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異世界移転するたびに俺が伝説の英雄になる件  作者: 杏子
第一章 人間世界から昆虫世界編
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36話 モルドの群れが村を襲撃してきた!

 36話 モルドの群れが村を襲撃してきた!




 サムトが例の石と虫を一緒にして経過を見ていたのだが、結論から言えば、例の石が原因だったのは確かだった。


 一緒に入れていた成虫に変化はなかったのだが、幼虫は成長が止まらずに3倍ほどのサイズまで成長し、成虫に変態した後も死ぬまで成長が止まらなかった。


 本来2タールで成長が止まるはずのズブグクがあれほど大きくなったのは、あの石の近くで育った為に、いつまでも大きくなり続けたのだろうと結論付けられた。


 そして燃やされた石は、溶けてなくなり、二度と巨大生物が生まれる心配はなくなったと村の者達は安心した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 それから季節が一つ変わった頃、イルムナックで異変が起き始めた。



 朝、村人がアストの家に駆け込んできた。


「アストさん! さっき畑に行ったら、モルドがいました。 私を見て逃げ出しましたが、どうやら夜の間に(ひど)く荒らされてしまっていたようです。 とにかく見に来てください」


 慌ててアストが東の畑に行くと、かなり広い範囲で畑が荒らされ、あちらこちらにモルドの足跡があった。


「畑に来た時は何頭ほどいました?」

「私が見たときは5~6頭だったと思います」

「大きさは?」

「大きさ?」

「いや、何でもありません。 わかりました、今夜から畑を見張りましょう」



 アストは急いでサムトに報告しに行った。

 サムリクは未だに体調がすぐれず、サムトが村長(むらおさ)の代行をしているのだ。



「モルドが山から下りてくるのは珍しいな。 滅多に人里に姿を現す事はないのに。 取りあえず、今夜から警備を頼む」

「わかりました。 しかし、東の畑というのが少し嫌な予感がします」

「大きなモルドはいなかったんだろう?」

「はい······そのようですが」

「考え過ぎだろう。 人を見て逃げ出すようだから問題ないだろう。 アストに任せる」



 何か引っかかる物を感じながら、アストは戻った。

 その日の夜、アスト、ダムダを含む八名で畑を見守った。



 朝まで待ったが何も起こらず、今日はもう来ないだろうという事で帰ろうとした時、村人が走って来た。


「アストさん! 大変です! 北の畑をモルドにやられました!」

「何だと!」


 アスト達が北の畑に走っていくと、みごとに荒らされていた。


「くそっ! やられた! さすがモルドだ、一筋縄ではいかない。 ダムダ、二つ目の太陽が登る頃に西のサールに警備の者を集めろ」

「わかりました」と、ダムダが走っていった。



 アストはダムダが走っていくのを見届けてから、自身はサムトの所に向かった。

 イルムナック村には東と北、西の三か所に大きな畑があり、あとは村のあちらこちらに小さな畑が点在している。


「サムトさん、すみません。 東にとらわれていて、北の畑をやられました。 他の畑の事も考えるべきでした。 申し訳ありません。

 今夜から他の畑にも警備を置きます」

「わかった。 一晩中大変だったな、すまないがこれからも頼む」

「はい」



 ◇◇◇◇



 アストは一度家に戻り、朝食を取ってから西のサールに向った。

 この村の警備担当は五十名ほどいる。みんなで三か所を交代で警備するように割り振りを決めた。



 しかしそれから四日、モルドは現れなかった。

  


 ◇◇◇◇



 警備隊は連日の徹夜の警備に疲れが出始めてきた。

 そしてもう山に帰ったのかもしれないとみんなが油断し始めた頃の事だった。




 徹夜の警備から戻ったアストは家で眠っていたのだが、タルラの唸り声で目が覚めた。


「タルラ? どうした?」


 外が騒がしい。 弓と槍を手に家を出ようとした時、村人が駆け込んできた。


「アストさん! モルドの大群が村の中に!」

「何だと!」


 外へ飛び出すと、物凄い数のモルドが村の中を飛び回っている。 近くに来たモルドを槍で突こうとしたが、動きが早く、逃げられた。 そして村人も逃げ回って右往左往している。


「村の中では弓は使えない。 どうすれば······」


 アストは槍を振り回し、大声を出してモルドを追い立てるしかなかった。

 そこへダムダがハスランと走って来た。


「ハスランが吠えるので表に出てみるとこのありさまで、どういう事でしょう」


 そう言いながら矢を放ち、モルドが一頭木から落ちた。


「ダムダ、外すなよ。 外せば流れ矢が人に当たるかもしれない」

「わかっています」


 再び放ったダムダの矢は、モルドの足を貫いた。


「確実に当てる事ができる奴を狙っています」


 ハスランとタルラも、近付くモルドを追い立てている。

 すると、遠くで何か獣のような、低い咆哮(ほうこう)が聞こえてきた。 その声を聴いた途端、モルド達が一斉に同じ方向に逃げ出した。



「あれは何の声だ?」

「どういう事でしょう。 今の声が合図のように思えましたが······」


 そこにナムルトがクラムと走って来た。


「アストさん、なぜモルドの大群が······」

「とにかくダムダは急いでケガ人の状況を調べて報告しろ! ケガ人がいれば村人に応援を要請するように。 ナムルトは村の被害状況を調べて報告しろ! 俺はサムトさんに報告しに行く。

 それと警備隊班長は一つ目の太陽が沈む頃、村長の家の前に集合するように声をかけて回ってくれ。 わかったな! 行け!」


 二人は走っていた。




 アストはすぐ先にある村長(むらおさ)の家に行く前に、事態を確認しようと村を一回りした。



 アストが見て回った限りではケガ人はいなかったが、村中の色々な物が押し倒され壊され、散乱していた。

 こんな事は初めてだ。 モルドが村を襲撃するなどと前代未聞だった。

 



 村長(むらおさ)の家に行くと、サムトが出てきた。


「サムトさん大変なことになりました」

「そのようだな······とにかく中へ」


 奥ではサムリクが起きて、報告を待っていた。


「ああ······アスト。 どうなっている? どんな状況だ」

「今、ダムダとナムルトが調べていますが、私が見て回ったところでは、ケガ人はいませんでした。 人を襲う事は無かったみたいです。 しかし、家の中まで入り込んで荒らして回っています」

「モルドがこんな人里に下りてくるなんて聞いた事が無い。 何が起こっている」

「分かりません······」


 アストがそう言った時、ダムダが入って来た。


「ケガ人は四人だけでした。 どの人も驚いた拍子にこけたり、上から落ちてきた物に当たってケガをしたりした者で、大きなけがをした者はいません。 モルドは人には危害を加えなかったようです」

「そうか······人は襲わないのか······それは不幸中の幸いだ。 しかし、こんな事が続いたら大変な事になる。 サムト、どうする」

「何とかしなけないが、見たところ数百頭はいた。 どうやってあれだけのモルドの侵入を防げばいいのか······アスト、何かいい考えはないか?」

「······わかりません······でも、何か手を打たなければ······」


 そこに、今度はナムルトが駆け込んできた。


「ア···アストさん、ハアハアハア······」

「ナムルト、落ち着け!」

「はい······今回、大きな畑はどこも無傷です。 小さな畑や家の中や、倉庫内の備蓄の食料をかなりやられたのですが······それがモルドたちはそれを食わずに、ただ荒らすのだけが目的の様で、みんな首をかしげています」

「まさか暴れる事が目的だったという事はないだろ」


 サムトが不思議そうな顔でナムルトに聞き返した。


「はい、それはそうだと思いますが······」

「まだ何かあるのか?」

「えっと······関係あるかどうかはわかりませんが······」

「どうした?」

「はい······コムが一頭いなくなりました」

「コム?」


 一同は顔を見合わせた。


「この騒ぎで、逃げ出しただけじゃないのか?」

「しかし、ボスコムはサールにいますから、ボスから離れて一頭で逃げ出すとは考えられません。 それに、モルドが走りまわったくらいでコムが驚いて逃げ出すとも思えません」

「それもそうだな」

「それと······」

「何だ? 歯切れが悪いな。 まだ何かあるのか?」

「はい······コムがいなくなったサールの先の森で、何かを見たという者が······」

「何かって、何だ?」

「それが······話を聞いても要領を得ないので、直接話してもらおうと思って来てもらいました。 ちょっと待っていて下さい」


 ナムルトが一旦外に出た。


「あぁ、来ました」


 ナムルトと一緒に、一人の村人がおずおずと入って来た。


「コルトさんです。 コルトさん、みなさんにもう一度話して下さい」

「はい······私はモルド達が暴れまわっていたので、自分の畑を見に行こうとコムのいるサールの手前を走っていました。 その時チラッと森の方を見たのですが、なんかこう······森がザワッと······動いたように見えたのです」

「森が動いた?」

「私も急いでいましたし遠かったので、よくはわからなかったのですが、森の奥の方が、何て言うのか······動いたように見えました」

「何だ? 要領が得ないな。どういう事だ?」


 サムトがイライラした様子で聞き返したが、アムトとダムダは顔を見合わせて息を呑んだ。 そして、アストが身を乗り出した。


「サムトさん。 もしかすると巨大化したモルドかもしれません。 コムのいるサールの先には緑色の木が多く生えています。 北の森の中で緑色の巨大な物が動いたとしたら、そう見えるかもしれません。 コルトさん、違いますか?」


 コルトは、蒼白な顔になった。



「そ···そうかも······しれません······ど···どうしましょう! アストさん!」


 一同はあまりの衝撃に言葉を失った。



「あの時の声は、巨大化したモルドの声だったのかもしれない」

「モルドの声?」

「サムトさんは聞きませんでしたか? モルドが一斉に引き上げる少し前に、大きな動物の咆哮のような声が聞こえたのを」

「そう言えば、低い咆哮が······あれがモルドの声だと?」

「分かりませんが······とにかくその場所を見てみましょう。 コルトさん、案内して下さい」




 アストが立ち上がると、慌てて他の者も立ちあがった。










数百頭のモルドに、もしかすると巨大モルドまで?!( ̄□||||!!

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