昆虫世界編最終話 巨大モルドとの最終決戦
昆虫世界編最終話 巨大モルドとの戦い
ガルヤ達がモルドを蹴散らせて道を作ってくれた。
崖の近くまで行くと「後は頼んだ!」と、俺は崖をピョンピョンと登っていく。
アンが俺を見つけてついてきた。 俺の後をついて登ろうとしたが、もたついているうちに後ろからモルドに襲いかかられ、下で戦いになってしまったようだ。
そしてガルヤ達はモルドが崖に近づかないように立ちはだかり、近寄るモルドを次々と倒していってくれた。
俺が崖の上に出た途端、3頭のモルドが飛びかかって来た。 右で払い、左で斬り、もう一頭を崖下に蹴り落とした。
少し先で巨大モルドが観察するように俺を見ている。
二本足で立ち上がっているその姿は18タール(6m)以上あり、緑色の長い体毛に覆われていて、真っ赤な頭部には毛がなかった。
そして左目を潰されていて、左の肩と腰に赤黒い血の跡が見えた。
巨大モルドが一声吠えて襲いかかって来た。
「速い!」
俺は急いで巨大モルドの死角である左側に逃げた。 一瞬巨大モルドが俺を見失った隙に、背中に切りつけると、ブワッと緑の毛が飛び散った。
巨大モルドは振り向きざまに長い腕を振り回したが、それをしゃがんで躱し、また斬りつけてから飛び下がった。
あの鋭い爪を持った太い手に捕まると、一巻の終わりだ。 とにかく捕まらないようにヒットエンドランで少しずつダメージを増やしていくしかない。
しかし体の割に動きが素早く、身体能力が高い俺でも避けるのに一苦労だ。 だからなかなか急所を狙うことが出来ない。
なるべく動きを鈍らせようと足を狙う。 しかし俺が足を狙ってくることを覚えて、下の腕を使って逃げ場を塞ごうとする。
そんな攻防を何度か繰り返したが、なかなか致命傷を与える事が出来ない。 ただ確実に巨大モルドの動きは鈍っていた。
ヒットエンドランを繰り返す俺の隙を狙って巨大モルドが飛びかかってきた。
飛びかかってくる太い腕をすり抜けざまに腰を斬った。 しかしその時、巨大モルドが振り返った拍子に剣が深く刺さってしまった。
その一瞬を逃さず、巨大モルドは柄ごと俺の腕を掴み、自身の体から剣を引き抜くと同時に俺を投げ飛ばして岩肌に叩きつけた。
「グワッ! ガハッ!」
俺は血を吐き、頭が朦朧とする。
「マズい、肋骨が折れたようだ」
息をするだけで全身に痛みが走る。 頭を一振りして前を見た時には、巨大モルドが襲い掛かろうとすぐ目の前まで来ていた。
だめだ、避けられない!と思った時、崖から登って来たアンがモルドの背中に飛び乗り、首に咬みついた。
「グオォォッ!」
巨大モルドは吠えると、背中に咬みついているアンを掴み、岩に叩きつけた。
「わっ!! アン!! この野郎!」
俺は体を低くして巨大モルドの股の間をすり抜けざま、両足首を切り付けた。
巨大モルドがガクッと膝を着いた瞬間、肩の上に飛び乗り、上から剣で背中を思いっきり突き刺して急いで飛びのく。
すでに俺のいない背中を巨大モルドは俺を掴もうと手で掻いていたが、そのうち足を踏み外して崖の下へ落ちていった。
慌てて下を覗くと、地面に叩きつけられてうつ伏せに倒れた巨大モルドは、まだ立ち上がろうともがいている。
するとツーラがタムから飛び降り、巨大モルドに駆け寄った。
「ナムルトの槍を受けろ!」
槍を振り上げ、前足と中足の間から心臓めがけて力いっぱい突いた。
グオォォォォッ~!!
一声鳴いた巨大モルドは、しばらくバタバタと痙攣していたが、そのうち動きが止まった。
ボスである巨大モルドの悲鳴を聞いて動きを止めていたモルド達は、次の瞬間、蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出した。
「「「やったぞぉっ~!」」」
森の中に消えてゆくモルド達を見て、みんなが腕を振り上げ、歓声を上げた。
◇◇◇◇
俺は倒れているアンに駆け寄った。
「アン! 大丈夫か?」
気を失っているアンを優しく擦ると、気が付いてクゥ~ンと鼻を近づけてきた。
体が痛いのか、ゆっくり起き上がると俺の顔をペロペロと一生懸命舐めてくる。
俺もアンを強く抱きしめた。
「助けてくれてありがとう」
巨大モルドに叩きつけられた時のケガはなさそうだが、モルドの群れにやられた傷がいたる所にあった。
「アン、よく頑張ったな。 薬を塗ってやるから少し我慢しろよ」
ビルビにもらった傷薬を塗ってあげると、痛いだろうに我慢していて、それどころか俺のケガしているところを優しく舐めてくれる。
俺の家族は最高だ!! ネッドも待っているだろうし、トワの乳も懐かしい。
早くターンナックの家に帰ろう!!
薬を塗り終わって崖から下を覗くと、みんなが手を振って俺達を待っている。
百頭以上いたハクは、上から見た限りではせいぜい20頭ほどに減っていた。
可哀そうに多くの犠牲を払ってしまった。
逃げて行ったモルド達は、ボスモルドを倒したのできっと平穏が戻るだろう。
俺はそう願った。
「アン、みんなが待っている。 降りよう」
アンがトントンと下りていくのを見て、飛び降りようと思った時、安心したのか急に体中の痛みが襲ってきた。
「ガハッ!」俺は大量の血を吐き、地面が真っ赤に染まる。
『どうやら折れた肋骨が肺に刺さっているようだ······チクショウ! 死ぬほど痛い!』
みんなが待っているので降りなければと思ったが、フッと目眩がしてふらついた。
そして俺はそのまま崖の下に向かって落ちていったと思うと、目の前が真っ暗になった。
ーーー 昆虫世界編 ーーー 終わり ーーー
今回で昆虫世界英雄伝説が終わります。
再び別の異世界に飛ばされたケントの新しい冒険が始まります。
次の話は昆虫世界のイラスト集です。
興味のない方は飛ばして下さいね( v^-゜)♪
よろしければ、感想、レビュー、評価をいただけると嬉しいです。
引き続き、よろしくお願いいたします
m(_ _)m




