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異世界移転するたびに俺が伝説の英雄になる件  作者: 杏子
第一章 人間世界から昆虫世界編
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5話 やっと本当に受け入れてもらえた!

随分村にも慣れてきた。

 5話 やっと本当に受け入れてもらえた!




 俺はアンを連れて村の中をのんびりと見て回った。 早くもアンは俺に懐き、俺から離れるのを嫌がった。


 お店や作業場、畑の方にも行ってみた。 4本の腕を器用に使い、畑仕事をしている様子は見ていてとても面白い。

 男も女もそして子供も、みんな本当によく働く。




 ここには、装飾品として使っている物以外の鉄などの金属は無い。


 金色のそれは触ってみると柔らかいので、刃物や武器には使えそうにはなかった。 その代わり、石や骨を使ってナイフ代わりにしていた。


 それ以外に刃渡り20㎝ほどの鎌形のナイフをよく見ることがある。 それは石でも骨でも無さそうだったが、恐ろしく切れ味が良く、槍の先にも使われている他、色々な所で活躍していた。





 村のはずれまでのんびり来ると、穴を覗き込んでいた子供が俺を見つけ、ただ事でない様子で駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん! 助けて!」

「どうしたんだ?」


 

 数人のフォーアームスの大人達が覗き込んでいて、俺を見ると黙って一歩下がり、場所を開けた。

 俺を穴の所へ連れてきた子供が中を指さした。 


「ヨミが落ちちゃったんだ! ヨミを助けて!」


 中を覗き込んでみると、小さな子供がかなりの深さの穴の中に落ちていた。 多分20m以上あるだろう。

 穴の入口は小さいが中は少しだけ広くなっていて、両手を広げたより少し狭いくらいだ。 フォーアームスには狭いだろうが俺なら充分入れる。



 俺は迷わず中に飛び込んだ。



 ヨミは足をケガしているが、意識ははっきりしている。

 足に負担がかからないようにそっと抱き上げ「大丈夫だ」と優しく背中を撫ぜてあげると、四本の腕でしっかりと抱きついてきた。


「しっかり、つかまっていろよ」


 ヨミが掴まる腕の力をグッと入れる。


 そのまま入口近くまでジャンプし、後は両側の壁に手足で突っ張り、少しずつ上った。



 入口に手が届くあたりに来ると上から大人の手が伸びてきて、子供を引っ張り上げた。 そして今度は別の手がいくつも伸びてきて、俺を引っ張り上げてくれた。


「わあぁ!!」と大きな歓声があがり、子供の父親らしい男性が俺の前で片膝を着いた後、抱きついてきた。


「ありがとうございます! ありがとうございます!」




 噂はあっという間に広がったようで、会う人会う人が俺に片膝をついて挨拶をしてくれた。




 この事件をきっかけに、村人全員の俺に対する目が変わった。


 今までは、ビルビやナブグのように初めから歓迎してくれている者もいたが、ガルヤのように不審者を見るような視線も多かった。 しかしそれがなくなった。



  俺を本当に受け入れてくれたのが分かった。




 ◇◇◇◇




 夜になるとなぜか次から次に村人が色々な物を持って俺の家を訪れてくる。


 飲み物や食べ物、服や装飾品、絨毯などなど。

 そしてヨミの父親が持ってきたのはチルルという山羊のような動物だ。 チルルは乳が美味しいらしい。



 俺の家族がもう一人増えた。



 しかし子供一人助けただけで何とも大げさな村だなと思いながらも、みんなが来てくれるのがとっても嬉しかった。



 贈り物を持ってきてくれた人をいちいち家に招き入れていると、あっという間に家の中は人でいっぱいになり、外にまであふれている。

 ビルビがそんな訪問客の為に酒や食べ物を持ってきてくれたので、当然家の中と外で宴会が始まってしまった。



 それぞれがとても親しげに話しかけてくれ、腕の付いていない脇腹を触ってみたり、耳たぶを触ってみたり、俺の服や髪を指さして、色々と議論を交わす者達もいた。


 みんなが心から俺を受け入れてくれたのがわかり、微笑ましくその光景を楽しんだ。




 しかし、ビルビに初めて会ったときにも言われたのだが、「腕を失くした神」という言葉をよく聞く。 神じゃないと言っても、誰も聞く耳を持たない。(耳たぶはないけどね)




 その時、今日助けたヨミが足に包帯を巻いて母親と一緒に入って来た。 二人は俺の前まで来て、片膝を着いた。


「今日は助けてくださって、本当にありがとうございました」

「ました」


 母親と一緒に一生懸命お礼を言うヨミの姿が、とても可愛らしかった。


「足のケガはもう大丈夫か?」

「うん。 もう大丈夫! 暗い穴の中に落ちた時は死んじゃうかと思ったけど、お兄さんが助けに来てくれた時は本当に嬉しかった」

「たいしたケガではなくて本当に良かった。 もうあそこに行ってはだめだよ」

「はい!」


「娘を助けて頂いて、本当にありがとうございました。 やはりあなたは言い伝えの守り神だったのですね」

「言い伝えの神?」

「はいそうです」


 その時、新たに数人の村人が手土産を持って入って来たので、その話は立ち消えになった。



 ◇◇◇◇



 ワイワイと話しているうちに、俺がどこの種族かという話になった。

 この世界では手足が6本以上持つ生物はいても、4本しかない生物はいないそうだ。 


 異世界から移転してきたなどと話しても信じてもらえないだろうし、それ以前に理解ができないだろう······夢だと言う訳にもいかないし······困ったな······そうだ、これでいこう。


「俺は地球という国からきた、日本族です」

「ケントさんのお国では、みんな腕が2本しかないの?」


 聞いてきたのはヨミだ。


 周りの大人もそれを聞きたかったようで、俺が口を開くのをじっと待っている。


「うん、そうだよ。 手と足を合わせて4本しかない。 動物達もみんな4本だな」

「え~っ! 4本だけだと(くわ)を持ったら(おけ)はどうするの?」


 俺には(くわ)(おけ)の関係がよくわからない。 耕しながら種も蒔いていくということか? そういえば、畑でそんな光景を見た気がする。



 俺は苦笑した。



「別々に使わないといけないな」

「時間がいっぱいかかっちゃうね」

「そうだな、ヨミが羨ましいよ」



 フフンと、ヨミは得意げに4本の腕を広げた。




 この国の事を知らないと言うと、いろいろ教えてくれた。



 この土地はターンナックという地名でターンとは海、ナックとは近くという意味があるそうだ。 ここはターンナック村という。 そしてフォーアームスをボルナック族というそうだ。


 他にもボルナック族はいるが、一番近い村でもタムで急いでも三日以上かかるらしいので、ほとんど交流は無いそうだ。



 ターンナックには、ほとんど雨が降らない。 年に2~3回、それも少し降れば良い方だそうだ。


 しかし水に困る事は無く、豊富な地下水により湧水があちらこちらに出る。 土地も湿気が多く、作物もわざわざ水を播かなくても充分育つそうだ。





 他にも色々な事を教えてもらい、(未成年だが)しこたま酒を飲んで、気づけば朝だった。











何気に疎外感があった主人公だが、受け入れてもらえて良かったですね!( v^-゜)♪

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