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異世界移転するたびに俺が伝説の英雄になる件  作者: 杏子
第一章 人間世界から昆虫世界編
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26話 平和が訪れたと思っていたのに?!

 26話 平和が訪れたと思っていたのに?!




 マリの子供のネッドが生まれて1年過ぎた。


 ネッドの親であるマリは、元々高齢で出産した事も有り、産後の経過が悪くて半年前に亡くなった。

 今はネッドが俺の騎獣だ。 ネッドはオスという事もあるが、アミの中でもかなり大きく立派に育ってくれた。




挿絵(By みてみん)



 この世界では、動物は家畜として、また家畜の番としてしか飼われていなかった。 しかし俺はそうとも知らずに家族として飼い始めると、ハクもアミもとてもよく懐き、よく指示に従った。




 俺が子供の頃には、家に大きな犬がいた。

 子供の俺は、その時飼っていたクマのような大きなその犬の世話をした事がなかったが、気付くとその犬はいつも俺のそばにいた。 

 杏子もそうだが、家の中にいる時は常に俺にピッタリと寄り添い、寝る時も必ず俺のベッドで眠った。


 俺にとっては常に犬がいる生活が日常だった。





 アンとネッドを連れて湖まで散歩に出かけた。 湖畔でネッドから降りると、ネッドは美味しそうに水を飲み、草を食んでいる。



 俺は防具を外し、剣を手に湖に飛び込んだ。

 アンも一緒に飛び込んで来て、俺の後をついてくる。 アンの防具も外してあげている。 防具の中にはズブグクの鱗が挟んであり、水に浮くのだ。

 というのも俺が潜るとアンは途中まで一緒に潜ってくる。 だから水に浮く防具は邪魔だ。



 しかしこの世界の草木はカラフルで美しいが、湖の中も恐ろしく美しい。


 底まで見渡せるほど透き通った湖の中には、見た事もない魚が沢山泳いでいる。 陸上の草木と同じように湖の中の海藻も色鮮やかで、それに輪をかけるように魚達も驚くほどカラフルだった。


 俺は湖底の岩間に大きな魚を見つけると、大きく息を吸い込んで潜った。 ゆっくりと近付いて剣で一突きすると、難なく捕まえる事ができた。


 水面に上がろうと上を見ると、アンが随分深くまで潜ってついてきている。

 毎回少しずつ潜る距離を伸ばしている。



「もうすぐ湖底まで潜れるな」


 俺は苦笑した。




 数匹の取れた魚を焼いてやると、水から上がって来たアンは美味しそうに食べ始めた。




 ◇◇◇◇




 村に向かって森の中を走っていると、低木の陰にギギが身を潜めていた。

 そのギギが俺たちを見て慌てて逃げていく。


 この辺りに住むギギを含む猛獣達は、一度ならず俺に蹴り倒されている。

 そして普通ならギギの気配だけでアミは怯えるはずなのだが、ネットはギギを怖がらない。 それどころかタム並みの気の強さで、強靭な後ろ脚で思い切り蹴り上げてギギを退散させた事が何度もあった。


 そのため、この辺りで俺たちを襲おうとする猛獣はいなくなっていた。



◇◇◇◇




 村に戻ると一頭のハクが走ってきた。 キムルが飼い始めたハクのカムナだ。 ズブグク事件から、ハクを飼う者が増えた。 キムルも直ぐに飼い始めたのだ。



 アンはカムナと鼻を突き合わせて挨拶をしている。 2頭はとても仲が良い。 オスとメスなので、特に仲がいいのかもしれない。 



 羨ましいぞ!



 いつかはアンの子供が欲しいとキムルが言っている。 もちろん俺は歓迎だ。

 ついでにもし俺に何かがあれば、アンを頼むと言ったのだが「何かがあるとしたらケントさんじゃなくて俺ですよ。 その時はカムナをお願いします」と、反対にお願いされた。




 他にもハクを飼っている者が何人かいて、すれ違うたびに必ず鼻を突き合わせて挨拶をする。 しかし、常にアンは頭を高く上げている。 どうやらアンはこの村のハク達のボス的存在のようだった。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 ここはイルムナック村。


 2年前、ズブブクが現れて何人かの犠牲者が出た。



 その時のアンの働きを見て、ここでもハクを飼う者が増えた。 アストとナムルトもハクを飼い始めた。

 アストのハクがタルラ、ナムルトのハクはクラムという。



 現在アストはイルムナックの警備責任者をしているのだが、常に横にはクラムが寄り添っていた。




 アスト、ダムダ、ナムルトが、数人の警備隊員を引き連れて弓の練習をしている。


「肘をもっと上げろ」

「よく、的を狙えよ」


 まじめなアストの指導は厳しいともっぱらの評判だ。




 休憩中、クラムの腹を枕にナムルトが空を見上げていた。


「もうすぐ木の実の季節ですね。 早くターンナックのみなさんと会いたいです。 ツーラさんも来てくれるかな」


 木の実の季節になると、ターンナック村から商隊が来る事になっていた。

 そう言ったナムルトは上の左腕の肘から先が無い。 2年前、鋭い鎌を持つ巨大化したズブグクの化け物に襲われた時に切り落とされたのだが、ツーラのおかげで命は助かった。      

 それ以来ツーラを崇拝している。


「あの4人は必ず来てくれるさ。 今頃何をしているんだろうな」


 アストが言うとダムダが弓を握りしめた。


「これだけ弓が上達したんだ。 今度こそキムルさんに勝ってみせる!」

「しかし······キムルさんの腕は、かなりのものだからな」

「今年こそは負けない!」


 ダムダは意気込んで言う。

 昨年、弓の得意なキムルにダムダが挑戦したのだが、まるで勝負にならなかったからだ。




 横で聞いていた警備隊のガルドが、そうだ!と立ち上がった。


「アストさん。 そう言えば昨日狩りに出た時、大きなカルコを見ました。 なっ、ダント」


 カルコとは、2タール(60㎝)ほどの飛べない鳥で、家畜としてもよく飼われている大人しい鳥だった。


「ああ。 6タールはあったよな」


 それを聞いたアストの顔色が変わった。


「ガルド! 今、何て言った?」

「6タールあるカルコを見たと······」

「どこで?!」

「ひ···東の森です」

「なぜすぐに報告しなかった!」

「カルコだし······害は無いと思って忘れていました」

「バカ野郎! お前らは何を考えている!」


 アストが今にも殴りかかりそうだったので、ダムダが割って入る。


「アストさん、落ち着いて下さい」

「これが落ち着いていられるか······!ズブグク······あれ1頭じゃなかった·······」

「はい······今回はカルコで良かったですが、ズブグクだったりギギだったりしたら、とんでもない事になります」


 それを聞いて、ガルドとダントは血の気が引いた。


「すみません! そこまで考えていませんでした!」

「もういい。 とにかくサムトさんに報告しに行こう」


 アスト達3人はカルコを見た2人を連れて、サムトの家に報告に行った。



「どうした?」と出て来たサムトが、アスト達のただならない様子に驚く。


「アスト、何かあったのか?」 

「今度は巨大化したカルコを見かけたそうです」

「なんだと! どこでだ!」

「東の森です」

「また東の森か······何かあるな、あそこには······見かけたのは今朝か?」

「いえ······昨日だそうです」

「昨日だと? 今まで何をしていた! なぜすぐに報告に来なかった!」

「す···すみません!」と、ガルドが慌てて横から謝った。


「ガルドか! 報告せずに何をしていた!」

「サムトさん、彼らは先程アストさんにも怒鳴られたばかりです。 許してやってください」


 ダムダが割って入り、とにかくサムトに詳しい話をするようにと、ガルドを促す。


「はい。 昨日狩りに行き、イルム山の少し手前のサールで休んでいたら、サールに大きなカルコが3頭入って来たのです」

「3頭も···いるのか······」

「はい······初めは目の錯覚かと思いましたが、どう見ても六タールはありました。 ゆっくりと近付いて弓で射たのですが、逃げられてしまいました」

「いったい何が起こっているのだろう······」


 考え込むサムトにアストが口を開いた。


「何かがあるのでしょうが、東の森は危険でもイルム山があるので入らない訳にはいきません」


 イルム山の塩は生活に欠かせない。 年に二度、まとめて塩を採りに行く。


「そうだな······もうすぐターンナックの商隊が来る季節だ。 それまでに塩を採りに行かなくてはならない。 とにかく今夜にでも主だった人達に集まってもらって、この事を相談しよう。 アスト達は今夜集まるように皆さんに連絡しに行ってくれるか」

「わかりました」




 アストたちは連絡するために散っていった。









今回はカルコで良かったですが、嫌な予感がします!(|| ゜Д゜)

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