20話 やっぱりクソ真面目なファビオさん
20話 やっぱりクソ真面目なファビオさん
俺の手下になった4人の傭兵はこの地区の警備隊として雇われていて、他にも要請があれば個人の警備も受けているそうだ。
一番大きくてシルバーの貴狼が、アイマーロ・グイド。 このチームのボスで、この地区の警備隊の責任者もしている。
そういう奴が貴猿族にちょっかいを出して喧嘩を売るなよ。 と、説教はしておいた。
少し細身のクリーム色のよく似た二人の貴狼が、サウォイア・エジェオと、サウォイヤ・イラーリア。 兄妹だそうだ。
イラーリアは女性らしい。 言われてみれば少し小さいが······
······分からん······
最後の一人はシルバーとブラウンが混ざったような毛色をした貴狼で、カウジオ・コルラード。 一番若いそうだが、一番落ち着いて見える。
4人はテーブルを寄せてきて、横に座った。 そしてお近づきの印と言って、俺やファビオたちの分までビールを頼んだ。
······ビールもあるのか! ほんの少し父さんのビールを飲んだことがある。 苦くてあまり美味いとは思わなかったが、楽しみだ······
運ばれてきたビールは、俺の知っているのと同じように白い泡が立っていて、同じような色をしている。
「ケントさんの手下になれたことを祝って!」
「「「「かんぱ~~~い!!!」」」」
ケント様がケントさんになっているがその方がいいので、黙っておくことにした。
しかしビールが美味い! 俺はグビグビと飲んだ。 のど越しがよくて止まらない!!
「うぱぁっ~~っ! 美味い!!」
「ケントさんもいける口ですね」
「飲みっぷりが最高です!」
「ビールは美味いな!」
「この店のビールは美味くて評判なんですよ。 知らなかったんですか?」
「いつもは昼飯を食べにくるだけだからな」
「ビールは昼から飲むのが美味いんですよ」
「昼間っから酔っぱらって他人に迷惑をかけているんじゃないのか?」
「と···とんでもないですよ! そんなことは······」
ちょっとしどろもどろになっている。
「今日は特別だが、昼間はビール1杯で止めるように」
「······り···了解しました······」
グイドたちはショボンと耳を垂れた。
「ケント殿、そろそろ······」
「ほんまやな、そろそろ行かんと回り切れへんわ」
この街は広い。 一日で全部の詰所は当然周り切る事はできないが、うまく回れば4か所は回れると、二人で考えてくれていた。
ファビオとニコロが腰を浮かせて俺を促す。 グラスを見るとニコロは飲み干しているが、ファビオはほとんどビールを飲んでいない。
きっと職務中だからとかなんとか言うのだろう。
······さすがクソ真面目なファビオさんだ······
「そうだな。 じゃあ、先に失礼するわ」
「えぇ?······もう行くんですか? 明日も来ますか?」
「毎日とはいかないが、なるべく来るようにする」
「「「「はい! お待ちしています!!」」」」
4人は直立不動で俺たちを見送ってくれた。
◇◇◇◇
ひったくりを捕まえた時に行った詰所に着いた。 門の前には二人の兵士がちゃんと立っている。
「ちゃんと」と言うのも変な話だが、以前来た時には中庭で遊んでいた事を考えると、ちゃんとしている。
俺たちを見ると、直立不動になる。
······反省したか······
中に入ると、一人がカウンター前に座り、二人が奥のソファーに座っていた。
これもここが定位置なのだろう。
俺たちを見て立ち上がり、直立不動になる。
ファビオが手を挙げると、休めの体勢になった。
両手を後ろで組み、足を肩幅に開いて立っている。 警察とかでも見るような光景だ。
······勤務中はそうなるのか······今日は私服だけど、前が前なだけに、緊張しているのだろうな······
ファビオが威厳タップリにカタラーニ班長の方を向いた。
「一年間の業務日誌を見せてくれ」
「一年間······ですか?」
「······」
何度も言わせるな的にファビオが睨むと、班長は慌てて奥の部屋に走って行った。
運ばれてきた常務日誌は5冊ほど。 思ったより少ない。
パラパラと中を見ていたファビオはカタラーニ班長を睨む。
「この一年間で起きた犯罪の数は?」
「え?······」
「では、今年になってからのこの4ヶ月で起きた犯罪は?」
「えっと······」
「今月に入ってからの犯罪件数は?!!」
カタラーニ班長は指を折って数え始めた。
それを見たファビオは持っていた常務日誌をバン!!とテーブルに叩きつける。
「業務日誌は毎日書くものと教えられていなかったのか?」
「も···申し訳ありません」
「書き方は習わなかったのか?」
「それは······」
部下の兵士を見る。 書いたのはこいつらだと言いたげだ。
「書き方の指導をするのはだれだ?」
「わ···私であります!」
「ちゃんと教えたのか?」
「申し訳ありません!!」
「毎日班長がチェックするように命令を受けていないのか?」
「も···申し訳ありません!!」
ファビオは大きくため息をついた。
「今年に入ってからの4ヶ月だけでいい。 処理したすべての犯罪と、出動した事案と、詰所に訪ねてきた街の者達に関する報告書を、書き漏れがないように5人で相談して業務日誌を書き直せ」
「承知いたしました!!」
「5日後にまた来る」
「はっ!」
「ケント殿、こういう次第で申し訳ありません。 とりあえず次に行きましょう」
「わかった」
俺はちょっと笑いそうになっていたが、頑張って我慢した。 クソ真面目なファビオの容赦のなさが、逆に笑えてくるのだ。
同じく気を使っていたのだろう、門を出るなり黙っていたニコロが喋りだした。
「いやぁ! ファビオはこういう事に容赦せえへんからな。 あの班長は泣きそうになっていたで」
「業務怠慢な方が悪い」
「お前は一年間の犯罪の数はもちろんやけど、全ての業務を覚えていたもんな。 業務日誌なんて兵士のトイレに行く数まで書いていたのはお前くらいやで」
「トイレに立った時に犯罪が起こったらどうする」
「分かった、分かった。 お前が正しい」
ニコロは俺に向かって肩をすぼめて見せた。 笑っちゃ失礼な気がして我慢したが······
······クソ真面目にも程があるってか?······でも俺はそんなファビオが好きだ······
言っておくがBLではないので、誤解のないように······って、俺は誰に言っているんだ?
ちなみに「BL」とは、ボーイズラブの事です。
嫌いじゃないけど、このお話では違います
( ´∀` )b




