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異世界移転するたびに俺が伝説の英雄になる件  作者: 杏子
第一章 人間世界から昆虫世界編
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35話 ガルヤとビルビの結婚式と披露宴

 35話 ガルヤとビルビの結婚式と披露宴




 ターンナック村に帰って来てからは、忙しかった。

 もちろんガルヤとビルビの結婚のためだ。


 ガルヤの家を新しく建て直すという事なので、俺も一から建て方を教えてもらって一緒に建てた。


 そして(ちぎり)の儀式を行う【(ちぎり)の岩】が野ざらしになっているを見かねて、(ほこら)のような物を建てようと提案すると、皆が賛成してくれた。


 建築の事は分からないし釘などもないので、ちゃんとした(ほこら)などは建てられないが、一度作ったガルヤの家を参考にそれなりにいいものが出来たと思う。



 あとは披露宴だ!



 当然この世界で夫婦になったからと言って披露宴などはしない。

 しかしビルビは村長(むらおさ)の孫で、ガルヤは警備隊長なので、知らない人はいないのだ。 二人がはれて夫婦になったことをみんなにお披露目するのもいいだろうと言うと、ガルヤ以外の全員が乗り気になってくれた。



 ◇◇◇◇



 (ちぎり)の儀式は、今日の夕方。 一つ目の太陽が沈むとすぐに行われ、二つ目の太陽が沈む前に終わらなければならないそうだ。


 そしてターンナックの村人全員を巻き込んで、今日の二つ目の太陽が沈んでから披露宴を行うことになった。


 みんなで料理を作り、会場を整え、キレイな色の葉を集めてきて飾り付けをして、準備万端整った。



 ◇◇◇◇




 参列しているのはビルビの両親とガルヤの親代わりのガルーラ。 そして俺の世界で言うところの司祭(しさい)の役目をするのが村長(むらおさ)のナブグだ。


 本来親兄弟だけが参列するのだが、特別に俺も参列するように頼まれた。


 ただ、少し離れたところではキムルやツーラをはじめ、大勢の村人たちが見守っている。



 ◇◇◇◇



 一つ目の太陽が沈んで、(ちぎり)の儀式が始まった。


 (ちぎり)の石の前に白色の毛皮が敷いてある。

 厳粛な雰囲気のガルヤとビルビは、白くて長い紐の両端を持ってその毛皮の前に立っている。



 ゆっくりと村長(むらおさ)のナブグが二人の前に立ち、見比べてから微笑んだ。


「ゲルマト(ガルヤの本当の父親の名前)の息子のガルヤ。 ヤンドクの娘ビルビ。 自身の心に偽りはないか?」

「もちろん」

「はい」

「では(ちぎり)(ひも)を」


 ガルヤとビルビから白い(ひも)を受け取ったナブグは、差し出された二人の下の手にその(ひも)(くく)り付けた。 

 その紐は、明日の一つ目の太陽が昇るまで外してはいけないそうだ。


 ナブグは(ひも)(くく)り付けた下の手を取り、(つな)がせた。



「お前たちは生涯この(ひも)(つな)がれていると心得よ」

「おう!」

「はい」

「二人の誓約は結ばれた。 おめでとう」

「「ありがとうございます」」



 これで(ちぎり)の儀式は終了だ。



 何ともおめでたい!! 



 俺には8歳年上の従兄(いとこ)がいる。 家が近いのでよく遊んでもらった。

 その兄貴が昨年結婚したのだが、その時の披露宴の時以上に嬉しかった。



 ◇◇◇◇



 二つ目の太陽が沈んで暗くなってきた頃に披露宴が始まり、食事が運ばれると開始の合図もなくそれぞれ食べ始める。


 そして一段高いところに座らされ、契りの紐で括られたまま座っているガルヤとビルビは、緊張しているのか居心地が悪そうにしていて、食べ物や飲み物にも手を付けていない。




 俺は酒の入った杯を持って立ち上がり、壇上に上がった。 そして手を挙げるとシンと静まり返った。



「みなさん! 俺の国ではこういうおめでたい時に()()をします」

「「かんぱい?」」

「杯を()げておめでたい気持ちを表すのです」



 乾杯の本当の意味など分からない。もしかしたら何か神的な意味があるのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。




 雰囲気だよ雰囲気!




「こうやって高くあげて、乾杯!と言ってから、飲み干すのです。 俺が乾杯と言いますから、みなさんも乾杯と言ってください。 いいですか?」


 みんなは面白そうだと言いながら、杯を持った。


「ガルヤ、ビルビ、おめでとう! 乾杯!!」

「「「かんぱい!! わぁぁぁぁぁ!!」」」



 みんな大盛り上がりだ。 楽しい!!




 今度は酒壺(さかつぼ)を持ってガルヤ達の前に行く。


「おめでとう! 飲め!」と、ガルヤの杯に酒を注いだ。

「お···おう。 ()()()()は気持ち良かったぞ! ありがとうな」

「それは良かった。 幸せになれよ」

「任せろ」

「ビルビも、面倒な奴だが頼むな」

「フフフ、知っているわ。 任せて」

「誰が面倒な奴だよ」

「ハハハハハ」

「フフフフフ」



 俺が席に戻ってからは、ガルヤ達の元に人が群がった。

 一段高い所に座らされているから、周りの人達は行っていいものかが分からなかったようだ。


 ガルヤもビルビも、とても幸せそうな顔をしている。



 そんな二人を見ていると、披露宴の時の従兄の兄貴と嫁さんの幸せそうな顔を思い出した。


 そして自分の子供でもないのに母さんが号泣していた事。 真鈴が嫁さんのお色直しの度に「ステキィ~~!」「あんなドレスを着たい!」といちいち叫んでいた事。

 父さんがしみじみと俺に言った事······


「賢斗。 お前もいつか可愛らしいお嫁さんを連れてくるのだろうな······いや、顔の事を言っているのではないぞ。 大事なのは心だ。 心が可愛らしいお嫁さんを待っているぞ」



 結局、嫁さんを連れて行くどころか、彼女さえ両親に紹介したこともなかった。




『みんな、元気にしているのかな······』




 みんながガルヤをいじっては大笑いしている。 俺も大笑いしているふりをしながら、こっそり涙を拭き取った。











ガルヤとビルビの、幸せを祈ります!

( *´艸`)

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