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異世界移転するたびに俺が伝説の英雄になる件  作者: 杏子
第一章 人間世界から昆虫世界編
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6話 守りの祠にあの時の俺が描いてある?

守りの祠という所に案内された

 6話 守りの祠にあの時の俺が描いてある?




 次の日、ナブグの家に呼ばれた。


 部屋に入るとナブグとビルビとヤンドク、そしてなぜかガルヤがいた。

 俺を見ると全員が立ち上がり、片膝を着いて挨拶をした。 ガルヤも、である。


 俺も挨拶を返そうと片膝を着くと、ナブグが両手を上げ、困ったように言う。

 

「あなたはなさらなくていいのです」

「でも、これが挨拶ではないのですか?」

「いや、これは挨拶とは違いますのじゃ。 ()()()()()()()への礼なのです」

「礼とはどういう事ですか? そもそも腕を失くした神とは何のことですか?」

「今から守りの(ほこら)にご案内いたします。 ご自分の目で確かめて下され。 その時にまた、詳しくお話いたします。」



 俺とビルビはそれぞれアミに、それ以外はタムに(またが)り出発した。


 タムの足で二時間ほど走ると、小高い山の麓に着いた。


 しばらく登り、その巨木の近くの少し開けた場所で騎獣から降りて木に(つな)いだ。



 それから低木をかき分け、巨木の前に出た。 その巨木の根元に、ガルヤがやっと入れるほどの穴がポッカリと開いている。


 ガルヤとヤンドクが、あらかじめ用意していた松明に火を付けた。

 当然マッチやライターなどはなく、少し擦るだけで火花が散る石を使って火を点けた。




······あの火を点ける石が欲しい······




 ガルヤを先頭に、ナブグ、ビルビ、俺、最後にヤンドクの順に中に入った。



 中は意外と広く、ガルヤが屈まなくても通れるほどの高さはある。 そして緩やかな下り坂になっていて奥は見えない。


「けっこう奥深いんだな」

「もうすぐよ。 あの先の左」


 その時、前の方でゴン!と鈍い音がした。 ガルヤがつきあたりの手前の少し低くなった天井に、頭をぶつけた音だった。


「前に来た時も、同じ所で頭をぶつけたのよ」


 ビルビがクスッと笑って、小声で言ってきた。

 その声が聞こえたのか、ガルヤは曲がる前にこちらを振り返って、俺を(にら)んでから奥に入っていった。



 なぜ俺を(にら)むんだ? 




 左に曲がると、かなりの広さのある場所に出た。


 天井はガルヤの身長の2倍はあり、テニスコートが入りそうなほどの広さがある。

 やはりここの土にも宝石がたくさん含まれているらしく、松明の明かりで壁がキラキラと輝いていた。



 突き当りの一段上がった場所の壁に何か文字が書いてあり、横には人の絵が描いてある。


 よく見ると、俺と同じ腕は二本だけの人が両腕を上げて、岩の上に立っている絵が描いてある。




······えっ?···まるであの時の俺?······




 言葉は分かるが文字は読めない。 絵の両側にある松明に火を移すと、ナブグが壇の上に上がり、絵に向かって片膝をつき、それを合図に他の者も膝を着いた。



 礼を終えて立ち上がると、ナブグが話し始めた。


「ここには遠い昔からある言伝えが書いてあるのじゃ。 字は読めますかな?」


 俺は首を振る。


「ここにはこう書いてあります【二つの足、二つの腕、二つの黒い瞳を持つ者、天から舞い降りてボルナックの守り神になり、この世界を平和に導くであろう】まさしくあなたの事じゃと、我々は思っております」

「守り神と言われても、僕にはそんな力はありませんよ」

「いや、あなたは足が速く力も強い、そして勇気があり、とても優しい。 あなた以外には考えられません」

「と、言われても······」


 俺が困惑していると、後ろでガルヤが投げ捨てるようにボソッと言った。


「ふん、こんなチビに何ができる」

「ガルヤ! 何てこと言うの」


 ビルビが顔を真っ赤にして、怒鳴った。


 そのやり取りを見て、ナブグが首を振る。


「ガルヤはまだ納得出来ないようで申し訳ありません。 そのうちわかるじゃろうて」

「いや、それが当然の反応だと思います」

「ガルヤと違って、本当に謙虚な方だわ!」

「やめなさい!ビルビ、ガルヤ」

 

 ヤンドクが割って入る。


 「ビルビは子供の時にこの洞窟に来てからというもの、()()()()()()()の崇拝者なのです。 いつ来るの? いつ来るの? と、今までに何度聞いた事か」


 ビルビが恥ずかしそうに下を向く。 するとガルヤがまた俺を(にら)んだ。




「あの岩のある場所に貴方様(あなたさま)が現れる事は分かるのですが、それがいつなのかが分からず、ビルビは毎日海まで行っていたのですよ」

「もうやだ! お父さんたら!」


 ビルビは顔を押さえて背中を向けた。

 そのやり取りを聞いていたガルヤの顔が、一層険しくなっていくのがわかった。


 あぁ、そういう事かと気付いた。 ガルヤとビルビの顔を意味ありげな笑顔で見比べていると、それに気付いたガルヤの顔が赤くなった。



······あっ、赤くなった······



 フォーアームスはオレンジ色の肌をしているのに、恥ずかしいとちゃんと赤くなるんだ······なんだか不思議······




「ビルビの話は置いておくとして、納得していただけましたでしょうかな? 今のターンナックは平和じゃから、ケント殿の出る幕はないかも知れんが、とにかく今はこの地に慣れ、楽しんで下され。 不自由が無いように我々がお世話させていただくつもりにしております」


 俺はまだ納得は出来ないが、大変お世話になっているので文句などあるはずもない。




「僕が()()()()()()()かどうかは別として、この僕に何が出来るかわかりませんが、出来る限りの事はさせていただきます」




 やっと、この村の人達の優しさに、納得できた。 みんな俺自身に感謝をしているのではなく、ボルナック族の守り神という肩書に期待しているのだろう。



 ただそんなに期待されても、自分が()()()()()()()ではないと分かった時にはどうするのだろうと、不安になった。




 しかし異世界に来てしまった自分は、一人では生きていけない。 ターンナックに連れて来てもらって、何から何まで面倒をみてもらえるおかげでこうして生きていけるのだ。



 何ができるのかは分からないが、自分に出来る事を精一杯しよう。 そしてこの恩を少しでも返そうと決意した。




 ◇◇◇◇




 守りの(ほこら)からの帰り道、100mほど先を何か大きな動物が道を横切った。 それを見て一瞬緊張が走る。


 ガルヤとヤンドクが槍を手に、注意深く先ほどの動物が横切った辺りを見まわったが、既に姿はなく、大丈夫とみて再び出発した。



 ビルビが言うには、獰猛(どうもう)な肉食獣のギギだそうだ。 大きさはアミより一回り小さいほどで、タムに乗っている時はまず襲われる事は無いが、今はギギに子供がいる時期だから危険なのだそうだ。


「他にも肉食獣がいるから、森にはタムかアミに乗って入らないと危険なの。 タムは大きいし強いので、乗っていれば襲われる事は無いし、アミは足が速いから、たいがい逃げ切れるわ」


 そう話しながら、少し不安そうに辺りに目を配っていた。 



 ◇◇◇◇



 村に着くと何だか騒がしい。 俺達を見つけてガルヤの仲間のツーラとキムルが走ってきた。


「ガルヤ! ニニルの子供がいなくなった!」


 ガルヤはわかったとうなずくと、タムを引いて走って行った。




 途中で村人に話を聞くと、ニニルが畑仕事をしている時、ちょっと目を離した間に子供のナナルがいなくなったという事だ。


 畑の手前でガルヤがみんなに支持を出していた。 何頭かのタムも連れてこられていた。

 彼らも森に入って探すのだろう。



 ガルヤ達を横目に、俺とビルビはアミに乗って森に入り、ナナルの名を呼びながら探しまわった。

 森は低木が生い茂り、前に進むのも困難なほどだ。




 しばらく探していると、近くで「血だ!」という声がしたので行ってみた。

 タムに乗ったキムルだった。


「この様子では生きてはいません。 おそらくギギにやられたのでしょう。 もうすぐ二つ目の太陽が沈みます。 この辺で打ち切りましょう」

「もう少し探してみよう! この血の跡を辿れば······」

「だめです! もう無理です」

「あと少し! 痕跡があるのだから・・」


 俺は食い下がったが、キムルは首を縦には振らなかった。


「このまま続ければ犠牲者が増えるだけです。 夜の森は危険ですから帰りましょう」



 キムルが角笛を出して二度吹いた。 終了の合図だった。




 村に戻ると、ニニルが俺を見つけて駆け寄ってきて俺に(すが)りつく。


()()()()()()()! 私の子を! ナナルを助けて下さい! 見捨てないでください!」

「すまない······」


 俺は顔を上げることが出来なかった。



「ナナルは残念だった。 森の中で血が見つかったんだ。 多分もう······」


 キムルの説明を聞いてニニルが泣き崩れた。


「そんな! いやー! ナナルゥ!」


 村人達もニニルに声を掛けづらくて立ち尽くしていたが、日が沈み暗くなってきたので、みんなでニニルを支えて帰って行った。



 そんなニニルの後姿から俺は目が離せなかった。



()()()()()()()などと言われていても、こんなものだ。 何も出来ないんだ、俺は······」

「ケント様······」


 ビルビにはかける言葉が見つからなかった。




 そしてそんな俺をキムルは横から複雑な表情で見つめていた。





 次の日も捜索したが、ナナルが見つかる事はなかった。











自分にできる事を精一杯しようと決意した!

( ̄0 ̄;)

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