ途中、男が逃げていくのが見えた。 しかし今は追っている暇はない。



とにかくボルジアの家の2階のテラスに降り立ち、窓を叩く。

 驚いて飛び起きたボルジアは、一瞬何が起こっているのか理解できないようだった。


「ケントさん?」

「放火された! 既に燃えている! お婆さんは?」

「隣の部屋だ」


 ボルジアが指さす隣のテラスに飛び移り、ガラスを割って中に入った。 その音に驚いたお婆さんは飛び起きて、俺を見て悲鳴を上げた。


「ぎやぁぁぁ~~!!」


 お婆さんが叫んで暴れるが、構わずに抱き上げて窓から飛び降りる。 


「ぎやぁぁぁ~~!!······あ?」

「大丈夫ですよ」


 

 あっけに取られているお婆さんを置いて、再び2階のテラスに飛び乗る。

 そして既に起きているボルジアの母親を抱き上げた。


「ボルジアさんは自分で飛び下りれるか?」

「だ、大丈夫だ」


 俺が飛び降りた横に、ズドン!!と地響きと共にボルジアが飛び降りてきた。 しかし彼を気遣(きづか)っている暇はない。


 足の痛みを我慢して固まっているボルジアに向かって叫んだ。


「火は頑張って消してくれ!! 俺は放火犯を追う!!」



 そう言うと屋根に飛び乗り放火犯が逃げて行った方向に走る。




 既にダニオが火事を知らせる遠吠えをしているので、近所の住民たちが起きだしてきている。 消火は彼らに任せても大丈夫だろう。




 ◇◇◇◇




 ダニオの遠吠えを聞いて、ポツポツと家から出てきて火事の場所はどこだろうと見回している住人の間を、鼻歌を歌いながら平然と歩いている者を見つけた。



······奴だ······



 俺は屋根の上からコッソリ後をつける。


 当然ジルドに向かうと思っていたのだが、違う方向に曲がって行った。



······奴ではないのか?······しかし俺の直感は奴だと言っている······


······そうか、アジトは4か所あると言っていた。 別のアジトに向かうのか······



 とにかくそのまま後をつける事にした。




 そいつはこの地区にそぐわない豪邸の門を叩いた。 中から団員らしき者が顔を出し、男を招き入れた。


 俺は高い塀にかかる大きな木の陰に隠れて中の様子を(うかが)う。



 テニスコート10面分はありそうな広い敷地に見事に刈り込まれた植木や池に、よくわからない彫刻のオブジェまでそこかしこに飾ってある。 


 そして広い敷地の真ん中に豪邸が立っていた。



 庭には見張りが8人と、豪邸のテラスに2人。



······ここに間違いなさそうだ······




 スキップをしそうなほど浮かれている放火犯が建物に向かう後ろから、気付かれないように見張りを気絶させていく。

 上の見張りから見つからないように木陰に隠しながら次々と倒していった。


 放火犯が玄関の中に入った途端、玄関前の2人の見張りを倒した。





 あとはテラスの2人だけだ。 彼らから見えない場所からコッソリとテラスに登る。


 見つからないように一人を倒したと思ったのだが、もう一人に気づかれてしまった。



······マズい!······



 見張りが声を上げようとした瞬間に、俺は口の前に人差し指を立てて「しっ!!」と言う。

 俺の仕草を見て動きが一瞬止まった隙に、そいつを気絶させた。



······おバカで良かった······




 二階の明かりのついた部屋の前に行く。


 窓が(わず)かに開いていて、部屋の中の声は丸聞こえだ。


 俺は窓からこっそりと中を(のぞ)き込んだ。



······ビンゴ!······



 マッサリオと仲間の4人もソファーに座って談笑していて、壁際には5人の団員が立っていた。




 その時ノックと共に例の放火犯が入って来た。


「首尾は?」

「もちろん上々です。 ボルジアと家の奴らは今頃真っ黒焦げでさぁ」

「誰にも見られていないだろうな?」

「当然ですよ」


「証言などをしようとするからこんな目に合うんだ。 しかし刑部(けいぶ)が証拠やら証人やらを探すと面倒だが、大丈夫か?」

「ご心配には及びません。 証拠は何も残したりはしていませんから」


 放火犯はニンマリと笑い、マッサリオもニンマリと笑った。




 マッサリオは手に持っていた酒のグラスを横のテーブルに置き、放火犯に手招きをする。


 何か褒美(ほうび)でも貰えると思ったのだろう、放火犯はいやらしい笑いを浮かべて近づいていった。


 そして、マッサリオのすぐ前まで来た時、ムダに長い手がスッと伸びてきて放火犯の両頬を掴んだと思うと、グキッ!!と首を捻った。

 首の骨が折れた音がして放火犯は人形のように崩れ落ちて行った。



······?!!······



 俺は全身の毛が逆立った。


 自分が命じて放火をしてきた者を、(みずか)らの手で殺すなんて許せない!!




 俺はガシャン!!とガラスを割って部屋の中に飛び込んだ。



「何者だ!!」


 壁際に立っていた団員たちが俺を囲み、剣を抜いて構える。


「お前の指示に従った者を何の躊躇(ためら)いもなく殺すなど、正気じゃない!!」


 マッサリオは床に横たわる放火犯にチラリと視線を落とした。


「今は証拠がいると困るのでね」

「良かったな。 違う証拠と証人ができたぞ」

「心配するな、お前も死んでもらう。 やれ!」



 5人の団員たちが一斉にかかってきたが、あっという間に殴り倒した。



 余裕で構えていたマッサリオ以外の4人が慌てて剣を抜いて立ち上がる。


「お前、昨日も兵士の陰に隠れていたな」

「なぜ貴猿が首を突っ込む」


「なぜって······許せないからだよ」

「関係ない奴は引っこんでろ!」


「関係ないかどうかは俺が判断する」

「ほざいてろ!」

「「死ね!」」




 4人が向かって来たが、一人の懐に入って下から(あご)を殴り、横の奴の脇腹を蹴り、後ろの奴は後ろ蹴りで飛んでいき、最後の一人は回し蹴りで壁に激突して動かなくなった。






後は、マッサリオだけだ!

こいつだけは許せない!!

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